184 / 229
最終章 決戦!『デスティウルス』編
フィオナの気持ち、恋の駆け引き
しおりを挟む
賑やかな食事会が終わった後、ハーティ達は艦内に備え付けられた貴賓用の浴場へと向かった。
「思ったより広い浴場でびっくしりたわ!」
「でも、浴場にまで『女神像』があるなんて、本当に『女神教』信者ってハーティ様のことを崇めていますのね」
浴場に入ったハーティとフィオナは、隣同士の寝台に寝そべりながら、侍女の手によってその美しい長髪を梳かし洗われていた。
ハーティ自身は、貴族でありながらアカデミーや魔導省の暮らしで一人で湯浴みする事に慣れているクラリスやニアール、そもそも貴族ではなく聖職者であるリリス達のように、さっさと自分で身体を洗って湯船に入りたかったのだが、そんな事が『女神様』という立場的に許されるはずもなかった。
だが、マナで光り輝く白銀の髪に触れる度胸がある侍女などいるはずもないので、ハーティの髪のケアはいつも通りユナが行っていた。
「当たり前です。『女神教』信者にとって『女神像』は無くてはならない存在です。常にハーティルティア様の存在を心に思いながら生きているのですから」
ユナはハーティの髪を梳かしながら語ると、その仕上がりに満足したように頷いた。
「終わりましたよ、ハーティルティア様。では、私も自分の事をしますので、暫く外させていただきます」
「ええ、いつもありがとうね。ユナ」
「とんでもございません。これが私の使命ですから・・では、失礼します」
ユナがハーティに一礼して去っていったので、ハーティは寝台から体を起こして浴槽に向かおうとした。
「ちょっと待ってくださる?」
その時、未だ髪を梳かされながら横になっているフィオナに引き止められた。
「どうしました?フィオナ様」
ハーティが返事をすると、フィオナは胸元に浴布を当てながらゆっくりと起き上がった。
その様子を見たフィオナ付きの侍女は、ちょうど作業が終わったタイミングだったということもあり、無言で一礼をしながら去っていった。
「・・明日には『邪神』との決戦が控えています。そうなれば、こうやって二人きりでお話しする機会がないかも知れませんので、いまのうちにハーティ様へお尋ねしたい事があるのですわ」
「お尋ねしたい事、ですか?」
「ええ」
フィオナは暫くハーティの事を見つめると、意を決したように口を開いた。
「実のところ、ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思っているのですか?」
「え!?ど、どうって??それは・・まあ婚約者という・・」
「そんな客観的な事実を聞いているわけではありませんわ!!」
「・・・・・・」
すごい剣幕で話を遮られてしまい、ハーティは思わず口を噤んでしまった。
「・・・わたくしは、マクスウェル様の事をお慕いしておりますわ」
「っ!?」
フィオナがマクスウェルに好意を抱いていることは、流石のハーティも普段の様子から感じ取ってはいたが、面と向かって『慕っている』と言われてしまえば動揺を隠せなかった。
「わたくしは、お兄様・・オルクス皇帝陛下から王国との友好の為、政略的な意味でマクスウェル様と親しくなるように命じられましたわ」
「まあ・・それは、お兄様自身の『打算』もあるかもしれませんが・・」
「こほん・・とにかく、わたくしも王国でマクスウェル様と出会うまではお兄様と同じ程度の気持ちでしたわ。ですが、マクスウェル様とお会いして一目で恋に落ちてしまったのですわ」
「最初はマクスウェル様の見た目がわたくしの好みを射抜いているというきっかけだったのかもしれませんが、王国で滞在しながら共に過ごす事で、その人柄も素敵に思うようになりました」
「今となってはわたくしの中に、マクスウェル様は大きな存在感を持つようになってしまったのです」
「・・そこで、もう一度お尋ねしますわ。ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思ってらっしゃるのですか?」
「それは・・・」
「もし、ハーティ様がマクスウェル様の事を思っている訳ではなく、『婚約者』の立場としてしかマクスウェル様の事を見ていらっしゃらないと言うのなら・・・」
言葉を止めたフィオナは、ハーティへ鋭い視線を向けた。
「どうか、ハーティ様からマクスウェル様との『婚約』を解消して、彼を解放してあげてください!」
「・・悔しいですが、マクスウェル様の気持ちはずっとハーティ様に向いていますわ。ですが、その気持ちが叶わないまま『婚約者』として居続けるのはとても辛いはずですわ。幸い、あなたにはそれができますわ。何たって『女神様』ですもの」
「そ・・そうよ、私はみんなに『女神様』って言われて・・だから私は普通の女の子として生きることなんて・・」
キッ!
「っ!?」
ハーティの言葉を聞いたフィオナは、更に非難するような厳しい視線を向けた。
「そうやって、『自分は普通の人間とは違うから』といって逃げないでください!!ハーティ様は周りから『女神様』と崇められてはいても、自分の意思があるのではなくて!?そうやって、これからも自分からこの世界に一線を引いて逃げていくつもりですの!?」
「・・いずれにしてもこの戦いが終わった後、この世界はあなたの事を放っておいてはくれませんわ。いろんな人間が、いろんな思惑をもってあなたに迫るでしょう」
「その時には、ハーティ様は必ず自分の身の振り方を考えないといけなくなりますわ」
フィオナは目を伏せながら話を静かに聞くハーティに悲しげな視線を向けると、寝台から降りて再びハーティの方へ振り返った。
「とにかく、ハーティ様はもう一度自分の『心』と向き合ってくださいな。人間でも、『女神様』であっても・・『心』を持つ事に変わりはありませんもの」
フィオナはそう言うと、踵を返して湯船の方へ歩き去っていった。
「私の・・・『心』・・」
ハーティはそれを見送ると、静かに呟きながら身に纏う浴布を力強く握りしめた。
「思ったより広い浴場でびっくしりたわ!」
「でも、浴場にまで『女神像』があるなんて、本当に『女神教』信者ってハーティ様のことを崇めていますのね」
浴場に入ったハーティとフィオナは、隣同士の寝台に寝そべりながら、侍女の手によってその美しい長髪を梳かし洗われていた。
ハーティ自身は、貴族でありながらアカデミーや魔導省の暮らしで一人で湯浴みする事に慣れているクラリスやニアール、そもそも貴族ではなく聖職者であるリリス達のように、さっさと自分で身体を洗って湯船に入りたかったのだが、そんな事が『女神様』という立場的に許されるはずもなかった。
だが、マナで光り輝く白銀の髪に触れる度胸がある侍女などいるはずもないので、ハーティの髪のケアはいつも通りユナが行っていた。
「当たり前です。『女神教』信者にとって『女神像』は無くてはならない存在です。常にハーティルティア様の存在を心に思いながら生きているのですから」
ユナはハーティの髪を梳かしながら語ると、その仕上がりに満足したように頷いた。
「終わりましたよ、ハーティルティア様。では、私も自分の事をしますので、暫く外させていただきます」
「ええ、いつもありがとうね。ユナ」
「とんでもございません。これが私の使命ですから・・では、失礼します」
ユナがハーティに一礼して去っていったので、ハーティは寝台から体を起こして浴槽に向かおうとした。
「ちょっと待ってくださる?」
その時、未だ髪を梳かされながら横になっているフィオナに引き止められた。
「どうしました?フィオナ様」
ハーティが返事をすると、フィオナは胸元に浴布を当てながらゆっくりと起き上がった。
その様子を見たフィオナ付きの侍女は、ちょうど作業が終わったタイミングだったということもあり、無言で一礼をしながら去っていった。
「・・明日には『邪神』との決戦が控えています。そうなれば、こうやって二人きりでお話しする機会がないかも知れませんので、いまのうちにハーティ様へお尋ねしたい事があるのですわ」
「お尋ねしたい事、ですか?」
「ええ」
フィオナは暫くハーティの事を見つめると、意を決したように口を開いた。
「実のところ、ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思っているのですか?」
「え!?ど、どうって??それは・・まあ婚約者という・・」
「そんな客観的な事実を聞いているわけではありませんわ!!」
「・・・・・・」
すごい剣幕で話を遮られてしまい、ハーティは思わず口を噤んでしまった。
「・・・わたくしは、マクスウェル様の事をお慕いしておりますわ」
「っ!?」
フィオナがマクスウェルに好意を抱いていることは、流石のハーティも普段の様子から感じ取ってはいたが、面と向かって『慕っている』と言われてしまえば動揺を隠せなかった。
「わたくしは、お兄様・・オルクス皇帝陛下から王国との友好の為、政略的な意味でマクスウェル様と親しくなるように命じられましたわ」
「まあ・・それは、お兄様自身の『打算』もあるかもしれませんが・・」
「こほん・・とにかく、わたくしも王国でマクスウェル様と出会うまではお兄様と同じ程度の気持ちでしたわ。ですが、マクスウェル様とお会いして一目で恋に落ちてしまったのですわ」
「最初はマクスウェル様の見た目がわたくしの好みを射抜いているというきっかけだったのかもしれませんが、王国で滞在しながら共に過ごす事で、その人柄も素敵に思うようになりました」
「今となってはわたくしの中に、マクスウェル様は大きな存在感を持つようになってしまったのです」
「・・そこで、もう一度お尋ねしますわ。ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思ってらっしゃるのですか?」
「それは・・・」
「もし、ハーティ様がマクスウェル様の事を思っている訳ではなく、『婚約者』の立場としてしかマクスウェル様の事を見ていらっしゃらないと言うのなら・・・」
言葉を止めたフィオナは、ハーティへ鋭い視線を向けた。
「どうか、ハーティ様からマクスウェル様との『婚約』を解消して、彼を解放してあげてください!」
「・・悔しいですが、マクスウェル様の気持ちはずっとハーティ様に向いていますわ。ですが、その気持ちが叶わないまま『婚約者』として居続けるのはとても辛いはずですわ。幸い、あなたにはそれができますわ。何たって『女神様』ですもの」
「そ・・そうよ、私はみんなに『女神様』って言われて・・だから私は普通の女の子として生きることなんて・・」
キッ!
「っ!?」
ハーティの言葉を聞いたフィオナは、更に非難するような厳しい視線を向けた。
「そうやって、『自分は普通の人間とは違うから』といって逃げないでください!!ハーティ様は周りから『女神様』と崇められてはいても、自分の意思があるのではなくて!?そうやって、これからも自分からこの世界に一線を引いて逃げていくつもりですの!?」
「・・いずれにしてもこの戦いが終わった後、この世界はあなたの事を放っておいてはくれませんわ。いろんな人間が、いろんな思惑をもってあなたに迫るでしょう」
「その時には、ハーティ様は必ず自分の身の振り方を考えないといけなくなりますわ」
フィオナは目を伏せながら話を静かに聞くハーティに悲しげな視線を向けると、寝台から降りて再びハーティの方へ振り返った。
「とにかく、ハーティ様はもう一度自分の『心』と向き合ってくださいな。人間でも、『女神様』であっても・・『心』を持つ事に変わりはありませんもの」
フィオナはそう言うと、踵を返して湯船の方へ歩き去っていった。
「私の・・・『心』・・」
ハーティはそれを見送ると、静かに呟きながら身に纏う浴布を力強く握りしめた。
0
あなたにおすすめの小説
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~
たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。
辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。
壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。
その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。
ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる