転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第二章 魔導帝国オルテアガ編

獣人の親子

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 イィィィィィン・・・。

 ハーティが超音速飛行で東に向けて小一時間飛行した頃。

 ハーティの視界の遠くに、うっすらと帝都らしきものが見えてきた。

(あれが魔導帝国オルテアガの帝都『リスラム』ね・・)

(流石に高速飛行で帝都に近づくのはまずいわね・・・)

(ひとまず、馬車で数時間くらいの距離まで近づいたらゆっくり着陸しましょうか・・・)

 一思案したハーティは、しばらくして人気のない大地に着陸した。

「・・・さてと、これからどうしようかな」

 そういいながらハーティは徐に自分の身なりを確認した。

「・・・ひとまずは当面の路銀をなんとかしないとね・・」

 ハーティは神聖イルティア王国から着の身着の儘で飛び出してきた。

 また、今現在は収納魔導を発動していないので武器はおろか、お金すら持ってない完全な手ぶら状態であった。

(せめて着ていたドレスを持ってきていたらよかったけど・・・)

 神聖イルティア王国で身につけていたドレスやアクセサリーをもし適正に売却できれば、一財産になっていたはずであった。

 しかし、闘技場でイラと対峙した時から王都を去ることを覚悟していたハーティは、持っていって売却することへの罪悪感や『用意された服に着替えた』ということに対して辻褄が合わなくなるのを恐れて、全て脱いだ時に収納魔導に仕舞わずその場に置いて来たのであった。

(まあどのみちエーテルが無くなった時に収納魔導も解除されて全部その場に落としていく羽目になったでしょうけど・・・)

 今から眠りにつくと宣言した女神が、その場でいそいそ荷物を収納魔導に詰めるのもおかしな話であった。

(路銀を稼ぐとすれば・・・やっぱり魔物を討伐するのが一番かな?)

(それで素材を冒険者ギルドに売却すると・・・こんなことなら王国でギルドに登録すればよかったわ)

 ハーティは残念と言った様子で後悔していた。

 いずれにせよ、神聖イルティア王国の侯爵令嬢で次期王太子妃であったハーティが冒険者になるのは不可能な話であったが・・。

(ひとまずは、帝都の冒険者ギルドに登録して、適当な魔物を狩って素材を売りながら滞在しよう)

(それに冒険者として活動していれば、『黒の魔導結晶』の手がかりが掴めるかもしれない!)

(・・・にしても、この髪色はいくらなんでもまずいわね・・・)

 ハーティはそう言いながら徐に自分の髪を一房掴んだ。

 その髪は、相変わらず見事な艶を讃えた白銀色をしていた。

(『神聖イルティア王国のハーティ』は居なくなったって設定だし、別に黒髪じゃなくてもいいんだよね・・)

(冒険者として過ごすなら、ある程度魔導を行使しても不自然じゃない色がいいわね・・)

(変に金髪とかにすると、逆に高名な魔導師みたいに思われても嫌だし・・茶色系だとあまり積極的に魔導を使えなさそうだから・・・)

 その時、ふとハーティは先ほど別れたばかりのミリフュージア王妃陛下の髪色を思い出した。

(そうだ!王妃陛下のような薄桃色の髪色であれば、金髪ほどじゃないけどかなりの魔導を使える人間に見えるよね!)

 そう思ったハーティは早速今まで髪と瞳を黒色に擬態していた魔導を発動する。

 すると、ハーティの髪と瞳が薄桃色に染まった。

(あとは、帝都に着いたら何か髪をまとめるアクセサリーを買えば、かなり印象は変わるはずね)

 仮に王都での話が帝国にも伝わっていたとしても、『ハーティ』という名の少女は女神化していれば『白銀色』、そうでなければ『黒色』の髪をしていると伝わっているはずである。

 また、ハーティは昔からストレートヘアをまっすぐ下ろしていたので、ポニーテールなどの髪型にすれば万が一『女神教』の信者に出会っても素性がバレにくいと考えた。

(よし、一通り準備もできたし街道に向かって適当な乗合馬車でも探そう!)

 ドゥン!

 思い立ったハーティは『ブースト』によって地面を蹴って勢いよく飛び出したのであった。



 ・・・・・。

 ・・・・・・・・・。



 ハーティが『ブースト』を使用して超高速で帝都に向かって走っていると、しばらくして帝都に続く街道を見下ろせる谷の高台に到着した。

(ここから街道を見下ろせば、帝都まで一本道だし、帝都に向かう馬車も見つかるよね)

 ハーティは流石に手ぶらかつ徒歩で若い少女一人が帝都に入るのは不審者として見られると思い、一緒に帝都まで行ってくれる馬車を探そうとしていた。

(すぐに通ってくれたらいいんだけどなぁ・・・)

 そう思いながら、ハーティは高台から谷底の街道に視線を巡らせていた。

(ん?あれは??)

 ハーティがしばらく視線を巡らせると、商人のものと思われる馬車が一台街道に停まっているのが見えた。

 そして、その馬車の周りには三十人ほどの人間が集まっている様子であった。

(商人の隊列?にしては馬車が一台っておかしいような・・・)

 ハーティが馬車の周囲にいる人間を詳しく確認すると、騎馬やそうでない人間が混ざっており、身なりは決していい様子でなかった。

 そして、何よりも決定的な違和感があるのは、馬車の持ち主と思われる親子二人が、後ろ手に縛られながら跪かされている様子であった。

(どうみても、盗賊に襲われている商人って感じよね・・)

 それは、これから世界を邪神から救おうとしているハーティにとっては決して見過ごせないものであった。

「・・・助けにいかなくちゃ!!」

 ドォォォン!

 ハーティは『ブースト』を発動して、現場に向かって飛び出した。




 ・・・・・。

 ・・・・・・・・。





 馬車の周りを盗賊と見られる集団に囲まれて縛られているのは、とある二人の親子であった。

 その娘の方はハーティとさほど変わらない年齢の少女であり、王都で過ごしていた時のハーティに迫るほど黒色に近い髪色をしているが、こんなことがなければ、はつらつとして明るそうな美少女であった。

 父親の方は娘と同じく暗い髪色をしており、細身で一目みたらぱっとはしない雰囲気だが、とても優しく真面目そうな面立であった。

 だが、その二人共通の一番目立つ特徴と言えば、頭頂部から見える三角に尖った獣耳と臀部から生えたふさふさの尻尾であった。

 その親子は人族の中でも『獣人』と言われる種族であった。

 獣人は頭部から生えた耳と臀部から生えた尻尾が特徴的な種族で、総じて髪色は暗くて基本的に魔導には明るくない。

 そのかわりに、種族的に身体能力が高くて人間の数倍の筋力を持っており、肉体労働や冒険者、軍人などで身を立てる人が多かった。

この親子はそんな獣人の中でも商人風の装いをしているので、あまり体力自慢ではなさそうな雰囲気であった。

「お父さん!」

「くっ、すまない・・・慣れた道と思って護衛の冒険者を雇わなかったが為に・・」

「これだけの人間だったら、護衛を雇っても同じことだったわ・・私たち・・どうなるのかな」

「お前は女の子だから命だけは助かるはずだ・・命だけは・・」

「お父さんは!!お父さんはどうなの!?」

「・・・・・すまない」

「そんな!?お父さん!」

 父親の絶望的な発言に、女の子は涙を流していた。

 そんな二人に、盗賊のリーダーと見られる身なりの汚い中年男性が近寄った。

「ガタガタうるせえぞお前!」

「!!私はどうなっても構いません!荷物も全て差し上げます!ですからどうか娘は見逃してください!お願いします!」

 それを聞いた男は、獣人の父親へ蔑むような瞳を向けた。

「はんっ、バッカじゃねえか?こんなチンケな馬車に積んであるしょっぺぇ積荷なんか大した金にならねえよ!」

「そんな荷物よりよっぽどの方が高く売れるぜぇ」

「『獣人』の若い女はとびきり高く売れるからなあ・・しかもこいつぁ相当な上玉だぜぇ」

 そう言いながら男は獣人の娘を見ながら舌舐めずりした。

「まあ、愛玩奴隷で売り飛ばす前に俺らでしてやるからよ」

「てめえには娘がのをじっくり見みせつけてやってから、その首を刎ねてやるから安心しな!」

「ぐっ・・そん・・な・・この世に神は居ないのか・・私たちが一体何をしたのだというのだ!」

 そう言いながら、父親は悔しさに歯を食いしばった。

 その悔しさは相当なもので、彼の口の端からは血が滲んでいた。

「はん、隣の国では『女神』とやらを信じてるらしいぜぇ!」

「・・まあ、その『女神』とやらもいなくなってしまったって言うらしいがな!」

「なんなら祈ってみたらどうだ!ふはははは!」

「じゃあ、早速といこうか!おまえら!その娘をこっちに連れてこい!ひん剥いてやらぁ」

「へい!」

 その男が指示を出すと、数人の手下の男が獣人の娘に向かってニヤニヤしながら歩み寄ってきた。

「い、いやっ!」

 獣人の娘は身を捩って拒絶感を出すが、縛られている上に多勢に無勢の状態であった。

(いや!誰か!助けて!・・神様!女神様!!」

 そして、獣人の美少女が下衆達の慰み者になろうかというその時・・・・。

「たぁぁぁぁ!」

 ドゴォ!

「「オンドゥルゲァァァ!!」」

 突如、その男達に『桃色の塊』が高速で飛来して来て、彼らはもんどり打ちながら吹っ飛んでいった。


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