気まぐれ令嬢と微笑みの調停役〜お兄様もいるよ！

愛と冒険の日々

大いなる冒険

商店街での出来事が終わると、クラリスはますます自信満々に占い師の役を演じることになった。帰宅した後、ルシアンとガイウスはすでにリビングでくつろいでいた。クラリスは再び水晶玉を手に取り、あたかも本物の占い師のように振る舞いながら二人に語りかけた。

「さて、次はお兄様の未来よ！あなたには、大いなる冒険が待っているわ！」

ガイウスは面白い表情を浮かべながら立ち上がる。「俺の冒険か？どんな冒険だ？」

クラリスは楽しげに頷く。「もちろんお兄様にふさわしい大冒険よ！でも、冒険には特別な準備が必要よね。特別な腹ごしらえが！」

そう言うと、クラリスはさっさと台所へ向かい、何やら準備を始めた。その後、間もなくして色鮮やかで、まさにカオスのような料理がテーブルに運ばれてきた。香りは何とも言えないほど混沌としていて、色合いも鮮やかすぎて目を離すことができない。

「ほら、お兄様！これが私からの特別な一皿よ！」
クラリスは自信満々に大皿をガイウスの前に置く。彼女の目は輝き、親切心にみちていた。まるで「これを食べると冒険のためのパワーがみなぎる！」と言わんばかりだ。

「お、お前、これ本当に食べられるのか…？」ガイウスは少しだけ戸惑いを隠せなかった。だが、妹が嬉しそうにしている姿を見ると、どうしても無下にはできない。

「愛情たっぷりの一皿よ！お兄様なら全部食べられるわよね？」
クラリスは笑顔で言った。その笑顔に圧倒され、ガイウスは深呼吸を一つして、覚悟を決める。

「よし、任せておけ！」
ガイウスは勢いよくフォークを手に取り、何とか一口を頬張った。食べると同時に、味の衝撃が広がり、思わず顔を歪めそうになる。それでも、兄としてのプライドをかけて必死に食べ続けた。

「うまいぞ！さすが俺の妹だな！」
ガイウスは豪快に笑いながらも、内心は冷や汗をかきながら必死で胃袋に収めていく。

「本当？」クラリスは期待を込めて見守っていた。
「もちろん！お前の料理にはいつも驚かされるな！」ガイウスは満面の笑みを浮かべ、必死でその笑顔を崩さないように心がけた。ガイウスはやりきった。完食まで走り続けた。

その隣で、ルシアンは無理に食べようとする気にはなれなかった。彼はクラリスの無茶振りに慣れっこではあるが、あまりにも過激な内容に思わず遠慮してしまう。

「いや、今日はちょっとパスかな…また次の機会にするよ。」
ルシアンはやんわりと断り、クラリスに笑顔を向けた。

「そうなの？じゃあ、次こそは食べてね！」クラリスは少し残念そうにしながらも、すぐにまた明るい表情を取り戻した。

彼女が提案した冒険は、屋敷の屋根に大きな装飾を取り付けることだったが、ガイウスにとってはたやすいお願いであった。

夜になり、リビングでくつろぐガイウスとルシアン。食事を終えた後、二人は自然と予言の話を振り返っていた。

「なあ、ルシアン…あれだけの予言が結局、全部当たったことになるんだな。」
ガイウスは大きな笑い声をあげながら言った。
「新しい友達ってのが犬、ルシアンの成功が犬の飼い主探し、そして俺の冒険がランチ挑戦だ…」

「予言というか…。」くすりと笑い、ルシアンは言う。「ガイウス様、よくあれを完食できましたね。僕なら無理でした」

「おい、あれくらい食べられなくてどうする。お前も妹を持てば、この程度朝飯前になるさ」

「僕にはとうてい真似できない。」
ルシアンはガイウスの妹への愛を感じ、微笑んだ。

「だろ？お前なら絶対無理だ！」
ガイウスは愉快そうに言う。

その時、クラリスが自信満々に部屋に入ってきた。「ほら、私の未来はいつも正しいのよ！」
彼女は胸を張り、得意げな顔で言う。

「そうだな、お前の予言には、何か不思議な力があるようだ。」
ガイウスが真面目な顔をして言うと、クラリスは満足げに頷いて、微笑んだ。

「だって、私は占いの達人だもの！」






「私、スパイになりたい！」
クラリスの突拍子もない宣言に、ガイウスは椅子の背にもたれかかりながら豪快に笑った。ルシアンはお茶を飲む手を止め、軽く眉を上げる。

「スパイって、あの秘密裏に動くやつだろう？お前が？」
ガイウスが肩を揺らして笑うと、クラリスは大げさにむくれた。
「お兄様、失礼ね！私はきっと立派なスパイになれるわ。隠れて人の秘密を探り当てるなんて、私にピッタリじゃない！」
「でもクラリス、その隠れるって部分が一番難しいんだと思うけどね。」ルシアンは微笑を浮かべながら口元に手を当てた。

「いいえ、問題ないわ！」クラリスは得意げに胸を張り、二人を見回した。「というわけで、今からスパイごっこを始めるわよ！まずはお兄様を尾行するわ。」
「俺を？」ガイウスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに面白そうに目を輝かせた。「面白いな。じゃあ、俺は普通に出かけるから、お前たちがうまく尾けるか試してみろ！」



こうして始まったスパイごっこは、最初から波乱の連続だった。クラリスとルシアンは隠れるつもりでガイウスを追いかけたものの、物陰に隠れるタイミングが遅く、完全に姿を見られている。通りを歩くガイウスは振り返ってはニヤリと微笑むが、気づかないふりをしてそのまま歩き続ける。

「ルシアン！今の動きが遅いわよ！」
「いや、クラリス、君がさっき壁にぶつかった音が一番大きかったんだけど。」

ガイウスは市場を巡ったり、鍛冶屋に立ち寄ったりと普段通りの用事をこなすだけのはずだったが、その日常が普通の人には過酷だった。市場では店主に肩を叩かれながら笑い、鍛冶屋では巨大な剣を試し振り。ガイウスは楽しそうに振り回していたが、クラリスとルシアンは物陰から息を切らして見守るしかなかった。

さらに、ガイウスが立ち寄った森での狩りの様子は圧巻だった。手斧を片手に野生動物を追いかける姿に、クラリスは唖然として声を上げる。「お兄様って、こんなことしてたの？」
「こんなに動き回る人を追いかけるのは無理だね…」ルシアンも息を切らして木にもたれかかる。

結局、クラリスとルシアンは体力が尽きてへたり込んだところを、ガイウスにあっさり見つかってしまった。「おいおい、スパイがそんなところでバテてどうするんだ？」と笑いながら水を差し出すガイウスに、二人は脱力するばかりだった。



屋敷に戻ると、クラリスはソファに倒れ込みながらも満足げだった。「ふふ、スパイって意外と大変なのね。ドキドキして楽しかったわ！」
ルシアンは隣で苦笑しつつ、「クラリスらしいと言えばそうだけどね。」とつぶやく。

「まぁ、俺の妹ならスパイも立派にこなせるかもしれんが、もうちょっと体力つけてからにしろよ。」
ガイウスの豪快な笑い声に、クラリスは「お兄様ってば、偉そうなんだから！」と反発しながらも、どこか嬉しそうに笑っていた。