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放課後の静かな中庭で、クラウディオはリリエットを待っていた。
昼間の賑やかな学園の雰囲気とは違い、帰宅する生徒たちの足音が遠ざかるにつれて、空気はゆるやかに落ち着きを取り戻していた。
リリエットが姿を現したのは、そんな中庭の片隅だった。
「話があると聞いたけれど……」
彼女の声音は静かだった。感情を抑えたようでいて、どこか距離を取ろうとする意志が感じられる。
「少しだけ時間をもらえないか?」
クラウディオは、彼女の表情を慎重に伺いながら問いかけた。
リリエットはほんの一瞬、迷うように視線を落としたが、やがて小さく頷いた。
「ええ、構わないわ」
彼はその答えにほっと息をつき、前を歩き出す。
向かった先は、学園の近くにある静かなカフェだった。
窓際の席に向かい合って座ると、クラウディオはまず深く息を吸い込み、リリエットを真っ直ぐに見た。
「まずは……改めて謝罪をさせてほしい」
「……」
「これまでの態度、本当に申し訳なかった。夜会での失態も、全て私の愚かさが招いたことだ。君を深く傷つけたことを、今になって痛感している」
リリエットは、カップにそっと触れながら彼の言葉を静かに聞いていた。その指先はどこか考え込むように動いている。
「それから、婚約の猶予をもらえたこと……感謝している」
リリエットはようやく視線を上げた。
「……謝罪も、感謝も、受け取るわ」
「リリエット……」
「ただ……」
彼女は言葉を切り、僅かに迷うように息をつく。
「私も、どうすればいいのか分からないの」
クラウディオは、その言葉の意味を察してしまった。
彼女の気持ちは、もう以前とは違う。
長い間、彼を追いかけ続けた彼女の心は、今はもう冷めかけているのだ。
「……それでも、私は君を知りたい」
その言葉に、リリエットの眉がわずかに動いた。
「君のことを何も知らずに、ただ婚約者だからと遠ざけていた。でも、それは間違いだった。君が何を考え、何を大切にしているのか、何が好きで、何が嫌いなのか……これから少しずつ知っていきたい」
「……私のことを?」
「ああ」
クラウディオは、彼女の目を真っ直ぐに見つめる。
「もしよければ、一緒に観劇に行かないか?」
リリエットは驚いたように瞳を瞬かせた。
彼が、彼女を観劇に誘うなんて。
今まで何度も誘っては断られ続けてきたのに、自分から提案してくるなんて。
「……いいの?」
「もちろんだ」
クラウディオは、ほんの僅かに微笑んだ。
「君からの誘いを以前は断ってしまったから」
リリエットは少しの間、迷うように指を組んでいたが、やがてゆっくりと頷いた。
「……ええ、分かったわ」
了承したものの、胸の奥に戸惑いが残る。
彼が変わろうとしているのは分かる。だが、自分の気持ちは――もう、以前と同じではない。
「ありがとう」
クラウディオの声が響く。
リリエットは、微笑むこともできず、ただ静かに紅茶を口にした。
昼間の賑やかな学園の雰囲気とは違い、帰宅する生徒たちの足音が遠ざかるにつれて、空気はゆるやかに落ち着きを取り戻していた。
リリエットが姿を現したのは、そんな中庭の片隅だった。
「話があると聞いたけれど……」
彼女の声音は静かだった。感情を抑えたようでいて、どこか距離を取ろうとする意志が感じられる。
「少しだけ時間をもらえないか?」
クラウディオは、彼女の表情を慎重に伺いながら問いかけた。
リリエットはほんの一瞬、迷うように視線を落としたが、やがて小さく頷いた。
「ええ、構わないわ」
彼はその答えにほっと息をつき、前を歩き出す。
向かった先は、学園の近くにある静かなカフェだった。
窓際の席に向かい合って座ると、クラウディオはまず深く息を吸い込み、リリエットを真っ直ぐに見た。
「まずは……改めて謝罪をさせてほしい」
「……」
「これまでの態度、本当に申し訳なかった。夜会での失態も、全て私の愚かさが招いたことだ。君を深く傷つけたことを、今になって痛感している」
リリエットは、カップにそっと触れながら彼の言葉を静かに聞いていた。その指先はどこか考え込むように動いている。
「それから、婚約の猶予をもらえたこと……感謝している」
リリエットはようやく視線を上げた。
「……謝罪も、感謝も、受け取るわ」
「リリエット……」
「ただ……」
彼女は言葉を切り、僅かに迷うように息をつく。
「私も、どうすればいいのか分からないの」
クラウディオは、その言葉の意味を察してしまった。
彼女の気持ちは、もう以前とは違う。
長い間、彼を追いかけ続けた彼女の心は、今はもう冷めかけているのだ。
「……それでも、私は君を知りたい」
その言葉に、リリエットの眉がわずかに動いた。
「君のことを何も知らずに、ただ婚約者だからと遠ざけていた。でも、それは間違いだった。君が何を考え、何を大切にしているのか、何が好きで、何が嫌いなのか……これから少しずつ知っていきたい」
「……私のことを?」
「ああ」
クラウディオは、彼女の目を真っ直ぐに見つめる。
「もしよければ、一緒に観劇に行かないか?」
リリエットは驚いたように瞳を瞬かせた。
彼が、彼女を観劇に誘うなんて。
今まで何度も誘っては断られ続けてきたのに、自分から提案してくるなんて。
「……いいの?」
「もちろんだ」
クラウディオは、ほんの僅かに微笑んだ。
「君からの誘いを以前は断ってしまったから」
リリエットは少しの間、迷うように指を組んでいたが、やがてゆっくりと頷いた。
「……ええ、分かったわ」
了承したものの、胸の奥に戸惑いが残る。
彼が変わろうとしているのは分かる。だが、自分の気持ちは――もう、以前と同じではない。
「ありがとう」
クラウディオの声が響く。
リリエットは、微笑むこともできず、ただ静かに紅茶を口にした。
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