転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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最終章 決戦!『デスティウルス』編

無双斬舞 ~『王都イルティア』視点~

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 スズズ・・・。

 リリーシャから伸びた薔薇の蔓は、次第に屈強な戦士の腕のような形に姿を変えた。

「ふふふ・・・」

 リリーシャは不敵にわらいながら、両腕で『魔剣』を天高く掲げる。

 そして、『魔剣』を握る両手に蔓の腕が添えられた。

 ゴゴゴゴ・・・。

「コォォォォ・・・」

 リリーシャは、それから一呼吸して合計になった腕をゆっくりと下ろす。

 すると、それぞれの腕には『魔剣』が握られていた。

 それら四本の腕を巧みに操って剣舞を披露しながら、リリーシャは妖しく微笑んだ。

「リリの『神技わざ』を子供騙しと仰るなら、本当の『四重奏カルテット』など如何でしょうか?」

 ヒュンヒュン・・・。

 四本が繰り出す剣舞は既に常人には肉眼で視認できない速度で振るわれており、周囲には激しい旋風が巻き起こっていた。

「さあ、行きますわよっ!神技!『瞬絶』!!」

 ドゥン!!!

 リリーシャは高速で四本の『魔剣』を振るいながら、シエラへと肉薄する。

 シュバババ!!!!

 ガキキキキキィィン!!!

 対して、シエラは再び意識を集中しながら、リリーシャによって繰り出された斬撃を『聖斧』で受け止める。

 ピッ!

「っ!?」

 しかし、四本となった高速の太刀筋を全て見極めることは困難で、受け漏らした斬撃によってシエラの体の至る所に切り傷が生まれる。

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 そのままではジリ貧となって切り刻まれるのが明らかだと悟ったシエラは、力任せに『聖斧』を振りぬいた。

 ドガァン!!

「ちっ!!」

 咄嗟に振るわれた『聖斧』に弾かれたリリーシャは、悪態をつきながらシエラとの距離を取る。

「はあはあ・・・」

 シエラは力技で何とかリリーシャの攻撃を退けたが、全身から滴る血が彼女の体を痛々しく染め上げた。

「・・・・」

 スッ・・プスッ!

 パァァァァ・・・。

 シエラは間髪入れず、ほむらを助けたときに使った神白銀プラティウムの楔を慣れた手つきで体に突き刺して傷を回復した。

「・・・リリの『神技』を力技で退けるとは・・・さすがは『女神』といったところですわね」

「はあはあ・・・」

(今回は何とか凌げたけど、そう何度も力業でどうにかするわけにはいかない・・・何か策はないのかな・・)

 シエラは瞳を閉じて必死に『前世』の記憶を遡る。

 すると、かつて自分が慕っていた『バハムス』の雄姿が幾つも瞼裏に浮かび上がった。

(思い・・・出したっ!!)

 そして、シエラは呼び覚まされた記憶に活路を見出した。

「まさか『瞬絶』を受け止めるとは思いませんでしたわ・・・どうやら、シエラ様相手に手加減をしている場合ではないようですわね・・」

 リリーシャはため息をつきながら四本の腕を再び構える。

 相対するシエラもまた、ゆらりとした所作で『聖斧』を構えながらリリーシャの動きに集中した。

(・・・大丈夫、『神界』でバハムス様を見続けていたもの・・・必ず、私にはできる!!!)

「さあ、行きますわよ!『神界』で『最速』の名をほしいままにして、幾多もの『神』を屠り続けてきたリリの剣を受けて滅びるのです!!」

 ギュン!!!

 リリーシャは目にも止まらぬ速度でシエラに肉薄すると、先ほどと同じく四柱の姿に分裂した。

「神技!!『スラシング・カルテット・瞬絶』!!!!」

 四本の『魔剣』を携えたリリーシャが分裂することにより、常人には合計十六本による斬撃がシエラを襲っているように見える。

 四本の斬撃による『瞬絶』を受け止めきれなかったシエラにとって、それは命を刈り取る絶対的な『絶望』となるはずである。

 しかし、その斬撃がシエラに届く直前。

「・・・・っ!!」

 シエラはカッと瞼を開いた。

「神技!!『無双斬舞』!!!」

 ズガガガガガガ!

「っ!?」

 シエラは自身に迫る十六本の斬撃を、『聖斧』によって全て受け流した。

 手首を使った縦回転と体全体を駆使した横回転によって暴風を巻き起こしながら振るわれるシエラの剣戟は、まさに美しい『演武』のようであった。

「はあぁぁぁぁ!!」

 ガキィィン!!

「くっ!?」

 シエラの回転によって重みを増した斬撃を受け、リリーシャは後方へ押しやられながら苦痛の表情を浮かべる。

 そして、リリーシャが怯んだことにチャンスを見出したシエラは『聖斧』を天高く掲げた。

「うおぉぉ!!『聖斧レガリア』!!私の『全力』!!!『邪悪』な者よ!その身に受けて滅びなさい!!」

 ガシャコ!!!

 キィィィィッィ!!!

 直後、『聖斧』が変形して膨大なマナがシエラを包み込む。

「『能力解放オーバードライヴ』!!!」

「くっ!!リリの『神技』が通用しない!?それに『能力解放オーバードライヴ』!?は・・・!!」

 リリーシャは光り輝くシエラの『聖斧』を見て、愛らしい顔を青ざめさせながら慄く。

 しかし、その言葉が最後まで発せられることはなかった。

 リリーシャは突如、に感じた気配に視線だけを動かす。

 その目前には、シエラが振り下ろした『聖斧』が迫っていた。

「神技!『無双斬舞』!!!」

「っ!?そんな!このリリーシャの速度をということですの!!?」

 スギャギャギャ!!!

 リリーシャはとにかく自身が持つ最大の速度によってシエラの攻撃を迎え撃つ。

 ズシャズシャズシャズシャ!!

 しかし、背後からの攻撃に対してリリーシャは全てを防ぎきることが出来なかった。

「ごふっ!!」

 シエラの剣戟によってズタズタに切り刻まれたリリーシャは小さな口から鮮血を吹き出す。

「リリーシャ!あなたの剣が『最速』というのなら!!!『距離』という概念に囚われない私の剣は『はやさ』すら超越する!!!」

「はぁぁぁぁ!!!」

 ドゴォ!

「ぐはぁぁぁぁ!!!」

 キィィィン!!!ズガァァァァァン!!!!

 そして、止めに大きく振りぬいた『聖斧』の直撃を受けたリリーシャは、そのまま猛スピードで地上へと突き刺さった。

「・・・・・・」

 今が最大のチャンスと悟ったシエラは地上に刺さったリリーシャに目もくれず、静かに瞳を閉じながらマナを収束し始める。

「すうぅぅぅ・・・」

 数秒ほどして周囲に十分なマナが収束されたことを確認したシエラは、深く息を吸いながら『聖斧レガリア』を触媒にして『極大浄化魔導』を発動し始めた。

「破邪の神技!『セイント・レイ』!!」

 シエラが魔導を発動した直後、『王都イルティア』上空の雲が割れ、巨大な聖なる光の柱が降り注ぐ。

「あ“あ”あ“あ”あ“!!!」

 そして、眩い光で埋め尽くされた世界の中で、リリーシャの断末魔のような声が響いた。


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