聖女の秘密

水田 みる

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大団円

エピローグ①

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 家族葬専門の葬儀場に『故片倉 椿儀 葬儀式場』と看板が立てられている。

今日は私、片倉かたくら 小春こはるのひいお祖母ちゃんのお葬式だ。

最後に会ったのは、1ヶ月前ひいお祖母ちゃんの入っていた老人ホームに会いに行った時だ。

その時はバリバリ元気だったのに、やっぱり去年老衰で亡くなった、ひいお祖父ちゃんがいなくなって寂しかったんだろうか。

同じホームに入っていて、ひ孫の私から見てもいつもすごく仲良さそうだったから。

お祖父ちゃんから聞いた話では、二人は元々幼馴染で高校生の時から恋人として付き合っていたらしい。

大恋愛だったそうで結婚してからも、キャッキャッウフフしていたそうな。

私から見たひいお祖父ちゃんは優しいけど、寡黙な人だったから初めて聞いた時は驚いた。

そのお祖父ちゃんは前回のひいお祖父ちゃんの時と同じく、今回も長男として喪主を務めている。


式が始まるまでまだまだ時間はある。

高校生の私に手伝える事はほとんどなく、ひいお祖母ちゃんのお棺が設置してある部屋に移動した。

そこは遺族の待合室も兼任している和室で、たくさんの親族がひいお祖母ちゃんとひいお祖父ちゃんの思い出話に花を咲かせている。

二人の大往生と人柄が成せる業だろう。

私は自分と同い年の従妹を探した。

見つけた、彼女ー宇佐木うさぎ かえでは部屋の隅っこで熱心にA4の大学ノートを読んでいる。


「…何読んでんの?」

「うっわぁ、ビックリした!

何だ小春か、驚かせないでよ!」


私と楓は同じ高校に通っていて、クラスは違うが学年も一緒なので仲が良く遠慮もない。

因みにこの高校に、ひいお祖父ちゃんとひいお祖母ちゃんも通ってたそうな。

制服も当時と変わっていないらしく、ひいお祖母ちゃんがこの格好を見る度に懐かしそうに目を細めていたのを思い出す。


「ゴメン、で、何読んでたの?」

「…ひいお祖母ちゃんが昔、話してくれたひいお祖母ちゃん自身の冒険の話。

私、その話がひいお祖母ちゃんの作り話って分かってても面白くて好きだったんだよね。

それで話を聞いた後に忘れないように、自分でノートに書いてたの。

ひいお祖母ちゃんが亡くなって、久しぶりにこのノート開いたんだ。」


ひいお祖母ちゃんが私達が小さい頃から語って聴かせてくれた、自身を主役にした異世界召喚の話。

作り話と分かっていても妙にリアリティがあって、私も面白くて好きだった。

まさか楓が書き留めていたとは…

私も読んでみたくなった。


「私にも見せて見せて、久しぶりに思い出したい!」

「私が後ちょっとで読み終わるから、それまで待ってよ!」


二人でわちゃわちゃしてると、急に部屋の入り口が騒がしくなった。


入り口に目を遣ると、プラチナブロンドの髪にプラチナブロンドの目をした明らかに外国人の少年が立っていた。

人間離れした美しい少年だ。

年は私達より少し下に見えるのに、私達と同じ高校の男子の制服を着ている。

でもこんな男子見た事ないし、いたら絶対に噂になってる!

いやいや、そうじゃない!

今はひいお祖母ちゃんのお葬式で、家族葬だから親族のみの出席だ。


「あのっ、すみません!

ひいお祖母ちゃんのお葬式なんですけど、誰かと間違ってませんか?」


勇気を出して話しかけた。


「…真田じゃなかった、片倉 椿のお葬式でしょ?」


ゴリゴリの外国人なのに日本語ペラッペラじゃん!

ってか、何でひいお祖母ちゃんを知ってるの!?

接点ないでしょ!

パニくる私を無視して少年は、ひいお祖母ちゃんのお棺の前で止まった。

ひいお祖母ちゃんの顔が見えるように、顔の扉は開いている。

そこを少年は覗き込んで


「天寿を全うしたんだね、悪友。」


哀しげに微笑んでどこから出したのか赤い椿の花を一輪、お棺の上に供えていた。


「あぁ、それからこれ。」


少年はそう言って近くにいた私に、パンパンに膨らんだ不祝儀袋を5袋渡した。


「僕から椿に500年分の慰謝料。

遺族である君達が好きに使って。

それじゃあね。」


…そう言い残して部屋から立ち去った。

嵐のように来て去っていった少年に唖然としたが我に返る。


「…ちょっとこれっ!」


慌てて後を追いかけようと廊下に出たが、もう少年は影も形も見えなかった。


「…今のポンコツ神?」


楓が場にそぐわない単語を口にする。


「はい!?いきなり何…」

「その不祝儀袋の名前『ルールー』って書いてある。

私が今さっき読んでた話に出てきたポンコツ神の名前と一緒。」


手元のずっしりした袋を見ると確かに『ルールー』と書いてある。


「…まさか、ね…」


私達は顔を見合わせて、お互いに引きつった笑みを浮かべた…











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