もう、今更です

ねむたん

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踊るポエマー

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庭園の花々が夜風に揺れ、宮殿の広場には華やかな笑い声が満ちていた。

ヴィクトールとジュリア――二人の結婚を祝う盛大な宴は、彼の計画通り、格式と楽しさが見事に融合したものとなった。

貴族たちは最初こそ驚いていたが、自由な舞踏や洒落た競技が始まると、誰もが次第に笑顔を浮かべ、宴の雰囲気に飲み込まれていった。

その様子を、セリーヌは微笑みながら見守っていた。

「ジュリアらしい式だね」

エドモンが隣で静かに言う。

「ええ。でも、ヴィクトール様らしさも存分に出ているわ」

目の前では、ヴィクトールが声を張り上げ、ゲストたちを巻き込んで賑やかな競技の進行役を務めていた。

「さあ、勝者には新郎新婦からの特別な贈り物だ! ただし、負けた者には――」

「ちょっと、罰ゲームなんてないわよ!」

「えっ? いや、ちょっとくらいあった方が面白くないか?」

ジュリアが腰に手を当てて睨みつけると、ヴィクトールは「はいはい」とすぐに引き下がる。

「彼は、ああ見えてもジュリアに弱いんだな」

エドモンが苦笑すると、セリーヌは小さく笑った。

「ええ。でも、それが彼ららしいわ」

宴の片隅では、ひときわ目を引く光景があった。

黒の礼服を纏い、相変わらずの整った容姿のアラン・ド・モントレイユ。

だが、その隣にいる女性が、彼を完全に「手なずけている」のが誰の目にも明らかだった。

「アラン様、またくだらない詩を考えていたのではなくて?」

「……くだらないとは心外だよ、君。詩とは――」

「はいはい、詩とは心の叫びですわね。では、今すぐおやめになって」

鋭い声とともに、彼女――アランの婚約者であるアデライド・ボーモン嬢が、扇子で彼の肩を軽く叩いた。

「む……アデライド、君はもう少し情緒を持ってもいいのでは?」

「あなたに情緒を語られる筋合いはございませんわ」

容赦のない言葉に、周囲の貴族たちは肩を震わせながら笑いを堪えていた。

「つれないな。でもそんなところも素敵だよ。君の瞳は夜空に輝く星のようで――」

ポンッ!

「いいかげんになさいな」

「……」

アランが尻を小突かれると、セリーヌも思わず笑いそうになった。

「……これは、新しい形の男女の関係かもしれないな」

エドモンがぼそりと呟く。

「ええ。でも、アラン様が素直に従っているのが驚きだわ」

セリーヌがそう言うと、エドモンは少しだけ肩をすくめる。

「それだけあの彼女が、豪胆……しっかりした方なのだろう」

「……そうね」

アランは、あの調子でしばらく詩を呟こうとしたが、そのたびに扇子でツッコミを入れられていた。

それでも、どこか楽しそうにも見えるのが不思議だった。

(これが、アラン様にとっての「安定」なのかしら)

かつての彼とは違う。

未練を残しながらセリーヌを見つめ、詩を綴っていた彼は、もうここにはいない。

いや、詩は相変わらず綴っているが、それを一蹴する存在がそばにいる。

(それで、いいのかもしれないわね)

セリーヌは小さく息を吐き、カップを口に運んだ。

宴が最高潮に達するころ、広場の中心にヴィクトールとジュリアが立っていた。

「さあ、皆! 今日は俺たちの結婚式だが、ここにいる全員が幸せになる夜にしよう!」

「それはいいけれど、また変なことをしないでしょうね?」

ジュリアがじろりと睨むと、ヴィクトールは「しないしない!」と笑いながら手を広げる。

「そのために、最後のサプライズがある!」

合図とともに、夜空に大輪の花が咲いた。

湖の水面に映る美しい花火。

その光景に、会場の誰もが息を呑んだ。

「……まあ、素敵だわ」

ジュリアが小さく呟くと、ヴィクトールは満足そうに微笑んだ。

「俺が、お前に最高の景色を見せてやるって言っただろ?」

「……ええ、あなたらしいわね」

ジュリアは少しだけ照れたように笑い、彼の腕にそっと手を重ねた。

セリーヌとエドモンは、その様子を少し離れた場所から見守っていた。

「ジュリア、幸せそうね」

「ああ」

エドモンは隣に立つセリーヌを見つめ、そっと手を取る。

「僕たちも、これからもっと幸せになろう」

「ええ」

セリーヌは静かに微笑み、寄り添った。

夜空の花火が、新たな未来を照らしていた。
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