侯爵家を守るのは・・・

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2.エルシーという妹

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 2年後ジャクリーン夫人はまた子どもを産んだ。

 今度は輝くような金髪と大きくパッチリとしたエメラルドの瞳を持ったジャクリーン夫人によく似た女の子だった。

 その子を見るなりジャクリーン夫人は
 「なんて美しいの!まるで天使だわ!」
と抱きしめた。

 クラリスを産んだ時、
 「あんなに痛い思いをして産んだのにあのババァのミニチュアが出てくるなんて最悪だわ!」
と言って不機嫌さを隠そうともしなかったジャクリーン夫人がようやく機嫌を直してくれたのでラッセル侯爵はホッとした。

 それからジャクリーン夫人はエルシーと名付けたこの次女を猫可愛がりに可愛がった。

 欲しがるものは金に糸目をつけずに買い与え、甘やかしまくって育てた。
 
 乳母まかせでほとんど無視のクラリスとは天と地ほどの差であった。

 ラッセル侯爵も最初は両親と妹が仲良く過ごしている姿を寂しそうに見つめるクラリスに胸が痛んだが、侯爵がクラリスに優しくするとジャクリーン夫人が余計にクラリスにつらく当たるので無視するようになった。

 エルシーも成長するに従って姉を見下し、嫌がらせをするようになった。

 クラリスの持ち物を
 「ちょうだい!いいでしょ?」
となんでも奪う。
 
 クラリスが拒むと大げさに泣いて
 「ひどい!お姉様が意地悪するわ!」
と大騒ぎする。

 するとジャクリーン夫人がやってきて
 「クラリス!なんて意地悪なの!お姉さんでしょ?少しは妹に優しくなれないの?」
と怒る。

 「これは叔父様が誕生日に贈ってくださった私の誕生石のネックレスです。あげられません。エルシーの誕生日にも同じ物をいただきましたよね?」
 なんて口答えしようものなら頬を叩いて何時間もしつこく怒るのだ。

 やがてクラリスはエルシーが「ちょうだい!」と言い出すと黙って渡すようになった。

 そのせいでクラリスの持ち物はほとんどエルシーに取られた。

 クラリスの部屋は粗末なベットと机とイスがあるだけでガランとしていた。
 ドレスも少しでも可愛いものはエルシーに取られたので黒やグレーの地味なワンピースが数枚ほどしかなかった。
 アクセサリーもぬいぐるみも、少女らしいものは何一つなかった。

 その上ジャクリーン夫人の命令で毎日朝から晩までメイド達と一緒に働かされていたので来客が来てもクラリスが侯爵家の長女だと気付く者はいなかった。
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