転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第二章 魔導帝国オルテアガ編

白と黒 ~クラリス視点~2

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『はぁぁぁぁ!』

『てやぁぁぁぁ!』

 ガキンガキンガキンガキン!

『プラタナ』と『メルティーナ』は空中で激しく白銀の火花を散らしながら切り結んでいく。

 ヴヴヴヴヴヴ・・・・。

「っく!まさか『メルティーナ』がこれほどの動きを出来る様になるなんて・・・シエラちゃんが生み出すマナはそれほどのものだと言うの!?」

 ガキィィン!!

『あははははは!人智を超えた者同士が本気でぶつかり合う瞬間いま!最高に気持ちが高まると思わない?』

 ガキィィン!!

『あなたが目指していることは間違っているわ!!』

『あたしたちは今まで、人々の暮らしを便利に!豊かにする為に!お互い切磋琢磨しながら努力してきたはずよ!!』

 ガキィィン!!

『それが、今こうやってお互いに殺し合っているなんて!そんなの間違っているわ!!』

『うるさい!そんなの所詮は綺麗事よ!!魔導具が発明されるよりも前から、人間は殺し合う為にさまざまな『武器』を発明してきたわ!!』

『結局優れた物など、いずれは殺し合いの為に使われるのよ!』

『そこに開発者の意思なんて関係ない・・どんな思いを持って生み出したものでも・・最後は使う人間によっていくらでも悪用されるものなのよ!』

 ガキィィン!

『それでも、あたしはあなたに・・・してほしくなかった!!!』

 ガキィィン!

『っ!』

 クラリスの言葉に一瞬『メルティーナ』の剣戟が鈍ったような様子を見せた。

 ガキィィン!

 しかし、それも一瞬の出来事で、再び二機の剣は激しくぶつかり合った。

『・・私は!ただ誰よりも優れた『新しい力』を手に入れたかっただけよ!』

『そして・・!『新しい力メルティーナ』を手に入れた今!私は絶対に負けないわ!』

 ニアールはそう高らかに宣言すると、突然『メルティーナ』を『プラタナ』から引き離した。

『食らいなさい!これこそ私が開発した『新しい魔導』よ!!』

 ニアールがそう言うと、『メルティーナ』は右腕を『プラタナ』の方へむけて突き出した。

 バシュウ!

 そして腕部装甲の一部が展開すると、掌の前に円形状の魔導式が浮かび上がった。

 シュイイイイン!

『裁きの火球を食らいなさい!』

 シュババババババババ!
 
 そして、その魔導式から大量の火球が放たれて、『プラタナ』の方へと迫ってきた。

 ヴヴヴヴヴヴ・・・・。

魔導機甲マギ・マキナが火属性魔導を使うですって!?」

 グイ・・・!

 クラリスはコクピットで驚愕の表情を浮かべると、すかさず火球を回避する為に操縦レバーを倒す。

 ゴウゥゥゥゥゥゥ!!!

 すると、『プラタナ』の背部にある翼が可変して、『プラタナ』が即座に水平移動による回避運動を開始した。

 シュンシュンシュンシュン・・・!

 それらの火球は『プラタナ』の高機動性を駆使した高速水平飛行によって全て回避することができたが、ユナやハーティの時と同じように再び旋回して『プラタナ』の方へと戻ってきた。

 ヴヴヴヴヴ・・。

「ウソでしょ!?誘導火球魔導ですって!?」

 グィン!

 クラリスは再びコックピットで独り言つと操縦レバーを複雑に操作した。

 ゴウゥゥゥゥ!

 シュンシュン!!

 ゴウゥゥゥ!!

 シュンシュン!!

『プラタナ』はしつこく追尾していく火球を、宙返りや機体を旋回させるような動きを組み合わせた高速飛行によって巧みに回避していく。

『ふん・・なかなかやるわね!!だけど、火球ばかりに気を取られていてはいけないわよ!!』

 ゴウゥゥゥゥゥ!

『メルティーナ』は回避に必死となっている『プラタナ』に最大出力の飛翔魔導で迫ると、そのまま速度を乗せて『プラタナ』へと蹴りを放った。

 ドガァァン!

『うっきゃあ!!!』

 キィーーーン!ドガァァァァァン!!!!

『メルティーナ』の蹴りを真面に食らった『プラタナ』はそのままの勢いで地面へと叩きつけられた。

 数十トンにもなる『プラタナ』が高速で地面に激突した衝撃で、落下地点の地上の家屋は軒並み破壊されていった。

 ヴヴヴヴヴヴ・・・・。

「ったあ・・・・・」

『上級防御魔導』の許容限界を超えたダメージを食らったことによって、『プラタナ』のコクピット内は激しく揺れた。

 そして、クラリスが徐に額へと手をやると、そこには僅かに赤い血が付いていた。

 ドガァァン!

「きゃあ!!」

『プラタナ』が仰向けに倒れている為にクラリスの眼前にある光魔導スクリーンには空が映っていたが、そこに『メルティーナ』の足の裏が映り込んでいた。

 それが指し示すように、今まさに『メルティーナ』は転倒した『プラタナ』を踏みつけている状態であった。

『はん!無様ね。クラリス!!』

『あんたにはいままで沢山悔しい思いをさせられたけど、ようやくその屈辱を晴らす時が来たわ!!!』

 ゴゥゥゥン!

 そう言うと、『メルティーナ』は『プラタナ』を踏みつけたまま、自身の剣を抜刀して剣先を真下にいる『プラタナ』の胸元に向けて構えた。

『安心しなさい。せめて一思いにコクピットを狙って突き刺してあげるから・・残念だけど、お別れね』

 ヴヴヴヴヴヴヴ・・・。

「っここまでなの・・・!?」

 クラリスは太陽の光を鋭く反射する剣先から目を逸らすように、側面のスクリーンへと目をやる。

 すると、戦っているうちに郊外まで追いやられたのか、そこには少し距離を置いたところでレゾニア男爵家の屋敷が映っていた。

 そして、その屋敷を見た瞬間に、クラリスはを思い出したのであった。

「・・・あたしはまだ諦めないわ!!!」

 グィ!!!

 そう言うと、クラリスは一気に操縦レバーを限界まで前方へ押し込んだ。

 キィィィィィィィィン!!!!ゴゥゥゥゥゥゥ!

 その瞬間、『プラタナ』の背面にある『フライ・マギ・ブースト・ウィング』の輝きが一気に増して、凄まじい初速で仰向けのまま『プラタナ』は飛び出した。

 ドガァン!

『なに!?』

『プラタナ』に脚部を置いていた『メルティーナ』は突然『プラタナ』が離脱したことにより転倒した。

 そして、『プラタナ』は背面飛行のまま、まっすぐレゾニア男爵邸の方へと向かった。

「お爺様・・・今こそを使う時だわ・・・!」

 そして、クラリスはレゾニア男爵家へ『プラタナ』を駆りながら、かつて祖父と過ごしたとある日の情景を思い返していた。

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