お弁当食べた

よく晴れた日に（結）

結納から式まではあっという間だった。
香苗は色が白いから、角隠しがとても似合う。
父は涙を堪えていたが、香苗が三つ指をついた途端泣き出した。

「今からそんなんじゃ、お姉ちゃんの時どうなるのか」

「なにっ珠絵っお前まさか」

「ないないない。
全然ないから」

今流行りの、式の後新幹線で新婚旅行に行くコースだと云う。
新居は公団の抽選に当たったと嬉しそうにしていた。
真っ白なトランクを嬉しそうに抱える香苗。

「気をつけてね」

「時々、うちに来てね、お姉ちゃん。
そんで、ご飯作ってお掃除して」

「あんたねぇ」

とんでもないお願いを耳打ちする香苗に、呆れるしかない。
本気ではないと思いたい。
駅のホームは絶対混雑しているし、信金から見送りの同僚達が集まると云うので、珠絵たちはここで別れる。

タクシーが来たと涌井が知らせに来た。
珠絵を見ると涌井はぺこりと頭を下げた。
あの日、赤提灯に行くよう差し出口をしたのは珠絵だ。
酔った父はよく本音を云う。
いい方の結果が出てよかった。

父は威厳を取り戻そうと涙を拭いて涌井に何やら話している。
聞き上手の涌井は父を喜ばせる技を見出したようだ。

「これ、新幹線で食べて」

珠絵は弁当箱を二つ、風呂敷に包んで香苗に渡す。

「……アンパン○ンじゃないよね？」

「使い捨てのよ」

タクシーは駅に向かって走り出した。