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18.追い詰められた剣士
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討伐場所までの距離は遠かった割に、帰還したのは早い方だったようで。野営地で知った顔は2つしか見当たらない。
日は既にほぼ沈んでおり、簡素な野営場も幾つかの松明で照らされていた。
知った顔以外にも人がいるのかといえば、受験者以外にも数人の冒険者がいて、見張りをしているみたいだ。
討伐の完了を報告するためにレメクを探そうとすると、あっさり見つかった。木箱の上に腰をおろして脚をぶらぶらさせている。
レメクは何故か半ズボンに長い靴下、ひらひらしたシャツという服装をしている。
戦闘に臨む格好としては頼りなさすぎる気もするけど、実は高機能の装備だったりするのかな。それとも紫ランクにもなれば、冒険者の常識は当てはまらないのかもしれない。
「スケリトル・ワームの首のとこの骨、と赤ランクのプレート。これで完了でしょ?」
レメクに指定部位である骨の入った袋と、身に付けていた赤いプレートを渡す。試験官の少年は受け取ってしばらく検分すると、笑顔を見せて懐から青いプレートを差し出した。
「うん。確かに受け取りました! それじゃあこれが青ランクの証ですっ。おめでとうございます!」
手渡された青いプレートを見て、アタシは感慨深く目を細める。
正直、シェミハザ様がいなかったらこんなに早く昇級できなかったと思う。あの人、方向音痴ですぐに寝るちゃらんぽらんだけど実力は確か──という域を軽く超えるくらいはあるから。魔王とか魔族とか名乗ってたけど。
これで念願の青ランクに昇格したということだし、もう帰ってしまいたい。全員が報告するまでは帰ってはいけないと言われてしまったのでそれはできないんだけど。夜は凶暴なモンスターが出没するし、スケリトル・ワームを倒した疲労が溜まっているので、天幕が張られているこの場所で夜を明かそうと思う。
手頃なところはどこかないかと見回すと、近くから肉の焼ける良い香りが漂ってきた。
熊耳の若い男が肉を串に刺して焚き火で炙っている。ふらりとそちらの方へ行くと男が気付いて串を1本こちらに差し出した。
「お姉さん食べる?」
「いいの? 食料をタダで分けてもらって」
「そこらで倒したモンスターの肉だよ。日持ちしないからここで食ってくれていい。味は保証しないがね」
「そ。じゃ、ありがたくいただいてくわ」
熊耳の男から肉の刺さった木串を受け取り、焼かれたモンスターの肉にかぶりつく。
なるほど、筋張っているし臭みが強い。
「ここで会ったのも縁だしさ、一緒に天幕泊まってかない?」
って、なんだナンパか。
若い男はシェミハザ様のような群を抜いた美貌があるわけでもないし、受験者の赤ランクですらなく黄ランクだ。
どっちにしろ、どんな人であろうが最初から断るつもりだけど。
「相手がいるんで」
「ここには居ないんだろ?」
「そういう問題じゃないから」
徹底的に断り続けてもしつこく誘い続けてくる。しつこい人は嫌いなんだけど。
無下にし続けていると、しびれを切らしたらしく拳を握りしめて殴りかかるようなポーズを取ってきたので、優しく忠告してあげる。
「黄ランクみたいだけど、青ランク冒険者の剣士にこの距離から仕掛けて勝てると思ってたりする?」
「……チッ」
腰の細剣に手を掛け、殺気を込めて睨むと熊耳の男は諦めたように拳を下ろし、ふんと背を向けて焚き火で肉を炙り始めた。
近くの天幕では眠りたくないな。
男から離れたところの小さな天幕に入り、そこでしゃがみ込むようにして睡眠を取った。
疲れていたのか、割とすぐに瞼は落ちる。
「うわぁぁあああああ!!」
突然の叫び声に跳ね起きた。
抱え込んでいた細剣を腰に帯び、天幕から出て周囲の様子を伺う。他にも同様のことをしている冒険者がちらほら。
「痛え、痛えよ……ぐっ、うぅ……」
叫び声の元はすぐに見つかった。
受験者の1人の男だ。太腿の辺りから先が無く、びしゃびしゃと血が流れ出している。あれでは助かるまい。よほど腕の良い治癒魔法師じゃないと数分で失血死するでしょう。
その上に覆い被さるのは2足歩行の大型肉食爬虫類。口から血を滴らせ、骨が砕ける嫌な音を立てながら受験者の脚を咀嚼していた。
「おい、見ろよ、あれ……」
別の受験者が指差した先には、1つ目の巨人型モンスター──サイクロプスの大群が迫っている。
群れないはずのモンスターなのに、なぜ。
最悪の状況に頭が回らなくなる。
だいいち、試験官のレメクはどこ行ったのよ。まさか怖気付いて逃げたってわけ!?
サイクロプスの集団は殺気だっていて、なお悪いことに反対側からも来て囲まれてしまったようだ。
アタシは剣を抜いて風を纏わせると、まだ食事中の爬虫類の目に鋭い突きをお見舞いしてやった。絶叫を上げながらよろめく蜥蜴の首を貫き、縦に割いて完全に息の根を止める。
復讐はしてやったけど、脚を食われた冒険者は既に絶命していた。
それが合図となって、冒険者達は反撃を開始した。各々の武器を構え、固まってサイクロプスの群れに攻撃を仕掛ける。
「このままじゃキリがないわ! 野営地だと地の利がなさすぎる! 移動を!」
女の斧使いがサイクロプスの一撃を受け止めながら声を張り上げた。
「移動つっても退路もなんもねえぞ!」
アタシをナンパしてきた熊耳の男も負けじと声を上げる。
「北東の方向が手薄だから、一点突破すればいいんじゃないの!」
アタシも大声で提案をすると、ひとまずここを抜けるためにサイクロプスの肉壁が薄い北東から崩して逃げることになった。
魔法師の火魔法でなんとか野営地を脱出したアタシ達は、浅い洞窟のような崖の下と、そのすぐ近くにあった廃屋に立て籠る。
サイクロプスは追いかけてくるし、時々違うモンスターも混じっている。
状況は変わらないし、救援が来ないと相当不味い。シェミハザ様が合宿から戻ってくれば……いや、仮定の話はよそう。
日は既にほぼ沈んでおり、簡素な野営場も幾つかの松明で照らされていた。
知った顔以外にも人がいるのかといえば、受験者以外にも数人の冒険者がいて、見張りをしているみたいだ。
討伐の完了を報告するためにレメクを探そうとすると、あっさり見つかった。木箱の上に腰をおろして脚をぶらぶらさせている。
レメクは何故か半ズボンに長い靴下、ひらひらしたシャツという服装をしている。
戦闘に臨む格好としては頼りなさすぎる気もするけど、実は高機能の装備だったりするのかな。それとも紫ランクにもなれば、冒険者の常識は当てはまらないのかもしれない。
「スケリトル・ワームの首のとこの骨、と赤ランクのプレート。これで完了でしょ?」
レメクに指定部位である骨の入った袋と、身に付けていた赤いプレートを渡す。試験官の少年は受け取ってしばらく検分すると、笑顔を見せて懐から青いプレートを差し出した。
「うん。確かに受け取りました! それじゃあこれが青ランクの証ですっ。おめでとうございます!」
手渡された青いプレートを見て、アタシは感慨深く目を細める。
正直、シェミハザ様がいなかったらこんなに早く昇級できなかったと思う。あの人、方向音痴ですぐに寝るちゃらんぽらんだけど実力は確か──という域を軽く超えるくらいはあるから。魔王とか魔族とか名乗ってたけど。
これで念願の青ランクに昇格したということだし、もう帰ってしまいたい。全員が報告するまでは帰ってはいけないと言われてしまったのでそれはできないんだけど。夜は凶暴なモンスターが出没するし、スケリトル・ワームを倒した疲労が溜まっているので、天幕が張られているこの場所で夜を明かそうと思う。
手頃なところはどこかないかと見回すと、近くから肉の焼ける良い香りが漂ってきた。
熊耳の若い男が肉を串に刺して焚き火で炙っている。ふらりとそちらの方へ行くと男が気付いて串を1本こちらに差し出した。
「お姉さん食べる?」
「いいの? 食料をタダで分けてもらって」
「そこらで倒したモンスターの肉だよ。日持ちしないからここで食ってくれていい。味は保証しないがね」
「そ。じゃ、ありがたくいただいてくわ」
熊耳の男から肉の刺さった木串を受け取り、焼かれたモンスターの肉にかぶりつく。
なるほど、筋張っているし臭みが強い。
「ここで会ったのも縁だしさ、一緒に天幕泊まってかない?」
って、なんだナンパか。
若い男はシェミハザ様のような群を抜いた美貌があるわけでもないし、受験者の赤ランクですらなく黄ランクだ。
どっちにしろ、どんな人であろうが最初から断るつもりだけど。
「相手がいるんで」
「ここには居ないんだろ?」
「そういう問題じゃないから」
徹底的に断り続けてもしつこく誘い続けてくる。しつこい人は嫌いなんだけど。
無下にし続けていると、しびれを切らしたらしく拳を握りしめて殴りかかるようなポーズを取ってきたので、優しく忠告してあげる。
「黄ランクみたいだけど、青ランク冒険者の剣士にこの距離から仕掛けて勝てると思ってたりする?」
「……チッ」
腰の細剣に手を掛け、殺気を込めて睨むと熊耳の男は諦めたように拳を下ろし、ふんと背を向けて焚き火で肉を炙り始めた。
近くの天幕では眠りたくないな。
男から離れたところの小さな天幕に入り、そこでしゃがみ込むようにして睡眠を取った。
疲れていたのか、割とすぐに瞼は落ちる。
「うわぁぁあああああ!!」
突然の叫び声に跳ね起きた。
抱え込んでいた細剣を腰に帯び、天幕から出て周囲の様子を伺う。他にも同様のことをしている冒険者がちらほら。
「痛え、痛えよ……ぐっ、うぅ……」
叫び声の元はすぐに見つかった。
受験者の1人の男だ。太腿の辺りから先が無く、びしゃびしゃと血が流れ出している。あれでは助かるまい。よほど腕の良い治癒魔法師じゃないと数分で失血死するでしょう。
その上に覆い被さるのは2足歩行の大型肉食爬虫類。口から血を滴らせ、骨が砕ける嫌な音を立てながら受験者の脚を咀嚼していた。
「おい、見ろよ、あれ……」
別の受験者が指差した先には、1つ目の巨人型モンスター──サイクロプスの大群が迫っている。
群れないはずのモンスターなのに、なぜ。
最悪の状況に頭が回らなくなる。
だいいち、試験官のレメクはどこ行ったのよ。まさか怖気付いて逃げたってわけ!?
サイクロプスの集団は殺気だっていて、なお悪いことに反対側からも来て囲まれてしまったようだ。
アタシは剣を抜いて風を纏わせると、まだ食事中の爬虫類の目に鋭い突きをお見舞いしてやった。絶叫を上げながらよろめく蜥蜴の首を貫き、縦に割いて完全に息の根を止める。
復讐はしてやったけど、脚を食われた冒険者は既に絶命していた。
それが合図となって、冒険者達は反撃を開始した。各々の武器を構え、固まってサイクロプスの群れに攻撃を仕掛ける。
「このままじゃキリがないわ! 野営地だと地の利がなさすぎる! 移動を!」
女の斧使いがサイクロプスの一撃を受け止めながら声を張り上げた。
「移動つっても退路もなんもねえぞ!」
アタシをナンパしてきた熊耳の男も負けじと声を上げる。
「北東の方向が手薄だから、一点突破すればいいんじゃないの!」
アタシも大声で提案をすると、ひとまずここを抜けるためにサイクロプスの肉壁が薄い北東から崩して逃げることになった。
魔法師の火魔法でなんとか野営地を脱出したアタシ達は、浅い洞窟のような崖の下と、そのすぐ近くにあった廃屋に立て籠る。
サイクロプスは追いかけてくるし、時々違うモンスターも混じっている。
状況は変わらないし、救援が来ないと相当不味い。シェミハザ様が合宿から戻ってくれば……いや、仮定の話はよそう。
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