大好きな学園の王子様のあとをつけていたら、捕獲されてしまいました。

ねむたん

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かわいい癖

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花束と手紙を用意した私は、日下部様のマンションへ向かいました。胸の奥が高鳴りすぎて、エントランスへ続く道のりをどうやって歩いたのか覚えていないほどです。

エントランスでコンシェルジュに挨拶し、エレベーターに乗り込むと、私の手の中で花束が小刻みに震えていました。自分の鼓動が伝わっているのかもしれません。

「大丈夫、大丈夫……。」

小さく呟きながら、何度も深呼吸を繰り返しました。エレベーターが日下部様のフロアに着くと、重厚な扉が目の前に現れます。

手を伸ばしてインターホンを押そうとしましたが、震える指先がなかなかボタンに触れません。

「ここまで来たんだから……。」

もう一度深呼吸をして、意を決してインターホンを押しました。

「……はい。」

少し低めの、でもどこか柔らかな声が応答しました。それだけで心臓が飛び跳ねそうになります。

「夢見です。少しだけお時間をいただけますか?」

静かにそう伝えると、すぐに扉が開きました。そこに立っていたのは、いつものように整った姿の、でも少し驚いたような表情の日下部様でした。

「夢見さん……どうしたの?」

私はその問いに応えようと口を開きましたが、胸がいっぱいになり言葉が出てきません。震える手で花束を差し出しながら、やっとの思いで口を開きました。

「日下部様、これを……。」

彼は驚いた顔で花束を受け取り、視線を手元の花に落としました。その姿を見つめながら、私は意を決して言葉を続けました。

「日下部様、私は……いつも、あなたのことを尊敬しています。そして、こんな私でも、少しでもあなたのお力になりたいと……ずっとそう思っていました。」

彼は静かに私の言葉を聞きながら、花束の中に添えられた手紙に気づき、そっと取り出しました。

「これも、読んでもいいかな?」

彼の問いに、私はこくりと頷きます。

その場で封筒を開き、彼が私の書いた手紙を丁寧に目で追っていく間、私は不安と期待の入り混じる気持ちでじっとその姿を見つめていました。

読み終えた彼は、手紙をそっと折り直し、私に優しい視線を向けました。

「夢見さん……ありがとう。こんなに真剣な思いを伝えてくれて、本当に嬉しい。」

その言葉に、私は目が潤むのを感じました。でも、彼は続けました。

「君がいてくれるだけで、僕はすごく助かってるんだよ。これからも――一緒にいてくれる?」

私の胸にあふれた感情が、どうしても言葉になりません。ただ、大きく頷くことで精一杯でした。

日下部様の笑顔が、まるで世界中を照らす光のように感じられた瞬間でした。




夢のようなお付き合いが始まった日々は、まるでおとぎ話の中にいるような気分です。そんなある日、日下部様が不意にこんなことをおっしゃいました。

「ねえ、夢見さんの自宅に行ってみたいな。」

その言葉に、私は一瞬で凍りつきました。えっ、私の家? あの、ブロマイドやストローが祀られている、あの部屋に……? もちろん、お断りする理由なんてありません。でも――でも……!

「あ、あの、ちょっと散らかっているかもしれませんが……それでもよろしいんですか?」

必死に言葉を繕いながらも、日下部様のご希望を却下することなど到底できません。彼は穏やかな微笑みを浮かべながら頷きました。

「全然気にしないよ。……それに、ちょっと気になってたんだ。」

「……気になる?」

「うん、実はね。僕、君の奇行をちょっと知ってたんだよ。」

その一言に、私は目の前が真っ白になりました。奇行――? え、ど、どこまで知られているの? と焦る私をよそに、彼は淡々と話を続けます。

「だって、ゴミを捨てるとき、いつもビニールに入れてたの気づいてた? あれ、夢見さんの手が汚れないようにって思ってたんだ。」

「えっ……?!」

さらりと笑顔でそんなことを言われ、私は一気に動揺しました。それだけではありません。彼は、少し楽しげな顔で続けました。

「あれをどうしてるのか、ちょっと気になってね。」

――どうしてるのか、って。いや、そりゃあ……ご神体として祀っておりますけど……!

それでも、日下部様の希望を却下することはできず、私はついに彼をご自宅に招くことを了承しました。

そして、運命のその時。

部屋に一歩足を踏み入れた日下部様がまず目にしたのは、私が密かに崇め奉っている「日下部様祭壇」。壁一面に並べられたブロマイド、きらめくストローのコレクション、紙パックを丁寧に収めた棚――完全に祀られています。

一瞬の静寂。そして、次の瞬間。

「……ぷっ……あはっ……! くっ……あははははっ!」

お上品に、けれど涙が滲むほどの爆笑が部屋に響き渡りました。

「な、な、何もこんなに真剣に……! ああ、だめ……苦しい……っ!」

悶えるように笑う日下部様を前に、私は顔が真っ赤になり、穴があれば入りたい気分です。

「日下部様、これはその……! あの……!」

何か弁明しようとしましたが、言葉が見つかりません。彼がようやく息を整え、涙を拭いながら私を見つめました。

「夢見さん、本当にすごいね……。いや、これだけされると、僕も参っちゃうよ。」

彼は優しく微笑みながら、棚の一つを指差しました。

「これ、僕が使っていたストローだよね? 本当に大事にしてくれてるんだ。」

その言葉に、私は思わず涙ぐみました。バカにされるどころか、彼はそれを温かく受け止めてくれたのです。

「君の気持ちが、ちゃんと伝わってるよ。本当にありがとう、夢見さん。」

その優しい言葉に、私は思わず涙をこぼしました。彼の笑顔を見ながら、これからも精一杯、この気持ちを大切にしよう――そう強く思ったのでした。
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