転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
204 / 229
最終章 決戦!『デスティウルス』編

『神の紅雷』 〜シエラ視点〜

しおりを挟む
「『聖斧レガリア』の能力解放オーバードライヴ!その第一の能力は『空間転移』!!全力を出した私に、『距離』という概念はないのです!!」

 ズガァァァァァァン!!!

「!!?」

 空間転移能力で先回りしたシエラは、そのままリルヴァを『聖斧レガリア』で天高く打ち上げた。

 キィィィィィン!!!

 シエラは空を見上げてリルヴァが小さくなっていくのを眺める。

 そして、徐に自身の周囲を見渡した。

(・・・・ここなら、大丈夫!)

 周囲に集落や町が存在しないことを確認したシエラは、再び『聖斧レガリア』の空間転移能力を発動した。

 直後、シエラの視界が空間転移の能力によって一気に塗り替えられていく。

 そして、再び転移が完了したシエラの眼下には、青と緑で描かれた球体の大地惑星が広がっていた。

(綺麗・・・・)

 シエラはに思わず言葉を発するが、その言葉が周囲に届くことは無かった。

 何故なら、シエラが今存在する場所は地上から二千キロも上空の場所であり、言葉を伝えるための空気がからである。

 生物が存在できない絶対的な死の空間に漂うシエラは本来一瞬のうちに命を落とす筈だが、『女神』の能力によってほぼ宇宙空間といっても過言ではない場所でも平然としていた。

 ・・・・・・。

 そして、シエラは音のない世界で静かに『聖斧レガリア』を振りかぶった。

 そのままシエラは『聖斧レガリア』が持つ転移能力とは異なるを発動するが、彼女が現在その能力の効果を確かめる術はなかった。

(『聖斧レガリア』第二の能力は『質量増加』・・!)

 何故なら、『聖斧レガリア』は質量増加の能力でその重量を増しているが、そもそも今漂う場所には重力が存在しない為にシエラがその重さを体感することができないのである。

 そして、シエラは『聖斧レガリア』にありったけのマナを込めると、『極大浄化魔導』を発動させた。

 ・・・・・・。

(『聖斧レガリア』の纏った『極大浄化魔導』と転移能力、そして質量増加能力を組み合わせた、『邪神』を滅ぼす為の、絶対的な戦略級攻撃・・・・)

(もし、かつて『神界大戦』で数多の『邪神』を滅ぼしつくした』でも『邪神』を滅ぼせないとしたら・・私達に未来はない!)

(だから、『聖斧レガリア』!!!私に力を貸して!!!!)

 パァァァァァァァ!!!

 シエラの願いに応えるように、『聖斧レガリア』から聖なる光が激しく輝く。

「・・・・・!!」

 そして、シエラは光り輝く『聖斧レガリア』を振りかぶりながら全速力で地上へと降下しはじめた。

 ・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 ゴウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

『女神』の力により一瞬で音速の十倍を優に超える落下速度に到達したシエラは、そのまま大気圏に突入したことによる摩擦熱で赤熱した光の帯を生み出す。

 ゴウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

 赤熱したまま落下するシエラの視線の先には、猛烈な速度で地上が迫ってくるのが見える。

 そして、その先に小さくリルヴァの姿を捉えはじめた。

「うおおおお!破邪の神技!!『神の紅雷』!!」

 シエラは声高らかに叫ぶと、視界に捉えたリルヴァに向かって『聖斧レガリア』を力いっぱい振り下ろした。

「ごばあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“!!」

 シエラの『聖斧』が触れた瞬間、リルヴァは断末魔のような声を上げて木端微塵に弾け散る。

 もはや、リルヴァの肉体は散り散りとなってしまって視認できないのだが、なおも勢いの収まらないシエラは、とうとう地上へと衝突しようとしていた。

『神の紅雷』は浄化魔導を纏った『聖斧レガリア』の質量を増大させ、対象に向かって上空から猛スピードで振り下ろすという、非常にシンプルな『神技わざ』である。

 しかし、上空二千キロから音速の数十倍に達する速度まで加速して振り下ろされた『聖斧』が持つ運動エネルギーは天文学的な数字になる。

 それは、まさに巨大な隕石に匹敵する程のエネルギーを孕んで地上へ衝突しようとしていた。




 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・。





「・・・・一体、『邪神』はどうなったのかえ??」

「・・わからぬ・・新たな『女神様』が『邪神』諸共山々を消し飛ばしてから、『カームクラン』へ戻ってくる気配はなさそうであるから・・・既に討伐されたと思うのが妥当な筈であるが・・」

 一方、シエラが吹き飛んだリルヴァを追撃しに向かってからは、先ほどまで死力を尽くして戦っていたのが嘘のように『カームクラン』は静けさを取り戻していた。

 しかし、あまりにもあっさりリルヴァが排除されてしまったことで、『カームクラン』の人々は戸惑いを隠せないようであった。

「ん?なんじゃあれは!?」

 その時、ミウは遠くの空に雲を割りながら地上へと突き刺さるを見つけて指差した。

 その直後・・・。

 ピカッ!!

「「「うぐっ!?」」」

『カームクラン』にいる全ての人々の目を眩ますほどの猛烈な閃光がミウ達を襲う。

 そして、その閃光が収まった直後、空を真っ赤に染め上げるほどの巨大なキノコ雲状の爆発が天まで登った。

「「「っ!!?」」」

 それから三十秒程経った頃・・。

 チュドォォォォォォォォォォォン!!

 グラララッ!!

「「「うわあああああ!?」」」

 光に遅れてやってきた爆風による衝撃波と地震のような激しい揺れが『カームクラン』を襲った。

 ガラララ・・。

「なんじゃ!?なんなのじゃ!?この揺れは!?」

 ミウは躯体がしなってタイルを落とす家屋や地割れを起こして隆起する街道を見て、思わずその場にしゃがみながら慄いた。

「・・もしや、あの爆発は『神技』ではなかろうか?」

「・・・『神技』とな?」

 シゲノブが語り出した『神技』という言葉にミウが首を傾げた。

「うむ、かの『女神』が携えていた武器は間違いなく『神器アーティファクト』であろう。その『神器アーティファクト』の力を最大に発揮して放つ『神技』は一撃で一帯にいる『邪神』を程の威力を持つとされている」

「も・・もしそうだとしても『邪神』一柱に対して過剰攻撃が過ぎるのではないかえ?あの様子だと、爆心地から数十キロに渡る大地は無事ではすまぬと思うのじゃが・・・」

「まあ・・間違いなく地図の海岸線は描き変えなければならんだろうな・・」

「なんという馬鹿げた威力じゃ・・・」

 シゲノブの言葉を聞いて、ミウは再び頭を抱えた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...