31 / 81
アメジストの章
ギルドマスターとの面会
しおりを挟む男は牢屋のベッドに腰掛けていた。
ジロリと視線だけでアメジストを見上げる。
「…まだ元じゃねぇ。」
セゴドの言う通りカーサーバー小国で裁かれるまでは、一応彼がゴワスギルドのマスターであるのだ。
アメジストはセゴドの睨みを軽く受け流した。
「ふーん、プライドだけは一丁前ですねぇ。
事情聴取は黙秘を貫いた癖にぃ。」
「小娘の分際でほざくんじゃねぇぞ。」
アメジストは自分を見てこの反応なら、セゴドは祝福者のアメジストを知らないのかと思ったが瞬時に理由が閃いた。
「ー領主様、私はこの人と事情聴取でなく話してみたいので上で待っててくれませんか?」
領主は一瞬でアメジストの意図を理解する。
「承知致しました。私は上で待機しております。」
そう返事して一足先に長い階段を上っていった。
完全に領主の気配がなくなるのを待ってから再びセゴドに話しかけた。
「先程、貴方は私の事を『小娘』と言いましたけど、私よりも年下の小娘に出し抜かれてるじゃないですかぁ。」
「…どういう意味だ?」
「これですよ。」
そう言ってアメジストは先程の証拠品の一つ、ターコイズの祝福者からの陳情書を見せた。
「貴方と村長の企みなんて早々と気付いてたみたいですよ…えぇとイズン様。」
アメジストがターコイズの祝福者の名を口にするとセゴドの目に怒りが宿る。
彼女は丁寧に陳情書をしまい問うた。
「この陳情書の内容に身の覚えは?」
「ねぇよ、イズン…あの恩知らずめ!」
セゴドの顔に真っ黒なモヤがかかっている。
アメジストは心中で溜め息を吐き尋問を続けた。
「恩知らずとは?」
「ケッ、キュッシュ領内で流行病が広がった時に孤児のイズンをゴワスギルドが拾ってやったんだよ!
なのに恩を仇で返しやがって、あのヤロウ!」
「…じゃあイズン様に恩返しをしてもらいたくて、メンソーレ村長と手を組んだんですか?」
アメジストはそう言って今度は同盟書を見せる。
セゴドは一瞬詰まりながらも否定した。
「そんな物は知らねぇ!偽物だ!!」
やはり彼の顔には黒いモヤがかかっている。
アメジストは今度は隠さずに盛大に溜め息を吐いた。
「ハァーー、元ギルドマスターともあろう者がケツの穴が小っちゃいですねぇ。
あぁ、元じゃなくて現役でしたっけ。辛うじて。」
「オイ小娘、俺が牢の中だからって好き勝手言ってんじゃねぇぞ。
いざとなればぶち破ってテメェを殺せんだからな。」
セゴドの殺気に隊長が反応するが、アメジストは視線だけで「来るな」と止める。
「…ゴワスギルドにとってイズン様は十分に恩返ししたでしょうに。」
0
あなたにおすすめの小説
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる