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第一章 神聖イルティア王国編
リベンジマッチ
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ハーティがユナに『女神の絆』を授けてからも、二人はしばらく『ブースト』状態での動きに慣れるための秘密特訓を行っていた。
そして、それからしばらくの時が経ったころ・・・。
ハーティとユナによる『ブースト』の制御訓練が功を奏して、ユナはかなり状況に応じた『ブースト』効果の調整ができるようになった。
そして、二人は適切な処置を行えば魔導の素質が見込めない人間にも身体強化魔導を使えるようにできることを確証できた為、かねてより考えていたデビッドへの処置を提案しようと思い、彼の下へと向かった。
ハーティが王宮内でデビッドを探していると、すぐに自室から出てきたと思われるデビッドを見つけることができた。
「デビッド!」
ハーティは手をぶんぶんと振りながら元気よくデビッドに声をかけた。
「あ、義姉さん。どうしたんですか?」
「デビッド、探していたのよ!前の話をぶり返すようで申し訳ないけど、闘技場の件で・・・」
そう途中まで言いかけたハーティの言葉を切ってデビッドは語り始めた。
「ああ、そのことはいいんですよ。もう全く気にしていませんので・・」
「え?」
ハーティはデビッドの突然の言葉に驚いた。
(あれほど悩んでいた様子だったのに、どういうことなんだろう・・・?)
「そんなことより、僕も義姉さんたちを探そうと思っていたんですよ」
「え、そうなの?」
「正確にはユナさんに用事があったんです」
そういいながらデビッドは僅かに微笑んだ。
「私?ですか?」
いきなりのデビッドによる指名に、ユナは首を傾げた。
「ええ、この前の模擬戦は不意を突かれて負けましたからね・・・『リベンジマッチ』をしたいのです」
「リベンジマッチ?」
「ええ、あれから僕なりにいろいろ特訓しましてね、今ならきっとユナさんに勝てると思うのです。だから手始めにユナさんにお手合わせを願いたくて・・」
(やっぱりデビッドも前の事を気にして特訓していたのね・・)
(たしかに前だったら僅差だったから短期間の特訓で勝利も見込めるけど・・今は・・)
結局ユナも『ブースト』を使いこなせるようになったので、下手をすればデビッドが前よりもひどい負け方をしかねないことをハーティは心配していた。
だからこそ、ハーティはデビッドにマナの流れを変える処置について説明しようとした。
「デビッド、その前に聞いてほしいことがあるの。デビッドの『魔導について』なんだけど・・」
「ああ、それもいいんです・・・僕はようやく自分というものがわかったんですよ」
「だから、今の僕と戦って欲しいのですよ」
「でも・・・」
「・・・いいでしょう」
「え、ユナ!?」
ハーティはどう良いように解釈しても、デビッドがユナに惨敗する姿が目に見えたので、何とかデビットを説得してリベンジマッチをやめさせようとした。
しかし、その言葉を途中でユナが断ち切ってデビッドとのリベンジマッチを受け入れることに驚いた。
(デビッド殿下も折角立ち直ったのです。ここは『ブースト』を使わずに正々堂々と戦えばいいではありませんか)
そう小声で言うユナの言葉を聞いて、ハーティは納得した。
「ちょうど今日、騎士団の訓練に参加する日ですし、いかがでしょうか」
「なるほど、僕はいつでも構いませんからね、今日にしましょうか」
「もちろん、義姉さんも観に来ていただけますよね」
「え・・・ええ、もちろんよ!」
「よかった・・僕がユナさんに勝つ姿・・きっと義姉さんに観てもらいますね!」
「私はユナも好きだからどっちも応援したいけど!デビッドの雄姿を楽しみにしているわ!」
「うん、待っててね・・義姉さん」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべるデビッドに、ハーティは不思議な違和感を覚えたのであった。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
それからしばらくして、デビッドとハーティは再び闘技場で相対していた。
ハーティはその様子を前回と同様に観覧席から眺めていた。
「双方準備はよろしいでしょうか?」
ラナウェイがいつも通り二人に声をかけると、どちらも静かに頷いた。
「それでは、これよりデビッド殿下とユナ嬢の模擬試合を始めます。・・始め!!」
ラナウェイの試合開始の合図と共に、ユナがデビッド殿下の方へ飛び出した。
ユナはハーティへの宣言通り、『ブースト』の魔導は一切発動していなかった。
そして、ユナがデビッドに迫って木剣を振りかぶった瞬間、デビッドの姿が消えたように見えた。
「・・・・・!」
そして、姿が消えたと思ったデビッドはいつの間にかユナの背後に回り込んで双剣を振るっていた。
「な・・・・に!?」
ユナにデビッドの姿は見えなかったが、卓越した反射神経により背後の剣戟を受け止めた。
しかし、その双剣から繰り出したと思えないような重い衝撃に、ユナは体諸共吹き飛ばされた。
ユナは空いた方の手と両足を使って着地し、後方に滑っている速度を殺して何とか持ちこたえようとした。
ズザザザザァ・・・・・・。
そのままの姿勢で数十メートル程滑った後に、ようやくユナは静止することができた。
一撃で今までのデビットと段違いの戦闘能力であることを悟ったユナは、地面を滑りながら『ブースト』の詠唱術式を口ずさみ始めていた。
しかし、ユナが静止する頃にはデビッドが眼前に迫ってきていた。
(この動き・・・どう考えても普通の人間ができる動きじゃない!)
デビッドの動きを唯一目視で確認できたハーティは、それが瞬時に何らかの『外的要因』によって強化されたものであると判断した。
そして、棒立ち状態であったユナにデビッドの攻撃が迫ろうとした瞬間、ユナの詠唱が完了して『ブースト』の魔導が発動した。
それと同時に動体視力や思考能力も強化されたユナは、今まで視認できずにいたデビッドの攻撃をぎりぎりで捉えた。
ガキィィィン!
そして、およそ木剣同士が交わるものとは思えない音を鳴らして、その攻撃を受け止めたのであった。
2度目の防御は、ぎりぎり発動が間に合ったユナの『ブースト』によって強化された膂力で防ぎきることができた。
そして、デビッドが自信を持って放った攻撃を防がれたことで、目を見開いた。
その予想外の出来事で驚いた様子のデビッドは、ユナに対して一旦距離を取り合った。
「へえ・・『ブースト』ですか。ユナさんも使えるんですね」
「・・ユナさんもということは、殿下も『ブースト』を発動しているんですね」
「・・・どういう技を使ったのかは知りませんが・・あなたは僕には勝てませんよ」
そういいながらデビッドは不敵な笑みを浮かべた。
「・・それは、こっちのセリフです!!」
その時、二人は同時に踏み出した。
ドゥン!
二人のあまりに強力な膂力による踏み込みによって、大きなクレーターが2つ生まれたと同時に、闘技場には嵐のような風が吹き荒れた。
「な・・なんだ!?全然見えないぞ!!」
「いったいなにが起こっているんだ!」
『ブースト』で強化された二人の動きは常人には視認できないほどで、ギャラリーとなった騎士団員たちは何が起こっているのか理解できていない様子であった。
視認できないほどの激しい戦いが繰り広げられていることにより、闘技場の彼方此方にクレーターが発生していた。
(いったいどういうこと!?『ブースト』によるマナ消費よりも高いマナ出力を持つユナはまだしも、どうしてデビッドがこれだけ長時間『ブースト』を発動し続けることができるの!?)
あのマクスウェルですら、『ブースト』の魔導を長時間発動することはできない。
それほど『ブースト』のマナ消費は激しいものである。
(デビッドは自分で『マナ出力の秘密』にたどり着いた??)
(いえ、だけどマナ出力の流れを変えるには私のようなイレギュラーな存在がいないと不可能なはず・・・)
しかし、ハーティがどれほど考えを巡らせても答えは見つからなかった。
ハーティが考えを巡らせている間も激しい戦いは続いていた・・。
そして、それからしばらくの時が経ったころ・・・。
ハーティとユナによる『ブースト』の制御訓練が功を奏して、ユナはかなり状況に応じた『ブースト』効果の調整ができるようになった。
そして、二人は適切な処置を行えば魔導の素質が見込めない人間にも身体強化魔導を使えるようにできることを確証できた為、かねてより考えていたデビッドへの処置を提案しようと思い、彼の下へと向かった。
ハーティが王宮内でデビッドを探していると、すぐに自室から出てきたと思われるデビッドを見つけることができた。
「デビッド!」
ハーティは手をぶんぶんと振りながら元気よくデビッドに声をかけた。
「あ、義姉さん。どうしたんですか?」
「デビッド、探していたのよ!前の話をぶり返すようで申し訳ないけど、闘技場の件で・・・」
そう途中まで言いかけたハーティの言葉を切ってデビッドは語り始めた。
「ああ、そのことはいいんですよ。もう全く気にしていませんので・・」
「え?」
ハーティはデビッドの突然の言葉に驚いた。
(あれほど悩んでいた様子だったのに、どういうことなんだろう・・・?)
「そんなことより、僕も義姉さんたちを探そうと思っていたんですよ」
「え、そうなの?」
「正確にはユナさんに用事があったんです」
そういいながらデビッドは僅かに微笑んだ。
「私?ですか?」
いきなりのデビッドによる指名に、ユナは首を傾げた。
「ええ、この前の模擬戦は不意を突かれて負けましたからね・・・『リベンジマッチ』をしたいのです」
「リベンジマッチ?」
「ええ、あれから僕なりにいろいろ特訓しましてね、今ならきっとユナさんに勝てると思うのです。だから手始めにユナさんにお手合わせを願いたくて・・」
(やっぱりデビッドも前の事を気にして特訓していたのね・・)
(たしかに前だったら僅差だったから短期間の特訓で勝利も見込めるけど・・今は・・)
結局ユナも『ブースト』を使いこなせるようになったので、下手をすればデビッドが前よりもひどい負け方をしかねないことをハーティは心配していた。
だからこそ、ハーティはデビッドにマナの流れを変える処置について説明しようとした。
「デビッド、その前に聞いてほしいことがあるの。デビッドの『魔導について』なんだけど・・」
「ああ、それもいいんです・・・僕はようやく自分というものがわかったんですよ」
「だから、今の僕と戦って欲しいのですよ」
「でも・・・」
「・・・いいでしょう」
「え、ユナ!?」
ハーティはどう良いように解釈しても、デビッドがユナに惨敗する姿が目に見えたので、何とかデビットを説得してリベンジマッチをやめさせようとした。
しかし、その言葉を途中でユナが断ち切ってデビッドとのリベンジマッチを受け入れることに驚いた。
(デビッド殿下も折角立ち直ったのです。ここは『ブースト』を使わずに正々堂々と戦えばいいではありませんか)
そう小声で言うユナの言葉を聞いて、ハーティは納得した。
「ちょうど今日、騎士団の訓練に参加する日ですし、いかがでしょうか」
「なるほど、僕はいつでも構いませんからね、今日にしましょうか」
「もちろん、義姉さんも観に来ていただけますよね」
「え・・・ええ、もちろんよ!」
「よかった・・僕がユナさんに勝つ姿・・きっと義姉さんに観てもらいますね!」
「私はユナも好きだからどっちも応援したいけど!デビッドの雄姿を楽しみにしているわ!」
「うん、待っててね・・義姉さん」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべるデビッドに、ハーティは不思議な違和感を覚えたのであった。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
それからしばらくして、デビッドとハーティは再び闘技場で相対していた。
ハーティはその様子を前回と同様に観覧席から眺めていた。
「双方準備はよろしいでしょうか?」
ラナウェイがいつも通り二人に声をかけると、どちらも静かに頷いた。
「それでは、これよりデビッド殿下とユナ嬢の模擬試合を始めます。・・始め!!」
ラナウェイの試合開始の合図と共に、ユナがデビッド殿下の方へ飛び出した。
ユナはハーティへの宣言通り、『ブースト』の魔導は一切発動していなかった。
そして、ユナがデビッドに迫って木剣を振りかぶった瞬間、デビッドの姿が消えたように見えた。
「・・・・・!」
そして、姿が消えたと思ったデビッドはいつの間にかユナの背後に回り込んで双剣を振るっていた。
「な・・・・に!?」
ユナにデビッドの姿は見えなかったが、卓越した反射神経により背後の剣戟を受け止めた。
しかし、その双剣から繰り出したと思えないような重い衝撃に、ユナは体諸共吹き飛ばされた。
ユナは空いた方の手と両足を使って着地し、後方に滑っている速度を殺して何とか持ちこたえようとした。
ズザザザザァ・・・・・・。
そのままの姿勢で数十メートル程滑った後に、ようやくユナは静止することができた。
一撃で今までのデビットと段違いの戦闘能力であることを悟ったユナは、地面を滑りながら『ブースト』の詠唱術式を口ずさみ始めていた。
しかし、ユナが静止する頃にはデビッドが眼前に迫ってきていた。
(この動き・・・どう考えても普通の人間ができる動きじゃない!)
デビッドの動きを唯一目視で確認できたハーティは、それが瞬時に何らかの『外的要因』によって強化されたものであると判断した。
そして、棒立ち状態であったユナにデビッドの攻撃が迫ろうとした瞬間、ユナの詠唱が完了して『ブースト』の魔導が発動した。
それと同時に動体視力や思考能力も強化されたユナは、今まで視認できずにいたデビッドの攻撃をぎりぎりで捉えた。
ガキィィィン!
そして、およそ木剣同士が交わるものとは思えない音を鳴らして、その攻撃を受け止めたのであった。
2度目の防御は、ぎりぎり発動が間に合ったユナの『ブースト』によって強化された膂力で防ぎきることができた。
そして、デビッドが自信を持って放った攻撃を防がれたことで、目を見開いた。
その予想外の出来事で驚いた様子のデビッドは、ユナに対して一旦距離を取り合った。
「へえ・・『ブースト』ですか。ユナさんも使えるんですね」
「・・ユナさんもということは、殿下も『ブースト』を発動しているんですね」
「・・・どういう技を使ったのかは知りませんが・・あなたは僕には勝てませんよ」
そういいながらデビッドは不敵な笑みを浮かべた。
「・・それは、こっちのセリフです!!」
その時、二人は同時に踏み出した。
ドゥン!
二人のあまりに強力な膂力による踏み込みによって、大きなクレーターが2つ生まれたと同時に、闘技場には嵐のような風が吹き荒れた。
「な・・なんだ!?全然見えないぞ!!」
「いったいなにが起こっているんだ!」
『ブースト』で強化された二人の動きは常人には視認できないほどで、ギャラリーとなった騎士団員たちは何が起こっているのか理解できていない様子であった。
視認できないほどの激しい戦いが繰り広げられていることにより、闘技場の彼方此方にクレーターが発生していた。
(いったいどういうこと!?『ブースト』によるマナ消費よりも高いマナ出力を持つユナはまだしも、どうしてデビッドがこれだけ長時間『ブースト』を発動し続けることができるの!?)
あのマクスウェルですら、『ブースト』の魔導を長時間発動することはできない。
それほど『ブースト』のマナ消費は激しいものである。
(デビッドは自分で『マナ出力の秘密』にたどり着いた??)
(いえ、だけどマナ出力の流れを変えるには私のようなイレギュラーな存在がいないと不可能なはず・・・)
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