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17.昇格試験に行く剣士
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青ランク昇格試験の集合場所は、セバルドの街から離れた野営地のような所だった。
簡易的な木柵に囲まれ、せせこましく建てられた天幕の間に辛うじて広場といえるくらいのスペースがある。
アタシは天幕を通り抜けて、小さな広場に集まった、10人くらいいる他の受験者の顔を眺めた。ま、単独行動みたいだからいちいち覚えておく必要はないんだけど。
年齢はアタシより少し上……20代半ばくらいの受験者が多いみたい。いわゆる全盛期ってやつ。アタシと同じように周りの様子を窺っている人もいれば、まるで興味を示さない──シェミハザ様みたいなタイプ──のもいる。
推薦とか、そういうまどろっこしい制度なしでは最高位である青ランクの受験者が10人程度来ているのなら、これ以上人数が増えることはないでしょう。たぶんもうそろそろ試験官が現れる頃ね。
「あ。どうもみなさん。試験官のレメクです!」
天幕の一つから現れたのは、10歳くらいの男の子だった。お遊びなのか試験官を名乗るその子供は、ふにゃっと笑ってアタシ達に向かって手を挙げる。
誰も反応しない。
アタシもちらっと見て、美少年であることを確認して興味無いので視線を外した。
「ちょっと! ボクが試験官なんですってば」
まるで相手にされていない。
「本物の紫ランクなんですからっ。もう!」
懐から紫色のプレートを取り出し、それでやっと受験生(アタシ含め)は注目した。見た目と実力はつり合っていないこともある……って、それくらいは赤ランクにもなればみんな知ってるんだし、最初からそれやってればいいのに。
「これから青ランク昇格試験についての説明を始めるので、ちゃんと聞いてくださいね」
小さな試験官……レメクは小さな手に持った羊皮紙の内容を読み上げる。
「知っての通り、各自指定されたモンスターを討伐するのが昇格の条件となっています! 討伐失敗で失格となりますが、再受験は可能なので命を大事にお願いしますー」
受験者一人ひとりに羊皮紙を渡すレメク。アタシのは……スケリトル・ワーム、要するに巨大な蛇の骸骨のこと。相性は悪くないし見つけるのも簡単なんだけど、場所が遠いな。他の人がどんなのか知らないけど、倒せるだけ当たりかな。
討伐したら通常の依頼と同じように討伐部位を剥ぎ取って、ここにいるレメクに羊皮紙と一緒に渡すそう。それじゃイカサマし放題なんじゃないの? と思ったら、そうはさせないように判別できる魔法がかけられているらしい。便利ね。
順次モンスターを倒しに行っていいと言われ、受験者達は狭い野営地を出て討伐予定のモンスターを探しに行く。
スケリトル・ワームの生息地は南東部の湿地。地図を見るまでもなく場所はわかってるから、向かう途中の目印をしっかりと記憶して帰り道も迷わないようにする。
自慢じゃないけど索敵は得意。それに、スケリトル・ワームはかなりの巨体の上、アンデッド系だから好戦的で発見は容易だ。アンデッド系のモンスターが発生する理由は死体の放置にある。倒したモンスターの死体をわざわざ埋葬する冒険者は手間がかかるから少ないけど、死体処理を専門にやってる冒険者もいるからあんまり大きな問題になることは少ない。まあ、巨大化するのもたまにいるんだけど。
時間制限とかは無いみたいだから、ペースは気にする必要はない。でもさっさと倒しちゃった方が気が楽だし、駆け足40歩早足40歩のペースで湿地へと足を進めた。
移動にそこそこ時間を取られたものの、湿地に到着すれば早速のお出ましだ。
湿地のまばらな木々の向こうから、生木の折れる音、水が跳ねる音が聞こえ、そして何より白骨化した大きな尾がぶんぶんと大きく振れていた。
スケリトル・ワームはこちらの姿をなにも嵌っていない眼窩で捉えると、身体を捩らせて木々を薙ぎ倒しながら向かってくる。
「エンチャント・ウィンド」
腰の細剣を抜き払って正面に構え、風を刀身に纏わせる。
狙うのは骨と骨の継ぎ目。魔力で関節の代わりの動きをしている場所。ここを砕けば、一気に崩れ落ちて動きが鈍る。アンデッドの癖に生命力が強いのが面倒なポイントだけど、首の継ぎ目を砕けば動かなくなる。焦らずに下から崩していくのが定石だ。
尚も接近する骨の大蛇、その長い尾がアタシに叩きつけられる寸前に動く。
尾の根元に、風で威力を増した突きを鋭く入れる。ピシリ、と音が鳴って継ぎ目の間が広がった。倒れてくることを予想して飛び退くと、さっき自分がいた位置に、上半身だけになったスケリトル・ワームが落ちてきた。
スケリトル・ワームの上半身は、今度はアタシを噛みちぎろうと暴れる。けれど、もう手遅れ。動きがすっかり鈍くなっているようで、背後に回って同じように突きを繰り出せば、首はあっさり外れて動きが止まった。
「これで一丁上がり、かな」
討伐の証明部位である砕いた首の骨を小袋に入れ、野営地に戻ろう。空は少しだけ橙色に染まり始め、日没が近かった。
簡易的な木柵に囲まれ、せせこましく建てられた天幕の間に辛うじて広場といえるくらいのスペースがある。
アタシは天幕を通り抜けて、小さな広場に集まった、10人くらいいる他の受験者の顔を眺めた。ま、単独行動みたいだからいちいち覚えておく必要はないんだけど。
年齢はアタシより少し上……20代半ばくらいの受験者が多いみたい。いわゆる全盛期ってやつ。アタシと同じように周りの様子を窺っている人もいれば、まるで興味を示さない──シェミハザ様みたいなタイプ──のもいる。
推薦とか、そういうまどろっこしい制度なしでは最高位である青ランクの受験者が10人程度来ているのなら、これ以上人数が増えることはないでしょう。たぶんもうそろそろ試験官が現れる頃ね。
「あ。どうもみなさん。試験官のレメクです!」
天幕の一つから現れたのは、10歳くらいの男の子だった。お遊びなのか試験官を名乗るその子供は、ふにゃっと笑ってアタシ達に向かって手を挙げる。
誰も反応しない。
アタシもちらっと見て、美少年であることを確認して興味無いので視線を外した。
「ちょっと! ボクが試験官なんですってば」
まるで相手にされていない。
「本物の紫ランクなんですからっ。もう!」
懐から紫色のプレートを取り出し、それでやっと受験生(アタシ含め)は注目した。見た目と実力はつり合っていないこともある……って、それくらいは赤ランクにもなればみんな知ってるんだし、最初からそれやってればいいのに。
「これから青ランク昇格試験についての説明を始めるので、ちゃんと聞いてくださいね」
小さな試験官……レメクは小さな手に持った羊皮紙の内容を読み上げる。
「知っての通り、各自指定されたモンスターを討伐するのが昇格の条件となっています! 討伐失敗で失格となりますが、再受験は可能なので命を大事にお願いしますー」
受験者一人ひとりに羊皮紙を渡すレメク。アタシのは……スケリトル・ワーム、要するに巨大な蛇の骸骨のこと。相性は悪くないし見つけるのも簡単なんだけど、場所が遠いな。他の人がどんなのか知らないけど、倒せるだけ当たりかな。
討伐したら通常の依頼と同じように討伐部位を剥ぎ取って、ここにいるレメクに羊皮紙と一緒に渡すそう。それじゃイカサマし放題なんじゃないの? と思ったら、そうはさせないように判別できる魔法がかけられているらしい。便利ね。
順次モンスターを倒しに行っていいと言われ、受験者達は狭い野営地を出て討伐予定のモンスターを探しに行く。
スケリトル・ワームの生息地は南東部の湿地。地図を見るまでもなく場所はわかってるから、向かう途中の目印をしっかりと記憶して帰り道も迷わないようにする。
自慢じゃないけど索敵は得意。それに、スケリトル・ワームはかなりの巨体の上、アンデッド系だから好戦的で発見は容易だ。アンデッド系のモンスターが発生する理由は死体の放置にある。倒したモンスターの死体をわざわざ埋葬する冒険者は手間がかかるから少ないけど、死体処理を専門にやってる冒険者もいるからあんまり大きな問題になることは少ない。まあ、巨大化するのもたまにいるんだけど。
時間制限とかは無いみたいだから、ペースは気にする必要はない。でもさっさと倒しちゃった方が気が楽だし、駆け足40歩早足40歩のペースで湿地へと足を進めた。
移動にそこそこ時間を取られたものの、湿地に到着すれば早速のお出ましだ。
湿地のまばらな木々の向こうから、生木の折れる音、水が跳ねる音が聞こえ、そして何より白骨化した大きな尾がぶんぶんと大きく振れていた。
スケリトル・ワームはこちらの姿をなにも嵌っていない眼窩で捉えると、身体を捩らせて木々を薙ぎ倒しながら向かってくる。
「エンチャント・ウィンド」
腰の細剣を抜き払って正面に構え、風を刀身に纏わせる。
狙うのは骨と骨の継ぎ目。魔力で関節の代わりの動きをしている場所。ここを砕けば、一気に崩れ落ちて動きが鈍る。アンデッドの癖に生命力が強いのが面倒なポイントだけど、首の継ぎ目を砕けば動かなくなる。焦らずに下から崩していくのが定石だ。
尚も接近する骨の大蛇、その長い尾がアタシに叩きつけられる寸前に動く。
尾の根元に、風で威力を増した突きを鋭く入れる。ピシリ、と音が鳴って継ぎ目の間が広がった。倒れてくることを予想して飛び退くと、さっき自分がいた位置に、上半身だけになったスケリトル・ワームが落ちてきた。
スケリトル・ワームの上半身は、今度はアタシを噛みちぎろうと暴れる。けれど、もう手遅れ。動きがすっかり鈍くなっているようで、背後に回って同じように突きを繰り出せば、首はあっさり外れて動きが止まった。
「これで一丁上がり、かな」
討伐の証明部位である砕いた首の骨を小袋に入れ、野営地に戻ろう。空は少しだけ橙色に染まり始め、日没が近かった。
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