転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第一章 神聖イルティア王国編

邪神の気配

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(・・・くっ!デビッド殿下もマナの巡りを変える方法を見つけたというの!?)

 ユナはデビッドの攻撃を防戦一方で受け止めながら、考えを巡らせていた。

 もともとユナはデビッドの『ブースト』がそんなに長持ちするものとは思っていなかった。

 故に、デビッドの『ブースト』が維持できなくなったところで自分の『ブースト』も解除して、通常の試合に持ち込もうとしていたのだ。

 しかし、模擬試合が始まってから数分が経っているにも関わらず、デビッドの『ブースト』は切れる様子がなかった。

「・・・へえ、ユナさん・・あなたも本当に『ブースト』を使えるようになったんですねえ」

 デビッドは双剣を激しく振るいながらニヤリと微笑んだ。

「だけど、僕はまだまだこんなものじゃないですよ!!!」

そういうとデビッドは一旦ユナから離れた。

「・・・・もう、あっても邪魔なだけですね・・」

 デビッドはそう言いながら手に持っていた双剣を放り捨てた。

「!!」

 それを見てラナウェイは息を飲んだ。

 デビッドとユナの戦いはあくまで『模擬試合』であり、たとえ木剣でもそれは『れっきとした武器』である。

 本来それを捨てるということは、『敗北を認める』という意味であるが、デビッドはどう見てもそういう意味で木剣を捨てたようには見えなかった。

 そしてゆっくりと両拳を胸元に持ってきてファイティングポーズを取ったデビッドはニタリと笑った。

 その表情は誰が見てもがするような表情ではなかった。

「さあ、もっと充実した戦いをしますよ!!」

 そういうとデビッドはさらに『ブースト』の効力を上げた。

「ま、まってください!殿下は武器を捨てました!試合は終了ですよ!!」

「・・・せっかくの楽しい戦いの邪魔をしないで下さいよ!!!」

 ドォォォォン!!

 ラナウェイの制止を無視したデビッドは徒手空拳でユナに襲い掛かった。

「っつ!!」

 デビッドの襲来を確認したユナはなりふり構わず木剣を捨てて、『ブースト』の効力を上げて応戦する。

 二人の間に、目にも止まらない速度の打撃が交わりあう。

「・・・!!まだ、追いつきますか・・・ならです!」

 そういうとデビッドは更に『ブースト』の効力を上げた。

「!!!!」

 その時、ハーティにはデビッドの体からが出ているのが見えた。

「そんな!!そんなはずは・・・」

 その『黒い霧』を見た瞬間にハーティの背中からは冷や汗が流れた。

(そんな・・・あれは神々と共に消滅したはず・・・・でもあの『黒い霧』は確かに・・)

(『邪神』の気配を感じる・・・!!)

 ハーティは思わずラナウェイに駆け寄った。

「ラナウェイさん!!デビッド殿下の様子がどうも変です!何とか試合を中止してください!」

「ハーティ様!わかりました!」

 そう言うと、ラナウェイは再び拡声魔導器を使って声をかけた。

「デビッド殿下!ユナ殿!試合は終了です!速やかに戦闘行動を中止してください!!」

 しかし、その声を聞いても、デビッドはユナへの攻撃をやめる様子はなかった。

「無粋なことを言わないで下さいよ!僕はユナさんにんですから!!」

「・・・く!殿下!どうしたのですか!?これはもう試合というものではありませんよ!!」

 デビッドの打撃を両腕をクロスして受け止めたユナは苦痛に耐える表情をしていた。

「・・・っく、已むを得ません!殿下を止めに行きます!」

 そういうと騎士団の数人がデビッド殿下を制止に向かった。

「・・・デビッド殿下!失礼いたします!!」

 そして騎士団員とラナウェイがデビッドに飛び掛かろうとした瞬間!!

「・・邪魔しないで下さいよ!!」

 デビッドが、迫ってくる騎士団員達に向かって腕を振るった。

 『ブースト』がかかったそれにより、騎士団員達はデビッドから弾き飛ばされていった。

 ドガァァァァァン!!

 弾かれた人達は、そのまま凄まじいスピードで闘技場の外縁まで飛ばされて壁に激突していく。

 本来頑丈なはずの闘技場の壁にもかかわず、飛ばされた騎士団員が衝突した場所にはヒビが刻まれていた。

 もはや、デビッドはユナとの『私闘』に夢中となっており、どう見ても正気の状態には見えなかった。

 その後もデビッドを止めようと次々と騎士団員達が飛び掛かるが、無残にも吹き飛ばされていった。

「治癒魔導師の方!!早く!!」

「これはひどい・・・」

「怪我が軽い人から先に運びます!!!」

 既に闘技場には多数の怪我人が横たわっており、それを助けようとする治癒魔導師も加わり、騒然としていた。

(・・・これ以上はユナが危ないわ!!)

 もはや見ていられなくなったハーティは、ユナを助けるために自分へ『ブースト』を発動しようとした。

 9年前に初めてユナの前で魔導を発動してから、これまでハーティも魔導の訓練を行っていた。

 その甲斐もあって、そこまで意識を集中しなくていいような簡易な魔導の発動程度では、髪と瞳を黒く擬態している魔導は解除されなくなっていた。

 しかし、あくまでハーティは世間的に見れば『魔導が発動できない黒髪の令嬢』である。

 もし、ユナを助けるために『ブースト』を発動すればハーティの素性がばれてしまうかもしれない。

 しかし、ユナを見捨てることができないハーティは覚悟を決めることにしたのだった。

「・・・!!お嬢様!はいけません!!」

 しかし、それを敏感に感じたユナは、ハーティの魔導発動を制止するために叫んだ。

 そして、叫びながらもユナは必死に戦っていた。

「・・だけど!!!」

「私はまだ、大丈夫です!!!私がお嬢様を置いてどうにかなるわけないじゃないですか!」

「今は堪えてください!!」

「・・・・わかったわ!けど・・本当に仕方ないときは・・覚悟を決めるわ!」

「・・・そうならないように努力します!」

 そう言いながらユナはデビッドに向かって回し蹴りを放った。

 それをデビッドは片腕で受け止めた。

「まさかユナさんがこれほどとはねえ・・・これが『本当の戦い』ってやつなんだねっ!あはは!楽しいなあ」

(だけど・・デビッドは明らかに『邪神』による何らかの影響を受けている・・・いったいどうすれば!!)

 そのとき、闘技場に数人の神官達が流れ込んできた。

「ハーティ様!!!」

 その神官達の中心には、聖女リリスがいたのであった。
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