我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

seizann

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25.我が輩は石である。不死を考察する石である。

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 才能の違いは、ただ種族が違うだけである。
 我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

 不毛である。
 全く以て不毛である。
 才能について考えていて「才能の違いは種族の違い」と仮定し、結論として『人間亜種存在説』を唱えるに至ってしまった。
 おそらく、生前の世界であれば、否定非難誹謗中傷の雨あられの理論であろう。
 しかしながら、諸姉諸兄諸君の拝読している異世界が舞台の大半の作品は、この理論を覆すことは難しかろう。

 隣の人間は、あなたとは違う種類の人間。
 人間は決して平等などでは無い。
 我が輩の隣の石は岩と呼ばれていることと同義。
 ただそれだけの話である。

 名前が違う。
 人間としての種類も違う。
 我が輩は、石という物体から鑑みて、ヒト族ヒト科ヒト目に、もう一つ分類を付け足しただけに過ぎないのだ。
 学術的考察である。
 こんな阿呆な学問があるなら、是非我が輩を教授に推薦して欲しい。
 石で良ければ。

 ただし、である。我が輩にとっては必要な考察であったように思う。
 なぜなら、我が輩が目指しているのは、神へ至る一歩だ。
 人間の常識のまま、人間の視点でこの地獄を考察していては、神への一歩は踏み出せまい。
 多少強引であっても、自分の意識を人間から外していく事は重要な作業であろう。

 意識、という言葉もまたヒントになる得る言葉だ。我が輩の自問自答は全て、無意識下であったことを自意識下に移動させている作業であるからだ。
 なんとなく、を放棄し、少しでも確実な答えに挑戦を続けているのだ。
 この先に、我が輩の求める答えが有るはずだ。

 といって、次は何を考察したものであろうか。
 諸姉諸兄諸君も何かしら助けてはくれないものだろうか。
 否、それは無茶であろう。

 次なる考察物を求め、我が輩は久しぶりに世界の感知を行った。
 いつも通り、人、エルフ、ドワーフ、ゴブリン、スライム、狼、猿、ドラゴン、様々な生物を感知する。
 その中に。
 動く死体を見つけた。
 旧時代の遺跡の様な場所で徘徊している
 ひとつ、このアンデッドについて、考察をしていってみようか。

 我が輩の『万物魂存在論』で言えば、ゾンビだろうとスケルトンであろうと、魂は存在すると定義出来る。
 これに反論は有るまい。
 なぜなら、ファンタジー作品、全てに言えることであるが、アンデッドの天敵は「光属性の魔法」で「神の御技で天に召される」からである。
 成仏する魂も無しに、天に召される御技もなかろう。

 では、何故アンデッドになるのであろうか?
 ここが全ての生物にとって、等しく地獄であれば「この世界の生物は、死ねば等しく地獄の亡者となる」という理論が成立するのだが、生憎、等しくゾンビには成っていない。
 この世界が地獄なのは、我が輩にとってだけなのかもしれない。

我が輩は石である。名前など有るはずが無い。

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