転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
210 / 229
最終章 決戦!『デスティウルス』編

『臨界』 ~『帝都リスラム』視点~

しおりを挟む
『おおおおおおお!!』

「ちっ!何度も同じ手に乗るかよ!!」

 ランスを振り下ろしたクウォリアスを見たヅヴァイは、爪をクロスさせて防御態勢で構える。

『ふん!案の定ようだな!!!『邪神』とて、私の積み上げてきた実践経験を上回ることはできぬのだ!!』

 ダァーン!!!!

 そう、クウォリアスがランスを振り下ろしたのはであり、その実は至近距離での腕部砲による攻撃が目的であった。

「ぐあぁぁぁ!!!」

 そして、至近距離で真面に砲弾を食らったヅヴァイは、激しい爆風によって一瞬怯んでしまう。

 長年の実践経験において、が命取りであることを身を以て知っていたクウォリアスは、己の勘だけを頼りに爆風の中でヅヴァイに向かって『リデューシングランス』を突き立てた。

 ズブシュウ!!!!

「ごぶふっ!?」

 そして、クウォリアスの狙いは正確にヅヴァイへと命中し、ランスに付与された『還元』の効果によって『防御魔導』を無視しながらヅヴァイの胴体を一気に貫いた。

 十メートルを優に超えるランスはヅヴァイを貫くことで胴体に大穴を穿ち、そのままの勢いで地面に縫い付ける。

 シュウウウウウウ・・・・・。

「あぐ・・あ!?」

 直後、胴体の大半を失ったヅヴァイは何が起こったのかわからない様子でうめき声をあげた。

 そして、突き立てられたランスに付与された『防御魔導』の効果もあるのか、大きく損傷した肉体の再生に時間がかかっているようであった。

『ぬぅん!!!』

 ヅヴァイを地上に縫い付けたことを千載一遇のチャンスと悟ったクウォリアスは、唸り声をあげながら自身の機体胸部に手をかける。

 バキィィィ!!!

 直後、機体の『防御魔導』が解除されたことを確認すると、クウォリアスは胸部の装甲を乱雑に取り払った。

 ズゴオォォォォォォ・・・・。

 そして、装甲が取り払われた胸部の中から、唸るような駆動音を響かせる発導機が露わとなった。

「う・・ぐ・・てめぇ・・正気か!?」

 突然自身の機体に手をかけたクウォリアスに、ヅヴァイは驚愕の表情を浮かべる。




 ・・・・・・。

 ゴゥゥゥゥン・・・・。

 ビィービィービィー!!!

 一方、コクピットでは胸部装甲が大破したことにより、警告を知らせるけたたましいアラーム音が鳴り響いていた。

「ふ・・・『正気』か・・・だと?」

「私は今まで四十年以上の人生を軍人として生きてきた中、何度も死と隣り合わせの戦場に立たされてきた」

「そして、今・・・が目の前に迫っている」

「そんな中・・・今の私は『正気』を保っていると確信しているっ!!!」

 ギュイ・・・。

 クウォリアスは操縦レバーを操作して、光魔導スクリーン越しにマニピュレーターに持った『同胞』の『発導機亡骸』を見た。

「・・・貴様の敗因は、例え命を失おうとも『仲間』を救う為に全力を出そうとする我々『人類』をことだ!!!!」



 ・・・・・・・。


 ズズズズ・・・。

「なにを・・・戯けたことを・・・俺は・・・もうすぐ再生する・・・・」

 ヅヴァイは身を再生しながら苦し気に呟くが、クウォリアスはそれを無視して語りだした。

『ヅヴァイよ・・・貴様は私の生涯で一番の強敵であった』

 クウォリアスは『ラピス』の頭部をヅヴァイへ向けながら、発導機を持った腕部をゆっくりと持ち上げる。

「おま・・何をするつもりだ・・・!?」

 その様子を見るヅヴァイは、未だクウォリアスが何をしようとしているのか掴めないでいた。

『なあ、ヅヴァイよ・・帝国貴族である私は、正直『女神教』というのに詳しくはないのだが・・・』

『だがな・・・もしも、だ。もし『失われた神界ヴァルハラ』があるというのなら・・ではないか・・っ!!!』

「っ!?」

『はぁぁぁぁぁ!』

 ガキィィィン!!!

 そして、クウォリアスは声高く叫び声をあげると、手に持っていた発導機を自身の機体胸部に押し当てた。

 キィィィィィィィ!!!!!!

 直後、発導機同士の連鎖反応が始まり、周囲に膨大なマナが発生し始める。

「な・・・なんだ!?なんなんだよぉ!?このマナの光はぁぁぁぁ!!!??」

 眼が眩むほどの白銀の光に包まれる中、間もなく完全再生しようとしたヅヴァイは叫び声をあげた。

『・・・っ!今だっ!!!』

『う、うわぁぁぁぁ!!!!』

 ダァーンダァーンダァーン!!!!

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 そして、クウォリアスの指示を受け、『騎士ランナー』のラピスや『人造ゴーレム』達がありったけの火器をヅヴァイに向けて撃ち込む。




 ・・・・・・・・。

 ゴウゥゥゥゥン・・・・。

 クウォリアスはすべてがスローモーションになるコクピットで、急速にマナ出力を上げて出力値が限界を振り切ったコンソール画面に目を向ける。

 そして、白銀色に染まる光の中で、静かに瞳を閉じた。

(陛下・・・そして『邪神』と戦うすべての人達・・・・)

(そして、『女神ハーティルティア』とそれに連なる『勇者』達よ・・あとは、・・・!!)

 直後、クウォリアスの脳裏に長い人生の歴史が走馬燈のように浮かび上がってくる。

 その、次々と移り変わっていく光景の最後に映ったのは、自身の愛する大切な家族達であった。



「うおぉぉぉぉ!!!『魔導帝国オルテアガ』ばんざぁぁぁぁぁぁい!!!!!」




 そして、クウォリアスが全力で叫ぶと同時に、二機のコアは『臨界』を迎えた。







 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・。



 ピカッ!!!!

 ・・・・・・・。

 チュドォォォォォォォォォン!!!!!

 コアが『臨界』を迎えたことで、爆発的なマナが周囲に発生して『帝都』を白銀の光に染め上げる。

 それと同時に、周囲数百メートルを巻き込むほどの大爆発が発生した。

 ドォォォォン!!!

「くうっ!?凄まじい爆発だ!!!」

「み、耳が破れるんだな・・・!?」

「マナの・・・光・・・!?」

 その爆発と光は、『帝都』中で観測される程大規模なものであった。

 オォォォォォォォン・・・・。

 そして、ようやく爆発が収まった頃、クウォリアスとヅヴァイが戦っていた戦場は赤熱した更地となって熱気を帯びていた。

 ズゴォォォォ・・・。

『・・・・閣下』

 ゴウゥゥゥゥン・・・。

『・・・・・』

 先ほどまで決死の戦いをしていた『騎士ランナー』達は、全てが無くなった大地を静かに見下ろしていた。




 それは、人類が自分たちの力だけで初めて『邪神』を完全に滅ぼした瞬間であった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...