転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
214 / 229
最終章 決戦!『デスティウルス』編

希望をもたらす者 ~『王都イルティア』視点~

しおりを挟む
「ななな・・・」

「ななな?」

「何者ですの!?あなたは・・・!?『おねえさま』以外にも『女神』が復活していたという事ですの!?」

 リリーシャは『びしっ!』とシエラを指差しながら狼狽える。

 そして、リリーシャの視線がシエラの持つ『聖斧』に向いた瞬間、その瞳が大きく見開かれた。

「そ・・・その斧は・・・もしかして・・・っ!!!?」

 リリーシャは『聖斧』を見た瞬間に、愛らしい顔を真っ青に染め上げて冷や汗をかき始めた。

「いや・・本当に何をんですか・・バハムス様・・『邪神』が本気で狼狽えてますよ・・」

「あなた・・・よく見たらとっても愛らしい顔をしていますわね。それはもう、『おねえさま』に匹敵するくらい可愛らしいですわ」

「・・はあ、それはどうも・・・」

「っ!そんな愛らしいあなたが何てもってるんですの!?確かその『聖斧』を持っていたのはガチムチゴリゴリの『男型』でしたよね!?」

「ガチムチゴリゴリ・・」

「ああっ・・身の毛がよだちますわっ・・!!それを見ると、リリの可愛いお顔がジャムのように潰されながら滅ぼされた時を思い出しますわっ!!」

「その例えやめて!!?」

 何せ、ジャムと言えば、『暁の奇跡亭』で振る舞われる朝食に必ず出る定番品である。

(というか、バハムス様・・いくら『邪神』と言え、あんな可愛らしい身なりの女の子に容赦ないですね・・)

 リリーシャは相変わらず顔を青ざめさせながら『魔剣』のきっさきをシエラに向けた。

「決めましたわ!リリの名は『邪神リリーシャ』!!過去の屈辱は、あなたのこうべを愛でる事で晴らさせてもらいますわ!」

 リリーシャの口上に対抗するように、シエラも『聖斧』の先を向ける。

「私は『女神教会聖騎士』シエラ!!その名にかけて、あなたを必ず滅ぼします!!」

 ドキュウ!!

 ガキィィィィン!!

 直後、二柱の『女神』と『邪神』が激しく衝突する。

「っきゃあぁぁぁ!」

 キィィィン!!

 スガァァァン!!

 しかし、体格と武器の重みによる差によって打ち負けたリリーシャが弾き飛ばされて、周囲の建物を巻き込みながら地面へと突き刺さった。




 ・・・・・・。

 ゴウゥゥゥン・・・。

「おぉ・・さすが『聖騎士』であらせられる。あの『邪神』の剣戟をいとも容易く退けるとは・・・」

 ラナウェイは二柱の戦いを見て感嘆の声を上げていた。

「ならば、私は『聖騎士』様が憂いなく戦えるようにお力添えするのみ!!」

 ちょうどその時、ラナウェイの元に『アンデッド』と交戦中の『騎士』からエーテル通信が入ってきた。

『ラナウェイ様!ご無事ですか!?』

「ああ・・なんとか・・な。衝突の影響で所々魔導式の発動に支障が出ているが、大した問題ではない」

「それより、私も『アンデッド』を討つ。『聖騎士』様があの『邪神』を相手にしている限り、問題はあるまい」

『了解!』

「さあ、女神ハーティルティア様とシエラ様の為に、『王国騎士団』の意地を見せてやろうではないか!」


 ギュイッ!


 ズゴオォォォォ!

 ラナウェイは不敵に笑うと、地上に蔓延る『アンデッド』に向かってランスを振り下ろした。




 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。




「陛下!たった今吉報が入りました!かの『邪神』を討伐する為、『女神教会』の『聖騎士』シエラ様が参戦なさいました!!」

「おお!それは誠であるか!!」

 一方、『白銀の神殿プラチナ・パレス』で祈りを捧げる人々にもシエラ参戦の情報が伝わってきた。

「女神ハーティルティア様が力を授けたシエラ様がいらっしゃったのならば、『邪神』に遅れをとることはありますまい」

 総司祭は『最敬礼』をしながら涙を流していた。

「どうか『王都イルティア』を頼みますぞ・・若き『女神』の戦士よ・・」

 そして、ジル国王は本礼拝堂の屋根に描かれた『女神神話』における最終決戦を模した絵画を仰ぎ見ながら呟いた。




 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・。




 ガラララ・・・。

「くっ!このリリが正面からのぶつかり合いで競り負けるなん・・」

 リリーシャは悪態を吐きながら瓦礫の中から起き上がろうとした。

「・・・・・」

 しかし、リリーシャの目の前には既に『聖斧』を振りかぶったシエラがいた。

「っ!?」

 ドォォォォン!!

 リリーシャは、その脳天をかち割らんばかりに振り下ろされた攻撃を全力で回避する。

「っ!?あなた!シエラとか言いましたわね!!?ちょっと容赦なさ過ぎません!?」

 ドゥン!!

 シエラは狼狽えるリリーシャを無視してゆらりと『聖斧』を振りかぶり直すと、地を蹴って再び肉薄した。

「ハーティさんに『『邪神』は見つけた瞬間に容赦なく、完膚なきまでに滅せ。さもなくばいくらでも増えて復活する』と教わりましたから!!」

 ガキィィィィン!!

「っ!?そんな、『邪神リリ達』を油虫みたいに言わないでくださる!?」

 ガキィィィィン!!

「っく!力ではせり負けますわね・・ならっ!!『はやさ』なら如何かしら!!」

「『魔剣オブシディアン・アルハザト』の力、思い知るのです!神技!『スラシング・カルテット』!!」

 直後、リリーシャは四柱に分身しながら『魔剣』を振るった。

 カッ!!

 シエラはリリーシャの動きを見切るために集中する。

 オオオオ・・・・。

 シエラが集中した意識の中では、全ての音がなくなり、まるで時間がスローモーションのように見えた。

 そして、その世界の中では分身しているはずのリリーシャがに見えた。

「そこです!!」

 シエラは、その一柱に狙いを定めて『聖斧』を振るった。

 ズガァァァァン!!

「っきゃあぁぁぁぁ!」

 瞬間、リリーシャは再び競り負けて、きりもみしながら空高く打ち上げられた。

 しかし、リリーシャは空中で姿勢を持ち直してなんとか踏みとどまった。

 ブォン!!

 一方、シエラは表情を変えないまま、再び『聖斧』の先をリリーシャへ向けた。

「『四重奏カルテット』と言って、その実は目にも止まらぬ速度による四連撃・・そんなは残念ながら私には通用しません!伊達にユナさんの訓練を受けたわけじゃありませんから!!」

「くっ!!・・・流石は『聖斧』を振るう者、とでも言いましょうか・・ならば!ならどうです!!」

 リリーシャは悔しさに顔を歪めると、自身の体から薔薇の蔓のようなものを伸ばし始めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...