転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
46 / 229
第二章 魔導帝国オルテアガ編

帝都への旅路

しおりを挟む
 ガラガラガラガラ・・・。

 ハーティ達一行は盗賊達三十人近くを一列に結び、馬車で牽引しながら帝都を目指していた。

 それからしばらく馬車で行程を進めて、ようやく皆が落ち着いたのでお互いに自己紹介をすることにしたのであった。

「さっき名乗りを上げたんだけど、私は『ハーティ』って言うの。まあ、ちょっと『探し物』があって、冒険者デビューをしようと考えて帝都に向かっていたのよ」

「なるほど、『訳あり』なのですね。私は『シエラ』と申します。先程はお助けいただきましてありがとうございます。ハーティ様」

「手綱を握ってますゆえ振り返りで失礼します。私はシエラの父親で『ジェームズ』といいます。私からも心より感謝申し上げます。ハーティ様」

「はい、よろしくお願いします。ところであの・・・その『ハーティ様』っていうの、辞めません?」

「いえ!偉大なる『女神様』にそんなこと!ただでさえこんな馬車に乗せてしまって申し訳ありませんのに・・・」

「あの・・・私は『女神様』なんかじゃ・・ないわ」

「・・・・」

ハーティは先細った声で自信なさげに答えた。

「差し出がましいようですが、一撃であれだけ大きな谷の岩を消し飛ばして、『奴隷紋』消し去ってしまうほどの魔導を使うお方が『普通』というのはいささか無理があるかと・・・」

 そう言いながら申し訳なさそうにシエラは目を伏せた。

 同時に頭の獣耳もパタリと伏せられて、ハーティはちょっと可愛いと思ってしまった。

「・・ぐっ」

「と、とりあえず!なにがあっても私は『冒険者見習いハーティ』よ!」

「・・・わかりました。なにか事情がおありのようですし・・・では『ハーティさん』で如何でしょうか?」

「・・まあ様付けよりマシよね・・」

ハーティはとりあえず『さん』付けで折り合いをつけることにした。

「それにしても・・帝都まではまだまだかかりそうねえ」

「盗賊達は徒歩で引かれてますからね・・」

「ハーティさん、乗り心地は大丈夫ですか?本当にすいません。こんな粗末な幌馬車で・・しかも荷物と一緒ですので・・」

「いえ、大丈夫よ。むしろ快適なくらいだわ」

「そういってもらえると助かります」 

 ハーティが侯爵令嬢であったときは、それこそ贅を尽くした豪華絢爛な馬車であった。

 確かに、それに比べたらサスペンションもクッションも無く、さらには屋根も幌しかないが、これから冒険者として生きていくハーティにとっては寧ろ上等なくらいであった。

「そういえばハーティさん。王都の滞在先は決まっているのですか?」

 そう言いながらジェームズは振り返った。

「前を向いたままで結構ですよ。・・・実は帝都に行くのは初めてで・・全く目処が立ってないんです」

 ハーティは今現在全くお金を持ってないので、盗賊達の意を汲んで彼らを引き渡した謝礼金を当座の軍資金にしようと考えていた。

 そして、お金が手に入ったら、冒険者向けの安宿を探そうと思っていたのだ。

「でしたら!うちに来ませんか?しがないボロ宿ですが、私たちは親子で宿屋を営んでいるんです」

「今回は西の村で日持ちする食材とかの買い出しをしていたんですよ」

「正直経営はギリギリで、王都は物価が高いのでそういったものはまとめて近くの村から直接仕入れているんです」

「それで今回はこんなことに・・・」

 そう言いながらシエラはしゅんとなった。

「あなたたちは宿屋を経営していたのね、てっきり商人かと思っていたわ」

「・・まあ、商売をしているという意味では商人みたいなものですね!」

 それから無言で御者をしていたジェームズは何かを思いついた表情をした。

「ハーティさんは命の恩人です。お代はいらないので、うちの宿を是非ご滞在にお使いください」

 そう言いながらジェームズは微笑んだ。

「ありがとうございます、ジェームズさん。ですがお代はきっちり払います」

 ハーティは喜ばしい提案を受けたが、反対に獣人の親子に迷惑を掛けたくなかったので、ジェームズの提案をやんわりと断ったのであった。

「そっそれは!いけません!恩人からお金をいただくなど!!」

 しかしジェームズはハーティがお代を払うと言ってひどく慌てた様子であった。

「いいえ。多分これからはしばらく厄介になるのできっちりしたいのです。私もお金を払わないと遠慮してしまって居辛くなりますよ」

「・・・ですが・・」

 ハーティの話を聞いても、親子は納得していない様子であった。

「払うったら払います!・・それが無理でしたら違うところを探します!」

 このまま言っても聞き入れてもらえなさそうだったので、ハーティは心を鬼にしてジェームズ達に訴えた。

「そんな!」

 するとシエラは絶望的な表情になった。

「・・・でしたら、こんな感じではいかがでしょう」

 シエラの表情を見たジェームズは、一思案してハーティへ顔を向けた。

「ハーティさんが宿で宿泊された翌朝の朝食をサービスするっていうのはいかがでしょうか。私どもも何か恩を返したいのです。恩返しというには些細なものですが、いかがでしょうか?」

「それでしたら喜んで頂戴します!!」

 ハーティとしてはきっちり正規に宿泊した上で朝食をごちそうになれるのであれば、願ったり叶ったりであった。

「そしたら、帝都に着いたら、しばらくよろしくお願いしますね!」

「「はい、よろこんで!!」」

 ゆっくりと進む馬車の中は、和やかな雰囲気に包まれていた。

 そして、三人はそれからも会話をしながら小一時間ほど馬車を進めていた。

「・・・・ん?あれは・・」

 すると、ジェームズが行先で何かを見つけたような声を上げた。

「どうしたんですか、ジェームズさん?」

「いえ・・なにやら騎馬の隊列とみられる一団が近づいてきています」

「え!!?」

 それを聞いたハーティ達に緊張が走った。

 つい数時間前に盗賊に襲われていた身としては、騎馬の一団を見て緊張するのは致し方ないことであった。

 そして、あっという間に騎馬の一団と向かい合う形になる。

「・・・・・!」

 三人の間に一層の緊張が走る。

「ん?どうやら帝国の騎馬隊のようだ・・」
 
 しかし、御者をしているジェームズが真っ先に騎馬の一団の正体を確認した。

「そこの馬車!!!止まりなさい!」

 そして騎馬隊のリーダーに馬車を止められてしまった。

「君たちはどこのものだ!?何故これほどの人間を引き連れている!」

 ハーティ達は一台の馬車に何十人もの人間を引き連れて進んでいるのを不審に思われたので騎馬隊に止められたようであった。

「私は帝都で宿屋を営んでいる『ジェームズ』というものです。今は宿屋で使う食材の買い出しに西の村に行っていた帰りなのです」

「んーーー?だがその後ろにつれている人はなんだ!!」

「・・・実は、先程我々はこの引き連れている盗賊の一団に襲撃されまして、そこを護衛をお願いしていたこのハーティさんが撃退したのです」

「そして、帝都に着いたらこの人たちをギルドに引き渡そうと思っていたところなのです」

 それを聞いて、騎馬隊のリーダーは首を傾げた。

「んー?この女の子が一人で??どう見てもこの盗賊を捕まえれるような雰囲気ではないが・・・」

「・・それは私と娘も協力して・・・」

「そうなんでさぁ、この『ハーティの姉御』があまりに強いもんで、ばったばったと倒されてこの様でさぁ!!」

 ジェームズがその場を凌ぐために言い訳をしていた言葉をぶった切って、盗賊のリーダーが喋り出した。

「ん?姉御??」

 バシッ!

(バカッ!そんなこと言ったらまるで私が盗賊一味のリーダーみたいじゃない!!)

 ハーティは誰にも聞こえない小声で盗賊のリーダーを窘めながら頭を叩いた。

「??」

「あははははーなんでもないんです!私は修行の旅に出ている冒険者で、行先で出会ったこの二人の護衛をしていたんです!!」

「それで盗賊に襲われたんですが、三人で協力してなんとか捕まえたんですよ!!!」

「・・・うーん?まあ確かにあなたは魔導師に見える。しかもそれなりの使い手と見受けられるな」

「そ、そうなんですよ!たまたま広域魔導を放ったら一網打尽にできまして!あとは三人でちゃちゃっと盗賊たちを捕まえたんです!!」

「うーん、なるほど・・まあ帝都までまだしばらくかかるであろうし、逃げられたり不意打ちを受けないように気を付けられよ」

「本来ならここで我々が引き受けてもいいのだが、ちょっと『緊急の事件』があって調査に向かっているんだ」

「・・・『緊急の事件』ですか?」

 すると、騎馬隊のリーダーが何かを思いついたような表情をした。

「そうだ、あなたたちは西から来たんだね?『西の谷』でなにか大きな爆発に出くわさなかったか?」

「爆発??」

「ああ、帝都の見張り台からも確認できるほどの大きな爆発が『西の谷』から確認されたんだ。その規模を考えると、最悪の場合『古代竜』のブレスによるものではないかと帝国は判断している」

「そこで、我々が取り急ぎ先遣隊として調査に向かっているところだったのだ」

「もし『古代竜』であって帝都に向かっているということであれば、軍が総出で戦っても勝てないかもしれん・・・」

「もし古代竜でないとしても、もしかすれば『王国』がひそかに開発した新兵器や戦略級魔導の実験による爆発かもしれないしな・・」

 そういいながら騎馬隊たちは目を伏せた。

(どうしよう・・・・心当たりしかない!)

 ハーティは頭を抱えた。

「それでしたら!ちょうど私たちが盗賊に襲われているときに大きな爆発が起こったのを見ました!」

「運よくその爆発で盗賊たちが怯んだので、この『ハーティさん』と一緒に盗賊たちを退治したのですよ!」

(嘘は言ってませんからね・・・!)

 機転を利かせたジェームズが爆発についてでっち上げを伝えて、シエラはそれを聞いてウインクしながらハーティへ耳打ちした。

「・・そうでしたか!爆発に巻き込まれずによかったな」

 どう考えても苦しい言い分であったが、どうやら騎馬隊は納得したようであった。

「それでは、我々は急ぎます故・・帝都までお気をつけられよ!」

「ええ、そちらも何事もないことを祈っていますよ」

「協力感謝する!!」

 その言葉を残して、騎馬隊は颯爽と去って行った。

(あとであれをみて大きな問題にならなければいいけど・・・)

 ハーティは心にもやもやしたものを残しながら帝都へと向かったのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

処理中です...