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元王子アール
700年前④
しおりを挟む吹き飛ばされた先に運良く壁があったので、咄嗟に隠れる。
おかげでメイに見つからずに済んだ。
ボクは今夜また挑戦しようと、自分の部屋に退散した。
…その日の夜も次の日の夜も毎晩毎晩ツバキの部屋を訪れたが、結界魔法のせいで一度も中に入れなかった。
ツバキと少しも距離を縮められずに3ヶ月経ってしまった。
キーノとジーマが父上にツバキの特訓が終わった事、1週間後に魔王討伐に旅立つ旨を報告していた。
「ボクも行くっ!」
急いでボクは発言した。
北の大地までは片道1ヶ月はかかる。
そんなに長い間ツバキと離れ離れなんて耐えられない。
「アール、馬鹿を言うんじゃない!
遊びに行くんじゃないし、危険な旅なんだぞ!
お前はワシの唯一の子供で未来の王なんだぞ!
お前の身に何かあったらどうするんだ!?」
滅多な事では怒らない父上が、珍しく怒りも露わにボクを叱りつける。
「父上、ボクは創造神から啓示を受けた時に同時に祝福も授かったんですよ。
勇者がボクの近くにいるという条件付きですけど、ボクは不老不死なんです。」
真実の中に嘘を混ぜて父上に説明した。
「殿下が不老不死ならば、この旅は心強いですな。」
「きっと魔王も討伐できますわ。」
ボクの言葉を信じたキーノとジーマが援護してくれる。
父上はまだ渋い顔をしていたが、お願いしますと懸命に訴えた。
そして最後には、それなら仕方ないと折れてくれた。
これから1ヶ月、毎日ツバキとずっと一緒にいられる。
でも魔王を倒す前にツバキと相思相愛になったら、その場でボクだけ城まで引き返そう。
だってボクの本当の祝福は、ツバキと相思相愛になったら不老不死じゃなくなるし、ツバキが元の世界に帰ってしまう術を授かってしまうから。
ボクは心の中で舌を出して、1週間後の旅立ちに向けてルンルンと準備を始めた。
そして出発の日。
旅のメンバーにボクがいる事を知らないツバキが驚いた顔をしている。
驚いているツバキもとっても可愛い…!
「王子、私達は遊びに行くんじゃないんだけど?
何考えてんの?」
ボクを心配して本気で怒ってくれている。
愛する人をむやみに不安にさせたくないので、ボクは父上達に話した嘘の祝福の話をツバキにもした。
ツバキはその話を聞いて、まだ心配だけど仕方ないという風にボクも一緒に行くことを了承した。
嬉しさでいっぱいで馬車のキャビンに一番に乗り込む。
馬車のキャビンはそんなに広くないので、ツバキと密着して座れる。
ウキウキで待っていると次にジーマが乗ってきた。
ツバキは開いている扉の前に来て、なんと自分が乗る前に扉を閉めてしまった!
えっ!?えっ!?えっ!?
ツバキはどこに乗るのっ?
馬車の窓を開けて御者席を見ると、キーノが座る御者席に二人並んで座っている。
ズルい!
キーノの方が密着しているじゃないか!
ガタンと音を立てて馬車は進み出してしまった。
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