大好きな学園の王子様のあとをつけていたら、捕獲されてしまいました。

ねむたん

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守りたくなる子

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日下部様とのお付き合いが始まり、私は毎日夢のような時間を過ごしていました。

それでも学園では、これまで通り控えめに過ごすように努めていたのです。何といっても、日下部様は「学園の王子様」。周囲の注目を浴び続けるお方です。私などが隣にいるなんて、想像もされないことでしょう……と思っていました。

ところが、その日。体育の合同授業の際に事件は起きました。

「夢見さん、大丈夫?」

それは、私が運動不足ゆえにバランスを崩して転倒しそうになった瞬間のことでした。日下部様がスッと手を伸ばし、私の腕を支えてくださったのです。その手の温かさと優しい声に、私は驚きで声も出せません。

「気をつけてね。無理しちゃダメだよ。」

その柔らかな笑顔に、周囲の女子たちが一斉にざわつくのが聞こえました。あっ、これは――やってしまったかも!?

授業後、クラスの隅で静かに過ごしている私の元に、紫藤様が駆け寄ってきました。

「夢見様、大変ですわ。今、学園中で日下部様とあなたのことが噂になっていますの。」

「そ、そんな! どうしてですか?」

「そりゃあ、あの王子様が授業中にあなたにあんな優しい微笑みを向けたのですもの、目撃した方々の話が広まるのも当然ですわ。」

紫藤様は楽しそうに笑いますが、私は顔が真っ赤になり、その場に縮こまりました。どうしよう――日下部様に迷惑をかけてしまったのではないかと不安になります。

その日の放課後、噂はさらに加速していることを実感しました。廊下を歩いていると、すれ違う人たちが小声で囁いているのが聞こえます。「あの子が夢見さん?」「まさか日下部様が……」などなど――。もうどうしていいかわかりません。

すると、前方から見覚えのある女性が近づいてきました。日下部様ファンクラブの会長さんです。相変わらず優雅な微笑みを浮かべながら、こちらに歩いてきます。

「夢見さん、ちょっとお話をしましょうか。」

彼女の穏やかな声に、私は緊張しながら頷きました。

会長さんに連れられ、校舎裏の庭園に到着すると、ファンクラブの古参メンバーたちが集まっていました。皆さん、こちらをじっと見つめています。

「夢見さん、安心してください。私たちは何もあなたを責めるつもりはありませんわ。」

会長さんが柔らかく微笑みながら続けます。

「私たちも王子様の幸せを一番に願っている身ですもの。あなたが日下部様のお心を射止めたというなら、全力で応援しますわ。」

「……え?」

信じられない言葉に、私は思わず目を瞬かせました。

「ただ、噂が広がっている以上、放置しておくと余計に注目されてしまうわ。少し作戦を立てましょう。」

会長さんの提案により、ファンクラブメンバーたちは一致団結。噂を和らげるために、私と日下部様の接触を目立たせないよう工夫することになりました。例えば――。

ファンクラブが意図的に日下部様の周囲に集まり、注目を分散させる。私を目立たせないよう、紫藤様がさりげなく付き添うようにする。など。

さらに、会長さんは最後にこう提案してきました。

「それにしても、せっかくの機会ですもの。夢見さん、日下部様との素敵なエピソードをぜひ今度私たちにもお聞かせくださいな。」

その言葉に、私は顔を真っ赤にして首を横に振るしかありませんでした。

翌日、ファンクラブのメンバーや紫藤様のおかげで、噂は少しずつ落ち着きを見せ始めました。私自身も、隠れているだけでなく、周囲の助けを素直に受け入れようと思えるようになったのです。

放課後、日下部様に会ったとき、彼は私にふっと微笑みながら言いました。

「夢見さん、みんなに助けられてるみたいだね。良かった。」

「はい……。でも、すみません、私のせいで……。」

「謝らなくていいよ。君が僕のそばにいてくれることが嬉しいから。」

その言葉に、私の胸はじんわりと温かくなりました。まだまだ課題は多いけれど――彼と一緒なら、きっと乗り越えられる。そう思えるのでした。
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