脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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キラッ⭐︎

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リディアたちは帰り道、魔法の絨毯に乗ってのんびりと浮島の間を進んでいた。その時、視界の端に色とりどりの旗や装飾が目に入った。

「ねぇ、あの島、なんだか楽しそうじゃない?」
リディアが指差す先には、にぎやかな見た目の浮島が広がっていた。明るい色の建物がいくつも並び、ところどころに絵本のような装飾が施されている。

「見に行ってみるか?」
エリュディオンが余裕たっぷりの声で言いながら島を指差し、絨毯をそちらへ向ける。

島に降り立つと、そこは想像以上にファンタジックな雰囲気だった。入り口には「こども図書館」と書かれた木の看板があり、扉の上には可愛らしい本の絵が描かれている。

「わぁ、本がいっぱいあるのかな? 入ってみよう!」
リディアは目を輝かせながら中に駆け込んだ。

図書館の中は広々としていて、壁一面に本棚が並んでいた。棚には子供向けの絵本や小説がぎっしりと並べられており、どれも色鮮やかで楽しそうな表紙ばかりだ。

「ねぇ、この本見て! 表紙にキラキラの星が描いてあるよ!」
リディアが手に取った本を広げると、中から星の模様が光り出した。タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と楽しげに跳ね、メリーちゃんも「メェ!」と興味深げに本棚を見回している。

島の隅には、ふわふわのクッションが置かれた読み聞かせコーナーがあり、まるで冒険の合間の癒しの空間のようだ。リディアは本棚をじっくり見ながら、いくつもの本を手に取って眺めていた。

「これも可愛い! あっちも素敵!」
彼女の手が止まることはなかったが、ふと棚の一角にひときわ古びた本が目に入った。

「この本、なんだか不思議な感じ……」
リディアがそっと手に取ると、ぱらりとページが開き、中から立体的な町の絵が飛び出した。それはまるで小さな世界が広がる仕掛け絵本で、雪の降る町が精巧に再現されていた。

「すごい……まるで本の中に入れるみたい。」
リディアが感嘆の声を上げると、メリーちゃんが「メェ……?」と首を傾げた。その瞬間、絵本が眩しく光り始め、部屋全体が白い光に包まれた。

「えっ、なにこれ……!?」
リディアが驚いて声を上げた瞬間、視界が変わった。

気がつくと、彼女たちは雪の降る町の中に立っていた。街灯が灯る石畳の道、煙突から煙を上げる小さな家々、そしてふわふわと降り積もる雪が、絵本の中そのものの風景を広げている。

「わぁ、本当に本の中に入っちゃったみたい!」
リディアが雪を手に取り、感動の声を上げた。

「面白いじゃないか。この世界、どうなってるんだ?」
エリュディオンも周囲を見渡しながら、興味津々といった様子だった。タフィーちゃんは雪の上を跳ね回り、「ぷるぷるん!」と元気よく弾んでいる。メリーちゃんは、雪の感触を確かめるように足元を見つめていた。

「ねぇ、これってどうやって戻るんだろう?」
リディアが不安げに呟いた時、遠くから微かに鐘の音が響いてきた。その音に導かれるように、雪の町の奥へと進む道がぼんやりと浮かび上がった。

「なんだか、何かを探しに行けって言われてる気がする……行ってみようか?」
リディアは仲間たちを振り返り、微笑んだ。

「もちろんだ。この不思議な世界、簡単に飽きさせてくれるとは思えないからな。」
エリュディオンが杖を軽く肩に乗せながら、彼女を促した。

リディアは雪の中を進む途中でふと思いついた。

「ねぇ、みんな、寒くない? 私、いいこと思いついた!」
そう言ってリディアはおもむろにポーチから変身ステッキを取り出した。小さな星がキラキラと輝くそのステッキを、エリュディオンは不思議そうな目で見つめた。

「その妙な小道具はなんだ?」
エリュディオンが眉を上げて問いかけると、リディアは得意げに笑った。

「これは変身ステッキ! これを使えば……見てて!」
リディアがステッキをくるりと回し、軽やかに振ると、星の粒のような光が舞い上がった。するとリディアの服が瞬時にふわふわの冬コートと、もこもこの耳当て付き帽子に変わった。手袋や毛糸のタイツまで完璧な冬仕様だ。

「ほら、あったかそうでしょ?」
リディアがステッキを再び振り、メリーちゃんとタフィーちゃんに向けると、メリーちゃんはピンク色のふわふわした冬用マントを羽織り、タフィーちゃんには小さなニット帽とマフラーが巻きついた。

「ぷるぷるん!」
タフィーちゃんがその姿で跳ね回るのを見て、リディアは満足げに頷いた。

そして、エリュディオンに向かってステッキを掲げる。
「次はエリュディオンの番だよ!」

「待て待て、これは一体どういう仕組みだ?!」
エリュディオンは少し身を引きつつも興味津々な様子だったが、リディアが迷わずステッキを振り下ろすと、光が彼を包み込んだ。

「おお……!」
光が消えた時、エリュディオンは深い青と黒のマントをまとい、裏地に毛皮のついた豪華な冬服姿に変わっていた。足元にはしっかりとしたブーツ、手にはレザーグローブ。寒さをものともしない完全防備の装いだ。

「どう? 似合ってるでしょ!」
リディアが笑顔で言うと、エリュディオンは自分の姿を見下ろしながら肩をすくめた。

「面白いじゃないか。気まぐれで作られたとは思えないクオリティだな。だが、お前がこれを使いこなしている姿は少々滑稽だな。」
皮肉を言いながらも、どこか楽しそうな表情を浮かべている。

「なにそれ! でも褒めてくれたんだと思っとく!」
リディアは笑いながらステッキをくるりと回し、ポーチにしまい込んだ。

「よし、これで準備万端! 雪の中でも寒くないから、どこまででも行けるよ!」
リディアは鼻を赤くしながらも元気いっぱいに叫び、再び雪道を進み始めた。エリュディオンは肩をすくめながらその後ろをついていき、タフィーちゃんとメリーちゃんもぴょんぴょんと雪を踏みしめながらリディアを追いかけていった。

こうして、冬仕様に変身した一行は、本の中の不思議な世界をさらに奥深く探っていくのだった。
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