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元王子アール
700年前⑨
しおりを挟む…何とか村人達を撒いたようだ。
方角も場所も分からないまま逃げたので、結局振り出しに戻ってしまったが。
ぐーーー
逃げ切った安心感から、体が空腹を訴えてきた。
不死身だから餓死で死なないが(死んでも復活はする)、空腹感は消えない。
振り返れば表彰式から何も食べていない。
ここは街道から逸れた林の中だ。
食べられそうな木の実を見つけて口にする。
…マズイ、何とか食べられはするが沢山食べられる味じゃない。
ほんの少し、飢えが和らいで考えた。
あれから何日経ったのだろう?
ボクは情報を求めて、また別の村か街を探さなければならない。
今度は慎重に動かないとまた同じ目に遭うかもしれない。
林の中で見つけた木の実を入れられるだけポケットに詰めて、再び街道を目指して歩き出した。
3日歩いて見つけたのは、タダーノ村よりも数倍大きい街『フーツー街』だった。
この国で金髪は珍しいけど王族以外で全くいない訳じゃない。
エメラルドの目を見られないように、俯いて民家を探す。
探すは洗濯物を外に干している民家だ。
目当てはフードがついている上着だ。
この目立つ金髪が隠せればエメラルドの瞳は珍しいものじゃない。
時折、木の影に隠れながら理想の家を探す。
20軒目にしてようやく見つけた。
幸運な事にちょうど家の者らしい男女が家から出かけて行った。
チャンスだ!
周りに誰もいないのを確認して、干してある洗濯物からフード付きの上着だけを外す。
後は手に拳大の石を握りしめて、人の目につかない窓を選んでできるだけ大きな音が出ないように窓ガラスを割る。
ガシャンと思いの外、大きな音が出てしまった。
すぐに物陰に隠れて様子を伺う。
しばらく経っても何も起きないので、割った窓の鍵を外して、窓を開けて中に入った。
部屋の中の目的はお金あるいは金目の物である。
旅をするにあたって一文無しだったので、路銀は必要だった。
その部屋にたまたま箪笥や引き出しがあったので、片っ端から開けてまわる。
時間との勝負だった。
「…お兄ちゃん、だぁれ?」
いつの間にか、部屋のドアの前に7才ぐらいのパジャマ姿の少年が立っていた。
しまった!
留守番の子供がいたとは!
どうする、空き巣の現場を見られてしまったぞ!
「お兄ちゃんは泥棒なの?」
泥棒!?
王子であるボクに向かって失礼なガキだ!
城で石を投げつけてきた少年の姿と重なる。
泥棒という単語に思わずカッとなってしまった。
ーー気付いたら、頭から血を流した少年が足元でピクリとも動かず倒れていた。
ボクの手には先程窓を割る為に使った石がある。
石には少年の血が付いていた。
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