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最終章 決戦!『デスティウルス』編
フィオナの気持ち、恋の駆け引き
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賑やかな食事会が終わった後、ハーティ達は艦内に備え付けられた貴賓用の浴場へと向かった。
「思ったより広い浴場でびっくしりたわ!」
「でも、浴場にまで『女神像』があるなんて、本当に『女神教』信者ってハーティ様のことを崇めていますのね」
浴場に入ったハーティとフィオナは、隣同士の寝台に寝そべりながら、侍女の手によってその美しい長髪を梳かし洗われていた。
ハーティ自身は、貴族でありながらアカデミーや魔導省の暮らしで一人で湯浴みする事に慣れているクラリスやニアール、そもそも貴族ではなく聖職者であるリリス達のように、さっさと自分で身体を洗って湯船に入りたかったのだが、そんな事が『女神様』という立場的に許されるはずもなかった。
だが、マナで光り輝く白銀の髪に触れる度胸がある侍女などいるはずもないので、ハーティの髪のケアはいつも通りユナが行っていた。
「当たり前です。『女神教』信者にとって『女神像』は無くてはならない存在です。常にハーティルティア様の存在を心に思いながら生きているのですから」
ユナはハーティの髪を梳かしながら語ると、その仕上がりに満足したように頷いた。
「終わりましたよ、ハーティルティア様。では、私も自分の事をしますので、暫く外させていただきます」
「ええ、いつもありがとうね。ユナ」
「とんでもございません。これが私の使命ですから・・では、失礼します」
ユナがハーティに一礼して去っていったので、ハーティは寝台から体を起こして浴槽に向かおうとした。
「ちょっと待ってくださる?」
その時、未だ髪を梳かされながら横になっているフィオナに引き止められた。
「どうしました?フィオナ様」
ハーティが返事をすると、フィオナは胸元に浴布を当てながらゆっくりと起き上がった。
その様子を見たフィオナ付きの侍女は、ちょうど作業が終わったタイミングだったということもあり、無言で一礼をしながら去っていった。
「・・明日には『邪神』との決戦が控えています。そうなれば、こうやって二人きりでお話しする機会がないかも知れませんので、いまのうちにハーティ様へお尋ねしたい事があるのですわ」
「お尋ねしたい事、ですか?」
「ええ」
フィオナは暫くハーティの事を見つめると、意を決したように口を開いた。
「実のところ、ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思っているのですか?」
「え!?ど、どうって??それは・・まあ婚約者という・・」
「そんな客観的な事実を聞いているわけではありませんわ!!」
「・・・・・・」
すごい剣幕で話を遮られてしまい、ハーティは思わず口を噤んでしまった。
「・・・わたくしは、マクスウェル様の事をお慕いしておりますわ」
「っ!?」
フィオナがマクスウェルに好意を抱いていることは、流石のハーティも普段の様子から感じ取ってはいたが、面と向かって『慕っている』と言われてしまえば動揺を隠せなかった。
「わたくしは、お兄様・・オルクス皇帝陛下から王国との友好の為、政略的な意味でマクスウェル様と親しくなるように命じられましたわ」
「まあ・・それは、お兄様自身の『打算』もあるかもしれませんが・・」
「こほん・・とにかく、わたくしも王国でマクスウェル様と出会うまではお兄様と同じ程度の気持ちでしたわ。ですが、マクスウェル様とお会いして一目で恋に落ちてしまったのですわ」
「最初はマクスウェル様の見た目がわたくしの好みを射抜いているというきっかけだったのかもしれませんが、王国で滞在しながら共に過ごす事で、その人柄も素敵に思うようになりました」
「今となってはわたくしの中に、マクスウェル様は大きな存在感を持つようになってしまったのです」
「・・そこで、もう一度お尋ねしますわ。ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思ってらっしゃるのですか?」
「それは・・・」
「もし、ハーティ様がマクスウェル様の事を思っている訳ではなく、『婚約者』の立場としてしかマクスウェル様の事を見ていらっしゃらないと言うのなら・・・」
言葉を止めたフィオナは、ハーティへ鋭い視線を向けた。
「どうか、ハーティ様からマクスウェル様との『婚約』を解消して、彼を解放してあげてください!」
「・・悔しいですが、マクスウェル様の気持ちはずっとハーティ様に向いていますわ。ですが、その気持ちが叶わないまま『婚約者』として居続けるのはとても辛いはずですわ。幸い、あなたにはそれができますわ。何たって『女神様』ですもの」
「そ・・そうよ、私はみんなに『女神様』って言われて・・だから私は普通の女の子として生きることなんて・・」
キッ!
「っ!?」
ハーティの言葉を聞いたフィオナは、更に非難するような厳しい視線を向けた。
「そうやって、『自分は普通の人間とは違うから』といって逃げないでください!!ハーティ様は周りから『女神様』と崇められてはいても、自分の意思があるのではなくて!?そうやって、これからも自分からこの世界に一線を引いて逃げていくつもりですの!?」
「・・いずれにしてもこの戦いが終わった後、この世界はあなたの事を放っておいてはくれませんわ。いろんな人間が、いろんな思惑をもってあなたに迫るでしょう」
「その時には、ハーティ様は必ず自分の身の振り方を考えないといけなくなりますわ」
フィオナは目を伏せながら話を静かに聞くハーティに悲しげな視線を向けると、寝台から降りて再びハーティの方へ振り返った。
「とにかく、ハーティ様はもう一度自分の『心』と向き合ってくださいな。人間でも、『女神様』であっても・・『心』を持つ事に変わりはありませんもの」
フィオナはそう言うと、踵を返して湯船の方へ歩き去っていった。
「私の・・・『心』・・」
ハーティはそれを見送ると、静かに呟きながら身に纏う浴布を力強く握りしめた。
「思ったより広い浴場でびっくしりたわ!」
「でも、浴場にまで『女神像』があるなんて、本当に『女神教』信者ってハーティ様のことを崇めていますのね」
浴場に入ったハーティとフィオナは、隣同士の寝台に寝そべりながら、侍女の手によってその美しい長髪を梳かし洗われていた。
ハーティ自身は、貴族でありながらアカデミーや魔導省の暮らしで一人で湯浴みする事に慣れているクラリスやニアール、そもそも貴族ではなく聖職者であるリリス達のように、さっさと自分で身体を洗って湯船に入りたかったのだが、そんな事が『女神様』という立場的に許されるはずもなかった。
だが、マナで光り輝く白銀の髪に触れる度胸がある侍女などいるはずもないので、ハーティの髪のケアはいつも通りユナが行っていた。
「当たり前です。『女神教』信者にとって『女神像』は無くてはならない存在です。常にハーティルティア様の存在を心に思いながら生きているのですから」
ユナはハーティの髪を梳かしながら語ると、その仕上がりに満足したように頷いた。
「終わりましたよ、ハーティルティア様。では、私も自分の事をしますので、暫く外させていただきます」
「ええ、いつもありがとうね。ユナ」
「とんでもございません。これが私の使命ですから・・では、失礼します」
ユナがハーティに一礼して去っていったので、ハーティは寝台から体を起こして浴槽に向かおうとした。
「ちょっと待ってくださる?」
その時、未だ髪を梳かされながら横になっているフィオナに引き止められた。
「どうしました?フィオナ様」
ハーティが返事をすると、フィオナは胸元に浴布を当てながらゆっくりと起き上がった。
その様子を見たフィオナ付きの侍女は、ちょうど作業が終わったタイミングだったということもあり、無言で一礼をしながら去っていった。
「・・明日には『邪神』との決戦が控えています。そうなれば、こうやって二人きりでお話しする機会がないかも知れませんので、いまのうちにハーティ様へお尋ねしたい事があるのですわ」
「お尋ねしたい事、ですか?」
「ええ」
フィオナは暫くハーティの事を見つめると、意を決したように口を開いた。
「実のところ、ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思っているのですか?」
「え!?ど、どうって??それは・・まあ婚約者という・・」
「そんな客観的な事実を聞いているわけではありませんわ!!」
「・・・・・・」
すごい剣幕で話を遮られてしまい、ハーティは思わず口を噤んでしまった。
「・・・わたくしは、マクスウェル様の事をお慕いしておりますわ」
「っ!?」
フィオナがマクスウェルに好意を抱いていることは、流石のハーティも普段の様子から感じ取ってはいたが、面と向かって『慕っている』と言われてしまえば動揺を隠せなかった。
「わたくしは、お兄様・・オルクス皇帝陛下から王国との友好の為、政略的な意味でマクスウェル様と親しくなるように命じられましたわ」
「まあ・・それは、お兄様自身の『打算』もあるかもしれませんが・・」
「こほん・・とにかく、わたくしも王国でマクスウェル様と出会うまではお兄様と同じ程度の気持ちでしたわ。ですが、マクスウェル様とお会いして一目で恋に落ちてしまったのですわ」
「最初はマクスウェル様の見た目がわたくしの好みを射抜いているというきっかけだったのかもしれませんが、王国で滞在しながら共に過ごす事で、その人柄も素敵に思うようになりました」
「今となってはわたくしの中に、マクスウェル様は大きな存在感を持つようになってしまったのです」
「・・そこで、もう一度お尋ねしますわ。ハーティ様はマクスウェル様の事をどう思ってらっしゃるのですか?」
「それは・・・」
「もし、ハーティ様がマクスウェル様の事を思っている訳ではなく、『婚約者』の立場としてしかマクスウェル様の事を見ていらっしゃらないと言うのなら・・・」
言葉を止めたフィオナは、ハーティへ鋭い視線を向けた。
「どうか、ハーティ様からマクスウェル様との『婚約』を解消して、彼を解放してあげてください!」
「・・悔しいですが、マクスウェル様の気持ちはずっとハーティ様に向いていますわ。ですが、その気持ちが叶わないまま『婚約者』として居続けるのはとても辛いはずですわ。幸い、あなたにはそれができますわ。何たって『女神様』ですもの」
「そ・・そうよ、私はみんなに『女神様』って言われて・・だから私は普通の女の子として生きることなんて・・」
キッ!
「っ!?」
ハーティの言葉を聞いたフィオナは、更に非難するような厳しい視線を向けた。
「そうやって、『自分は普通の人間とは違うから』といって逃げないでください!!ハーティ様は周りから『女神様』と崇められてはいても、自分の意思があるのではなくて!?そうやって、これからも自分からこの世界に一線を引いて逃げていくつもりですの!?」
「・・いずれにしてもこの戦いが終わった後、この世界はあなたの事を放っておいてはくれませんわ。いろんな人間が、いろんな思惑をもってあなたに迫るでしょう」
「その時には、ハーティ様は必ず自分の身の振り方を考えないといけなくなりますわ」
フィオナは目を伏せながら話を静かに聞くハーティに悲しげな視線を向けると、寝台から降りて再びハーティの方へ振り返った。
「とにかく、ハーティ様はもう一度自分の『心』と向き合ってくださいな。人間でも、『女神様』であっても・・『心』を持つ事に変わりはありませんもの」
フィオナはそう言うと、踵を返して湯船の方へ歩き去っていった。
「私の・・・『心』・・」
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