転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

別れ、そして使命の為に

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「『エルフの国リーフィア』・・・」

「『女神教』に対して独自の信仰概念を持っているものの、そのは現在の『神聖イルティア王国』にも勝ると言われている、『エルフ族』が治める国ですね」

 ハーティの独り言に対して、ユナが補足説明を入れる。

「何だが行くのに気が乗らないわ・・でも仕方ないわね」

 ハーティはげんなりした顔で項垂れた。

「まあ、あんたの姿を目の当たりにしたら騒ぎになりそうだしね」

「であろうな」

 ニアールの言葉に、ナラトスも賛同した。

『まあ、か治める国ですからな。致し方ないでしょうな』

「バハムスは『リーフィア』の女王の事を知っているの?」

『そりゃもう・・我も『霊峰』に籠っていたゆえ、とはこの千年程は会っていませんが・・奴も『ハイエルフ』として我と同じくらい長い時を生きていましてな・・まあここから先の話は実際に会っていただいた方が早いでしょう・・ぐふっ!』

 バハムートは話をしている途中に咽せると、口腔から血潮を吐いた。

「バハムス!」

『親愛なる主君ともうしばらく語らいをしたかったのですが、どうやら身体がもたなさそうですなぁ・・』

 グググ・・・。

 バハムスは独りぼやくと、その巨大な体を起こした。

『では、名残惜しいですが、今度こそお別れですな。最期に貴方様と会って道標みちしるべを伝えることが出来て良かったです。親愛なる主君・・どうか『この世界』を救ってください』

 バハムスはハーティに声をかけると、そのまま飛び立とうとする。

「待って!バハムス!何処に行くの!?」

 飛び去ろうとするバハムスを制止するハーティの声を聞いて、バハムスは振り返った。

『親愛なる主君に『自分の死に様』を見せたくはありません。それに存外、あの『霊峰』を気に入っておりましてな。最期は自分の好きな場所で逝きたいのです』

「バハムス・・」

『『女神』に連なる勇者達よ、我の親愛なる主君を頼んだぞ。そして、必ずこの世界を救ってくれ』

 バハムスの言葉を聞いて、全員がしっかりと頷いた。

『では、親愛なる主君・・もし、数奇な運命によって、また『別の存在』として貴方様に会うことがあれば・・再び我は貴方様にお仕えしましょう。それまでお別れです。後は頼みましたぞ』

 バサッバサッ!

 バハムスはハーティに別れを告げると、自身の翼で天高く舞い上がった。

「バハムスーー!ありがとう!私は必ずこの世界を救ってみせるから!!」

 ハーティは羽ばたくバハムスに大声で叫びながら手を振った。

 その美しい白銀の双眸からは、一筋の涙が溢れていた。

 ズヒュゥゥゥゥン!!

 バハムスはそんなハーティを名残惜しそうに一瞥すると、『霊峰』に向かって飛んでいった。




 ・・・・・・・。






 ズドォォン・・・!

『・・・・・・』

 その後、バハムスはやっとのことで半ば墜落するように『霊峰』の頂へと降下すると、処女雪が積る一面の白銀世界にゆっくりと身体を横たえて瞳を閉じた。

 ヒュオオオオ・・・・!

『親愛なる・・主君・・』

 そして、『親愛なる主君』へ想いを馳せながら、まるで眠るようにその五千年以上の長きに渡る生涯を静かに終えた。





 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。






「「「「うおおおおおおお!!!」」」

「女神ハーティルティア様が戻られたぞ!!」

 バハムスを見送った『白銀の剣』一行が『カームクラン』へと戻ると、そこは未だかつてないほどの興奮と歓喜に包まれていた。

『ワイバーン』と戦っていた民衆達は、自身がボロボロなことなどお構いなしに、ハーティ達の前で跪いていった。

 そして、そんなハーティ達の元へとミウとマツダイラ兄弟が駆け寄ってきた。

「ハーティさん!」

「ハーティさんが戻ってきたということは、エメラダは討伐できたのじゃな!?」

「はい。強敵でしたが何とか滅ぼすことができました」

「うぐ・・ありがとうなのじゃ・・」

 ハーティからエメラダ討伐の成功を聞いたミウは思わず涙ぐんだ。

「皆さんも『ワイバーン』から『カームクラン』を救うことが出来たんですね!被害はどうなったのですか!?」

「はい、クラリス殿の魔導具の助けもありましたし、皆が協力し合うことで、被害は何とか最小限に抑えられました。これも女神様のおかげです」

「それはよかった・・」

 シゲノブの言葉を聞いたハーティはホッと胸を撫で下ろした。

「そういえば、『黒竜バハムート』はどうしたのですか?』

 アキトから質問を受けたハーティは、静かに首を横に振った。

「『黒竜バハムート』は最期に正気を取り戻したけど、その命を救うことはできませんでした・・」

 ハーティは『黒竜バハムート』が『バハムス』であることは敢えて言わなかった。

 そこには、操られていたとはいえ、『邪神』の為に自分達へ牙を向いたバハムスの醜態を世に晒したくないという、ハーティなりの配慮があった。

「そうですか・・・」

「ですが、『黒竜バハムート』は最期に『黒の魔導結晶』について有力な情報を教えてくれました」

「なんと!?それは誠でありますか!!」

 ハーティの言葉にシゲノブが声を上げた。

「はい。『黒竜バハムート』は『黒の魔導結晶』が後一つ存在すること、それを『エルフの国リーフィア』のリーフィア女王陛下が封印していることを私達に教えてくれました」

「「「『エルフの国リーフィア』!?」」」

「はい。そして、その『黒の魔導結晶』は、今までのものとは比べ物にならない程の危険を孕んだものであるらしいのです。ですから、私達『白銀の剣』はすぐに『エルフの国リーフィア』へと向かい、まだいるかもしれない『邪神』よりも早くそれを入手して浄化しなければなりません!」

「ハーティさん・・」

「女神様・・」

「ということは、すぐに『アーティナイ連邦』から出立するというのかえ!?」

「はい・・私達は準備が終わり次第、『エルフの国リーフィア』へと向かうつもりです。事態は一刻を争いますから・・」

 ハーティの言葉を聞いたミウは、酷く狼狽えていた。

「じ・・じゃが、せっかく『カームクラン』を救ってくれたのに、わらわは何のお礼もしておらぬのじゃ!そんなにすぐ行かなくてもよいのでは!?そうじゃ!『カームクラン』の民衆達と感謝の祭りを開いて・・」

 ハーティへ必死に縋ろうとするミウに対して、アキトは肩に手を置きながら無言で首を横に振った。

 それに対して、ミウは目を伏せた。

「・・・本当はわらわにもわかっているのじゃ・・ハーティさん達が『邪神』復活を阻止する為に一刻を争っているという事も・・旅立たないといけない事も・・」

「じゃが、折角こうして知り合えたのじゃ。わらわは『カームクラン』を救った恩人と言う前に、一人の『友人』としてもっとハーティさん達と一緒にいたかったのじゃ・・」

 涙を流しながら語るミウの姿は、普段見せないような年相応の少女らしいものであった。

「ミウさん・・」

 ハーティは、そんなミウを優しく抱きしめた。
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