転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第二章 魔導帝国オルテアガ編

逆鱗

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「な、何が起こった!?」

「「???」」

 その場にいた誰もが、今起こったことを理解できないでいた。

 そして、朦々とした土煙が風で押し流されると、そこには一人の少女が立っていた。

 言わずもがな、ハーティである。

 ハーティは!と盗賊のリーダーらしき男を指さした。

「何の罪もない親子に対しての狼藉、この私が目にした以上は許せません!!」

「はぁ!?おまえ誰だよ!?」

 突如現れた少女の口上に、全員が戸惑っていた。

「あ、申し遅れました。私は『ハーティ』と申します。ここへは・・まあ、旅の通りがかりというやつです」

(王国での『ハーティ』はいなくなったし、これからはただの冒険者『ハーティ』と名乗ろう)

 ハーティはいつもの癖で、上品にカーテシーをしながら自己紹介をした。

「ぶわっは!こいつ馬鹿か!?これだけ大勢相手に女子ひとりでどうするってんだ!」

「しかも丸腰じゃねえか!見たところ魔導師らしいが、魔導だけでこれだけの人数相手できるかよ!」

「「「わっはっは!」」」

 そのリーダーらしき男の声を聞いて、他の盗賊達も笑い声を上げた。

「しかも、見たらテメェもとんでもねぇ別嬪じゃねえか!体つきもたまんねぇ!なんだ、お前も俺たちにってわけか!」

「「へっへっへっ」」

「・・・今し方何人かは倒しましたが?」

 そう言いながら、ハーティは先ほど『ブースト飛び蹴り』で蹴散らした盗賊達を見る。

「ぐっ・・・・・」

 それを見たリーダーらしき男は顔をしかめた。

「はなして!」

「な、なにをする!!」

 すると、獣人の親子が声を上げた。

 ハーティが見ると、獣人の親子が後ろから盗賊に剣の刃を当てられていた。

「あなたたち!!二人を離しなさい!」

「おっと動くなよ嬢ちゃん・・動いたら・・二人の命はないぜぇ」

 そういいながら、二人に剣の刃を当てている男が下衆な笑みを浮かべていた。

「・・くっ!」

 ハーティは、二人が人質となっている為に動くことが出来なかった。

「おまえ、あれを持ってこい」

「へい!」

 すると、手下とみられる男が金属製の枷らしきものを持って来た。

「動くんじゃねえぞ!」

 ガチャリ・・。

 そして男はハーティを後ろ手にして、その枷をハーティの首と手に装着した。

 手枷と首枷はチェーンで繋がっており、ハーティは後ろ手で身動きが出来なくなった。

「こいつは前に金持ちの商人を襲った時に奪ったやつでなあ」

「こいつは魔導銀ミスリル製の枷に『魔封じの魔導式』を刻んだ特別製のやつだ」

「こいつをつけられたら、『どんな魔導士』でもマナを放出できなくなって魔導が使えなくなるって代物だ」

「これでテメェもこいつらの仲間入りってやつだ」

「・・・・・」

(よかった・・髪色を擬態している魔導は解除されてない・・女神化がバレることはなさそうね)

 ハーティは『魔封じの魔導式』があらゆる魔導を打ち消すものではないと予想していた。

 数多ある魔導を直接封じることなど現実的に不可能だからだ。

 つまりは、『魔封じの枷』とは『最もマナ蓄積に長けた明るい髪色の人間が、全力で放出するマナの量を阻害できる』という意味であるとハーティは考えた。

 それはそれで確かに凄い物であるが、『無尽蔵』にあるマナ出力と蓄積量を誇るハーティにとっては『ただの枷』であった。

 事実、ハーティが今も発動している『擬態』の魔導は解除されていなかった。

 ハーティはどちらかというと、この場にいる人達の前で『女神化』してしまうことを心配していたのだった。

「ふん・・悔しくて声を出ないか。安心しな、お前もおれたちがしてから奴隷として売り捌いてやるからよぉ」

 そういいながら、男は淫逸な笑みを浮かべた。

「ただし・・さっきは俺たちの仲間を『痛めつけてくれた』みたいだから・・ペナルティだ」

「ほれ、やっちまえ」

 男が部下数人に指示をすると、部下の男達が『鉄の棒』のようなものを持ってきた。

 その鉄の棒の先には平たい板が付いていて、それが高熱で真っ赤に染まっていた。

「こいつは『奴隷紋』を焼き入れる焼鏝でなあ、こいつも奴隷商人を襲って奪ったものだ」

「正真正銘の本物だから、この焼鏝で体に『奴隷紋』を焼き入れられたやつは、その瞬間から『正規の奴隷』と見分けがつかなくなるってわけだ」

「本当は背中にやるもんだが・・罰としてにやってやる」

 そう言いながら部下から焼鏝を受け取った男は、獣人の娘の露わになった白くて綺麗な太ももに、その焼鏝を向けた。

「や・・やめて!」

 獣人の娘は顔を青ざめさせて身をよじるが、それも虚しく焼鏝が当てられた。

 ジュュュウ!!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 肉の焼ける匂いと少女の絶叫が響き渡り、その太腿には痛々しい奴隷紋が刻まれた。

「そしてお前は・・ここだ!」

 そう言いながら、次に男は獣人の男の『額』に焼鏝を押し付けた。

 ジュゥゥゥゥ!

「ぐあぁぁぁぁあ!」

 同じように、獣人の男も激しい熱に苦痛の顔を浮かべた。

「こうすれば後で首を跳ねたら『奴隷紋付きの生首』ができあがるぜ!さぞ無様な格好だろうなあ!」

「貴様ァァァ!貴様に人の心はないのか!」

 獣人の男が激痛に耐えながら叫んだ。

「はん、しらねぇな。さて、最後に嬢ちゃんにはその『豊満な胸』にでも焼き入れてやらあ、ひっひっひ!」

 ハーティはそう言われても無言で俯いたままであった。

「はん、絶望でもしたか!心配しなくても火傷はあとで俺が『舐めて消毒』してやるぜ!」

そして、男はとうとう焼鏝をハーティの胸に押し付けた。

「・・・・・」

「ん?」

 しかし、確かに真っ赤な焼鏝を押し付けているのに、ハーティにはまったく影響がない様子であった。

 ペタペタ・・・。

 男は首を傾げながら何度も焼鏝を押し付けるが、相変わらずなにも起こらなかった。

 それもそのはずである。

ハーティは『擬態』の魔導と共に、上級防御魔導を常時発動しているのだ。

 上級炎属性魔導をも防ぐ防御力を誇るハーティにとって、たかが熱した焼鏝を押し付けられる程度、痛くも痒くもなかったのであった。

「・・・・」

 ただ、ハーティは小刻みに震えていた。

 それは恐怖や絶望ではなかった。

「あなたたち・・・許せない!!」

 ハーティは完全にキレていた。
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