転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
183 / 229
最終章 決戦!『デスティウルス』編

決戦前の夕食会2

しおりを挟む
 皆が着席した瞬間、給仕のメイド達が見た目も華やかな料理を次々と運んでくる。

「船の中なのにこんな豪華な食事が出てくるとは思わなかったわ」

「元々この艦は改修前から有事の時に運用する他にも王族の移動に使われる予定だったからね。乗組員用の厨房とは別に貴族用の厨房が存在するんだよ」

「もちろん、普通の乗組員は食堂で食べるよ。そっちは二千人近くがごった返すから、それはもう戦場だよ」

「え・・ちょっとそっちで食べてみたい・・」

「いや、『女神様』が食堂に現れたら大変なことになるよ」

 カチャカチャ・・・。

 ハーティとマクスウェルが会話をしている間にも粛々と食事が並べられていき、さほどしない間に準備が完了した。

「・・では、食前の祈りを捧げよう」

 マクスウェルの言葉に続いて、フィオナ、ナラトス、二アール以外の人間がハーティに向かって祈りを捧げた。

 ちなみにクラリスは帝国貴族だが、ハーティと出会ってからは他国の慣習に倣って食事前に祈りを捧げていた。

「いつも私に向かって祈られるのは気まずいわ・・」

 ハーティは気まずそうに頬を掻いた。

「何をおっしゃいます。敬虔な『女神教』信者がハーティルティア様に祈らずして一体何に対して祈るのですか?」

 それに間伐を入れずにユナが答えた。

「生きる『神』をするのも大変ね。私もナラトス様に祈りを捧げようかしら」

「二アールさん、『女神教』において『邪神崇拝』は最大の禁忌です。それはもう、見つかった場合は火炙りの刑に処される程に。だから、ナラトスを崇めるならこっそりしないと駄目ですよ」

「冗談に決まってるでしょ!」

 二アールはリリスに指摘されて、つーんとそっぽを向いた。

 ちなみに、リリスは先ほどまで『女神化』していたが、現在は『聖杖』を手放して普段の姿に戻っている。

 そして、『聖女』という立場ゆえにマクスウェルやフィオナと同列の位置に座っていた。

「しかし、こうして『女神』と『邪神』が同じテーブルを囲っている光景を見ることになるとはな」

「それも全てハーティルティア様の威光があるからこそです」

 マクスウェルの言葉に、ユナがうんうんと頷きながら肯定の言葉を口にしていた。

 それからも皆が美味しい食事に舌鼓を打ち、お酒もまわって場が賑やかになってきた頃。

「ハーティ・・こうやって『女神』になったハーティを近くで見ていると、ますます美しく見えるよ」

 程よいくらいにお酒が回ったマクスウェルは、ハーティを見ながらうっとりとした表情をしていた。

「もう!マクスウェル!恥ずかしいよ!」

「くっ!『女神化』するのは反則だと思いますわ!マクスウェル様!どうか私のことも見てくださいませ!!」

 フィオナはハーティに対抗するように頬を染めながら上目遣いでマクスウェルを見つめた。

 その時に無意識に寄せられた胸が、無意識にマクスウェルの視線を誘うことになる。

「マクスウェル殿下の事は何とも思っていないけど、なんだか無性に腹が立つわ!胸なの!?やっぱり胸なのね!!」

 チラッチラッ・・。

 クラリスの言葉を聞いた二アールはそわそわとしながら、隣に座るナラトスに視線を送った。

「うん?」

 上座の騒ぎなど物ともせず黙々と食事をしていたナラトスが、二アールの視線に気がついて首を傾げた。

「その・・ナラトス様も、胸が大きい女の子が好きですか?」

 二アールはもじもじとしながらナラトスに問いかけた。

「うーむ、私は人の姿をしているが『邪神』故に身体的特徴について何か特別な思いというのはないな。だが、二アールはそんなことなど関係なしに、私にとって無くてはならない存在だと思っている」

「・・・っ!ナラトス様っ!」

 ナラトスの言葉を聞いた二アールはナラトスに腕を絡めた。

「むきぃー!どいつもこいつも!あたしに高位の魔導が使えたら、今すぐ『エクスプロージョン』を放ちたい気分だわ!」

 そう言いながら、クラリスはグラスのワインを一気に煽った。

「ふん!殿下は『色ボケ』ばかりか『変態』の肩書きまで付くどうしようもない人間なのですね。本当に気持ち悪いです」

「おい!私は『色ボケ』でも『変態』でもないぞ!!ユナ、その顔!またお酒にやられてるな!」

「・・私もハーティルティア様の前でそう何度も醜態など晒しません。今日は抑えていますとも。なのでこれは私の心の声がそのまま漏れているということです、ええ」

「なおタチが悪いぞ!!」

「もう!二人とも喧嘩しないで!」

「・・・まったく。・・あっ!そうだ!」

 ハーティに嗜められて口論をやめたマクスウェルは突然何かを思い出したように声を出した。

「どうしたの?マクスウェル?」

「いや、この艦には貴族用の浴場があるんだよ。明日には人類の命運をかけた決戦が待っているんだ。今日はおいしい食事をして、湯に入って、ゆっくり休むといい」

「はあ・・『おっぱい狂い』に留まらず、とうとう覗きですか。王国の未来が不安になりますね」

 ユナは呆れた様子で溜息を吐いた。

「ちょっ!ユナ!勝手に変な肩書きを増やさないでくれ!それと!私は決してハーティの事をおっぱいで好きになったわけじゃ無いからな!」

「っつ!?」

 ハーティはマクスウェルの告白を聞いた瞬間、顔を真っ赤に染めて自分の胸を隠しながら非難の目を向けた。

「ハ、ハーティ!誤解だ!だからそんな目を向けないでくれ!!」

「おっぱいの事はどうでもいいけど、早く食べないとせっかくの食事が冷めるわよ・・」

 やけっぱち気味に呟くクラリスの目は死んだ魚のようになっていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...