夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの

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エルドリン王国編

142 精霊信仰

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 虫よけの香のおかげで、虫魔物の脅威も去り、これで安心して旅に出られる。
 未だに村を出てから一歩も動いていないことに気がついた私たちは、そそくさと隊列を組み直した。
 先頭はルーフェさん、その後ろにカイルさん、アルトさん、私、ライくんと続き、最後尾にジェイルさんという並びで出発する。従魔たちは自由気ままについてくるだろう。

 出発してからしばらく。本当に虫魔物が寄ってこないことに感動を覚える。
 あたりをキョロキョロ見回してみても、それらしきものは一切見えない。乱立する木々に感謝。

 精神的なストレスから解放され、清々しい気持ちで足を進める私は、ふわふわと夢見心地で歩いていたのだろう。後ろからトントンと肩を叩かれ、ハッと我に帰った。
 久しぶりに自分の足で歩けるからって、浮かれすぎていたようだ。
 これはのんびり平和な遠足では無いのだし、気をつけなければ。

 何事もなく半日が過ぎ、お昼休憩を取ることにした私たちは、いい感じに開けた場所に腰を下ろす。
 ニンファさんが用意してくれた軽食をみんなでつまみ、束の間の休息を取った。

「それにしても、チナさんも意外と体力があるのですね」

 ルーフェさんの呟きに顔を上げれば、じっとこちらを見つめる緑の目と目が合う。
 不思議そうな表情に首を傾げるが、そういえば村の前で、一目散にアルトさんに抱っこしてもらいにいったんだと思い出した。
 あれは虫魔物に怯えての行動だったが、旅に慣れていない普通のこどものように見えて当然だろう。
 
 実際は、ここまで息を切らさずに、歩みも遅れずにちゃんとついてきた私。
 もちろん、ルーフェさんが歩きやすい道を選んでくれたことや、歩幅を考えて歩いてくれていたことには気がついている。
 だとしても、ここまで大人についてこれているのは、私が旅慣れしていて充分な体力があるからだ。

「まだ幼いのに、すごいです」

 純粋にそう思ってくれていることが嬉しい。やる気も湧いてくるってものだ。

「そういえば、文句のひとつも言わないな」

 ジェイルさんも感心したように言う。
 同年代の子と旅をしたことなんて無いから分からないが、子供が大人しくついていくのはそんなに珍しいのだろうか。
 というか、文句というより、わがままなら盛大なものを言った気もするんだが。虫魔物を見たく無いから担いで行け、と……。

 微妙な顔をする私に気づかず、大人たちの褒め殺しは続く。

「いい子すぎて時々心配になるよ。もっと迷惑を掛けてくれていいんだがな」
「こんな子、今どきどこを探したっていないでしょう。カイルさんたちの育て方が良かったのでしょうか?」
「これは本人の気質だと思うよ。なんでも率先して手伝ってくれようとするしね」
「手伝いなんて、俺がガキのころは一度もしようとすら思わなかったぞ!ちびはすげぇな」

「――わたし、コタローのとこいってくる!」

 とうとういたたまれなくなった私は、ついに逃げ出した。顔が熱い。絶対真っ赤になっている。
 後ろの方で大人たちの笑い声が聞こえる。褒め殺しでからかうなんて、ひどいんじゃないだろうか。まったくもって大人げない!

「ん?どうした、チナ。顔が真っ赤だぞ。これ食うか?」

 通常運転のコタローのおかげで、少し落ち着きを取り戻した。

 そんな調子で旅は順調に進み、エルフの二人とも仲良くやれている。
 途中、エルフの村に通りかかれば少しお邪魔させてもらい、コタローは若様と崇められ、盛大な歓待を受けた。
 おばばが言っていた通り、私たちの話は国中に広がっているようだ。

 どこの村も町並みや生活はそう変わらないようで、私たちも次第に慣れてきた。
 自然で溢れているがきちんと整えられた空間は、穏やかな心地と落ち着きを与えてくれる。
 数日に一度はそんな村にたどり着けるので、さほど疲れも貯めずに歩んでこられた。

 中央地までもうそろそろ、というとき。ここに来て初めて村の外でエルフと遭遇する。

「おー、ディルクじゃないか!」

 ジェイドさんがディルクと呼んだその人は、体中に木や骨で出来たアクセサリーのようなものをジャラジャラとつけ、カランコロンと音を立てながら歩み寄ってくる。まさに、原住民、という出で立ちだ。

「紹介する。こいつはディルク。村に所属せず国中を渡り歩く、精霊信仰狂信者だ」

 真顔でじっと見つめられる。少し居心地が悪い。

「ディルク。こちらは若様とそのお仲間たち。右からカイル、アルト、チナ、ライだ。お前も話には聞いているだろう。主様のお客様方だ」
「ほう、彼らが……」

 ジリジリとコタローににじり寄り、顔を近づけてスンと鼻をならす。
 コタローに対してこんな態度を見せるエルフは初めて見た。
 コタローはむしろ楽しそうで気にしてないようだから良いけど、コタローが若様とかそういうこと以前に少し失礼なのではないだろうか。

「確かに、主様と似た気配を感じる。これも、この若様がいるから……にしては少し違和感が……」
「おいディルク、何をブツブツと……」
「決めた。私も同行させてもらおう」

 突然キリッとそう言い出すディルクさんに、一同唖然とする。
 何がどうなってそういう結論にたどり着いたのか、ぜひ詳しく教えてもらいたい。

「突然何を言い出すのですか。あなた、主様にはさほど関心が無いと言ってましたよね」
「ああ。主様には興味が無い。しかしながら、少しばかり気になることがあるのでな。その若様と、そっちの……あれらは従魔か?あれも含めて私の研究対象になってもらおうと……」
「何バカなことを言っているんですか!ジェイドも止めてください!」

 研究対象……?何の?
 そこがわからないことには私たちもどう反応していいか分からない。
 しかし、どんな研究であれ従魔たちはまずいか……。
 すでに神獣の子だと判明しているコタローならまだしも、他の子達だって元神獣。ホムラにいたっては現役バリバリの神獣様だぞ。
 エルフって長く生きてるからか気配に敏感だし、いろんなことに詳しいし。これまで出会ったエルフはみんないい人そうだったが、全員が全員そうではないだろう。
 あまり私たちのことを詮索されるのは好ましくない……。

「悪いようにはしない!ただ私の知的好奇心を埋めるだけではないか!それにまだ本人たちから拒絶されていない!これは同意とみなしていいだろう!」
「よくありません!何を勝手なことをほざいてやがるんですか!もう少し礼儀というものをわきまえなさい!」
「おいおい二人とも落ち着けよ。カイルたちが固まっちまってるぜ」

 エルフ二人の取っ組み合いと、仲介人が一人。
 これはどうしたらいいことやら……。
 でも、まずはこれを聞かないと始まらないよな……と、恐る恐る私は三人の話を遮る。

「あの!けんきゅうって、なんですか……」

 ギュルンと音がしそうな勢いで三人同時に振り向かれたら流石に怖かった。圧に負けて声がしぼんでいくなんて初めての経験だ。少し胸がドキドキしている。

「ほうほうほう。お嬢さん、私の研究に興味があるなんて見る目がある。いいだろう、聞かせてやろう。私が精霊様を愛するに至った敬意を!」

 話はディルクさんの幼少期から始まった。
 

 幼い頃から不思議な気配を常に感じてきたディルクさん。周りの大人達に聞いてもそんなものは知らない、分からないと答えられ悶々とした日々を過ごす。
 そんなときにある日突然現れたのが、エルフの旅人。
 その人はどうやら「自然と生きる」をモットーに国中を渡り歩いていたらしい。たまに村に立ち寄っては、旅の中で集めた収集品を売ったり譲ったり。ディルクさんもそれらの品に目を輝かせ、これはどこで拾ったのか、これは何の素材か、など話をせがんでいたという。
 しばらく村に滞在することになった旅人ディルクさんは次第に仲良くなり、深い話をする関係に。そしてある時、自分の悩みのタネである不思議な気配について話したんだとか。

 「おお!まさかこんなところで同類に出会えるとは!君の感じるその不思議な気配は、おそらく精霊の気配だ。普通の人には感じ取ることすらできないほど小さな存在。しかしその力は偉大で、魔法というのは精霊が生み出しているとも考えられているのだよ!」
 
 精霊について旅人から話を聞いたディルクさんは、一瞬にして精霊の虜に。
 精霊は自然の多い場所に集まるらしいという情報を得て、きっと自分も大人になったら自然の中で暮らすんだ!と心に決めたのだ。

 ディルクさんやこの旅人のように、精霊を気配を感じ取れる人は稀で、しかしその分繋がりは強い。同じような人が一人、二人……と増えていき、結果、精霊信仰なるものができあがったのだとか。
 しかし、気配が分かると言ってもただそれだけで実際に精霊を見たものなどただの一人も現れない。

 そんなときに出会ったのが私たち。
 異様に濃い精霊の気配につられてやってきてみれば、そこには知り合いのエルフと人間、そして若様であるコタローがいた、というわけだ。
 なんと運命的な出会い!と舞い上がり、この濃い精霊の気配と共にあればもしや何かが分かるかもしれない!と同行を決めたという。
 研究と言っても、体をいじくったり、実験をさせたりそんなことはなく、ただ近くで観察させてくれれば十分なのだそう。


「それならそうと早く言ってください。お客人や若様に何かするのではないかと慌ててしまったではないですか」
「言う前にムキになったのはお前だ。私はそんな非道なことをするエルフでは無い」

 いい感じに落ち着いてくれた二人。しかし私は落ち着くどころではない。

 精霊の気配が濃いなんて……心当たりがありすぎる!!

 第一に、精霊王に作られた存在である従魔たち。
 彼らはそれぞれのやり方で世代を継承していっているため、今のこの子たちに精霊王の影響がどれだけ出ているかは分からない。
 しかし、ディルクさんが最初に指名したのは従魔たちだ。きっと濃い精霊の気配が漂っているのだろう。

 第二にカイルさんたち。
 直接、精霊王からの加護を賜っているなんて、死んでも言えない重大機密。バレたら大問題だ。

 そして、私。精霊姫の称号持ち。
 普通に考えてこれが一番やばいだろう。さすがに精霊姫なんて夢にも思わないだろうけど……。
 こちとら精霊王六人の証持ちだぞ?認識阻害で隠しているとは言え、もしバレたら……。考えるだけで恐ろしい。

 ディルクさんがどのくらい精霊の気配を感じ取れるのかは分からない。
 しかし、明確に私たちの周りは精霊の気配が濃いと察知して、さらにそれを追ってこれるくらいの力はある。
 もちろん断るのが無難なのだが、ここまで何もしないと言われて断るのも、逆になにかあるんじゃないかと勘付かれそうだ。……これは、一筋縄ではいかないだろう。

「ディルクさんは、それで結局何を調べたいんだ?」

 突っ込んだ質問をしたのはカイルさん。
 確かにそれが一番重要なところだ。精霊が好きなのは分かったが、それを研究してどうしたいのか。
 
「そうだな。一番は精霊様のお姿を見てみたい、だな」

 姿か。それは私も見たことが無い。というか、精霊って一体何なのだろうか。
 精霊王が存在するのなら、精霊も存在するのだろうけど。今まであまりに意識してこなさすぎて考えてことも無かった。
 
 私は試しに、いでよ精霊!と、心のなかで唱えながら目をグッと凝らしてみた。
 ――その瞬間、視界のいたるところで小さな光がパチパチ瞬く。
 驚いて集中力を切らせてしまい、その光はあっという間に消えてしまったので、ほんの一瞬の出来事だった。
 しかし、あれが精霊の姿なのだったら……。

 動揺してオロオロしている私に目ざとく気づいたカイルさんがこちらをキッと睨んだ。あれは、また余計なことをしたんじゃないだろうな?という目だ。私には分かる。
 ほんの出来心だったんですっ……!そう悔やみながらプルプル震える私に、他に気づいたものはいない。

「……それだけか?」
「そうだな。他にも気になることはあるが、第一目標はそれだ。まあ、それだけのことが最難関なのだがな」

 顎に手を当て、何かを考え込んでいたカイルさんはフッと軽くため息をついた。

「俺の国には、精霊王の愛し子が危機に陥ったとき、精霊が手助けしてくれることがある、という話がある。精霊を探すより、精霊王の愛し子を探したほうが早いんじゃないか?」

 カイルさん、なかなかに突っ込んだ話をする。
 ここにその愛し子とやらがいるのですが……。

「ああ、それは私も考えた。しかし、愛し子様に会えたとしても、確実に精霊様に会える訳では無いだろう?そんな私のワガママで愛し子様にご迷惑をかけるくらいなら、地道にでも自力で精霊様を探す方良い結論に至ったのだ。それに、もしかしたら私を見てくれている精霊様が慈悲を与えてくれるかも知れない!そして、そのほうが嬉しいに決まっている!長命のエルフに生まれたことを、これほどまで喜ばしいと思ったことは無い!」
「……そうか。分かった。俺はディルクさんを同行させても良いと思うぞ」

 フッと眉尻を下げて笑うカイルさんに、ディルクさんが感謝の眼差しを送る。
 きっとこの人なら、私たちのことがバレたとしてもそれを広めたり悪用したりはしないだろうと判断したのだ。私もそう思う。

「あなた方がよろしいのでしたら、私が反対することはありません」
「俺もいいと思うぞ。旅は道連れ世は情け、ってな。精霊が見えると良いな!」

 こうして、私たちの旅仲間にディルクさんが加わった。
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