16 / 40
16.異常事態と魔王
しおりを挟む
長い合宿の日程を終え、いよいよ冒険者ギルドに帰還する日がやって来た。
エイブラハムさんは小屋の前に俺たち4人を集める。
「トラブルはあったが、シェミハザ、クラウス、ヘルマ、イルマ。ここにいる全員合格だ! この後は冒険者ギルドに戻って昇格の手続きをして解散となる」
俺の除く3人はくたくたになった様子で頷く。最初に言った通り、実力を見るというよりは鍛えるという意味合いの方が強かったんだろう。
荷物を持って小屋を後にし、やって来たであろう道を戻る。行きと帰りって全然道が違うように見えるんだが、俺だけか?
歩いていると見覚えのある木や、俺に粉砕された巨岩の破片などを見つけた。考えてみれば、以前俺がドクヘドラーを倒した場所とそう遠くない距離だ。日が傾き始めるずっと前にセバルドに到着できるだろう。
「お疲れ様でした!」
冒険者ギルドで赤ランクの証を貰った俺たち4人は現地解散ということになった。これからどうするのかと訊くと、クラウスは貴族街にある実家に、ハルフォーフ姉妹は宿屋に帰って寝るらしい。そりゃそうか。疲れていると言っていたし。
俺は全く疲れていないから依頼でもこなそうかと冒険者ギルドに留まったが、アレーナがいないと道に迷って仕事にならないんだった。
合宿ではなかっただろうが、そんなに長期だったのか? 受付の人曰く、まだアレーナは帰って来ていないらしい。
なんとアレーナだけでなく、同じ日に青ランク昇格試験を受験した全員と、紫ランクの試験官も誰1人戻ってきていないとか。不安だ。
「青ランクの昇格試験はもう終わっていても良いはずなんですけど、誰も戻ってきていないんです。そろそろ捜索隊を組もうかと話し合われているところでして」
青ランクの昇格試験は、確か指定されたモンスターを倒してくるとかいうやつだったか。それにやられているのではないのか。
「だとしても、全員が死亡するということはおかしいんです。確かに合格率は低い試験ですが、再受験が可能なので無理だと判断すれば放棄する人がほとんどですから」
つまり何らかの異常事態が起こっている、と。原因が何にせよ、仲間の消息が掴めなくなったとあれば俺に行かない選択肢はない。
「青ランク昇格試験の場所、教えてください」
真剣に受付に申し出るが、受付の人にはにべもなく断られてしまった。
勝手に行くんだから、俺が帰ってこようがこなかろうが関係ないだろうと目を細めると、受付はヒッと声を上げて後退りをしながら、それでも意思は揺らがないようだった。
焦りと生来の短気さからか、段々と苛ついてくる。殺気で冒険者ギルドから人が退去する中、不必要なほど気丈なこの受付と俺は冒険者ギルドに残されていた。
「紫ランクの試験官含め、誰も帰ってきていないのにですか!? 無謀です!」
「なら! 手当たり次第探すまで──「どうしたシェミハザ、困りごとか?」
俺の声を遮る、聞き覚えのある声。エイブラハムさんか。素早く振り向くと、エイブラハムさんは多少驚きながらも、話を聞いてくれそうな雰囲気を見せた。
「仲間が青ランク昇格試験で行方不明になったらしいんで、探しに行きます」
「なら、俺も行くぞ。……なにしろ、ついこの間に『お前の力になる』と言ったばかりじゃないか」
紫ランクのエイブラハムさんならまず捜索を拒否されることはないか。なら好都合だ。
エイブラハムさんは魔族に対する敵対心こそあるが、人が増える分には問題ない。紫ランクなら足手まといにはならないだろう。
「受付のねえちゃん。俺が行く、と言ったらどうする?」
「それは、もちろん場所をお伝えします。しかし……」
「シェミハザのことか? 気にすんな。こいつはたまげるほど強い」
それでは、と遂に折れた受付は地図と討伐対象を俺達に見せた。クエレブレに代わりに見て貰った。俺は地図が読めない。
「善は急げだ。すぐ行くぞ! っておい、荷物は置いてけ!」
エイブラハムさんの名義で受付に荷物を預けると、俺達はすぐさま現地に向かうことにした。
エイブラハムさんは小屋の前に俺たち4人を集める。
「トラブルはあったが、シェミハザ、クラウス、ヘルマ、イルマ。ここにいる全員合格だ! この後は冒険者ギルドに戻って昇格の手続きをして解散となる」
俺の除く3人はくたくたになった様子で頷く。最初に言った通り、実力を見るというよりは鍛えるという意味合いの方が強かったんだろう。
荷物を持って小屋を後にし、やって来たであろう道を戻る。行きと帰りって全然道が違うように見えるんだが、俺だけか?
歩いていると見覚えのある木や、俺に粉砕された巨岩の破片などを見つけた。考えてみれば、以前俺がドクヘドラーを倒した場所とそう遠くない距離だ。日が傾き始めるずっと前にセバルドに到着できるだろう。
「お疲れ様でした!」
冒険者ギルドで赤ランクの証を貰った俺たち4人は現地解散ということになった。これからどうするのかと訊くと、クラウスは貴族街にある実家に、ハルフォーフ姉妹は宿屋に帰って寝るらしい。そりゃそうか。疲れていると言っていたし。
俺は全く疲れていないから依頼でもこなそうかと冒険者ギルドに留まったが、アレーナがいないと道に迷って仕事にならないんだった。
合宿ではなかっただろうが、そんなに長期だったのか? 受付の人曰く、まだアレーナは帰って来ていないらしい。
なんとアレーナだけでなく、同じ日に青ランク昇格試験を受験した全員と、紫ランクの試験官も誰1人戻ってきていないとか。不安だ。
「青ランクの昇格試験はもう終わっていても良いはずなんですけど、誰も戻ってきていないんです。そろそろ捜索隊を組もうかと話し合われているところでして」
青ランクの昇格試験は、確か指定されたモンスターを倒してくるとかいうやつだったか。それにやられているのではないのか。
「だとしても、全員が死亡するということはおかしいんです。確かに合格率は低い試験ですが、再受験が可能なので無理だと判断すれば放棄する人がほとんどですから」
つまり何らかの異常事態が起こっている、と。原因が何にせよ、仲間の消息が掴めなくなったとあれば俺に行かない選択肢はない。
「青ランク昇格試験の場所、教えてください」
真剣に受付に申し出るが、受付の人にはにべもなく断られてしまった。
勝手に行くんだから、俺が帰ってこようがこなかろうが関係ないだろうと目を細めると、受付はヒッと声を上げて後退りをしながら、それでも意思は揺らがないようだった。
焦りと生来の短気さからか、段々と苛ついてくる。殺気で冒険者ギルドから人が退去する中、不必要なほど気丈なこの受付と俺は冒険者ギルドに残されていた。
「紫ランクの試験官含め、誰も帰ってきていないのにですか!? 無謀です!」
「なら! 手当たり次第探すまで──「どうしたシェミハザ、困りごとか?」
俺の声を遮る、聞き覚えのある声。エイブラハムさんか。素早く振り向くと、エイブラハムさんは多少驚きながらも、話を聞いてくれそうな雰囲気を見せた。
「仲間が青ランク昇格試験で行方不明になったらしいんで、探しに行きます」
「なら、俺も行くぞ。……なにしろ、ついこの間に『お前の力になる』と言ったばかりじゃないか」
紫ランクのエイブラハムさんならまず捜索を拒否されることはないか。なら好都合だ。
エイブラハムさんは魔族に対する敵対心こそあるが、人が増える分には問題ない。紫ランクなら足手まといにはならないだろう。
「受付のねえちゃん。俺が行く、と言ったらどうする?」
「それは、もちろん場所をお伝えします。しかし……」
「シェミハザのことか? 気にすんな。こいつはたまげるほど強い」
それでは、と遂に折れた受付は地図と討伐対象を俺達に見せた。クエレブレに代わりに見て貰った。俺は地図が読めない。
「善は急げだ。すぐ行くぞ! っておい、荷物は置いてけ!」
エイブラハムさんの名義で受付に荷物を預けると、俺達はすぐさま現地に向かうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる