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4.王立学院へ
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ある日、ラッセル侯爵家は朝からエルシーが泣きわめいていた。
クラリスが自分で誕生花とイニシャルを刺繍したかわいいハンカチを持っているのを見て、いつものようにエルシーがねだったのだ。
「これは私の誕生花とイニシャルよ。あなたが持っていてもしょうがないでしょ。」
クラリスがそう言うとエルシーはビービー泣いて、
「お姉様だけこんな可愛いものを持っているなんてズルいわ!」
と、わめいた。
「あなたも自分で刺繍すればいいでしょ?」
「刺繍なんてできるわけないじゃない!私をバカにしているのね!
お母様!お姉様がまた意地悪するわ!」
結局いつものようにジャクリーン夫人がクラリスの頬を叩いてハンカチを取り上げて終わったが、ラッセル侯爵は毎日毎日聞かされるエルシーの泣き声やジャクリーン夫人の金切り声にうんざりした。
「旦那様、お疲れのようですね。いっそうのことクラリス様を王立学院に入学させてはいかがでしょうか?」
そう提案したのはラッセル侯爵家に先祖代々仕える忠実な執事のエドウィンだ。
「王立学院には寮もございますから寮に入れればよろしいかと。
争いの原因のクラリス様がいなくなれば姉妹喧嘩も起きませんし、奥様がお怒りになることもありません。
クラリス様を厄介払いすれば御一家は心穏やかに過ごせるのでは?」
「それは名案だな。早速手配してくれ。」
「かしこまりました。すぐに入学手続きをいたします。」
そうしてすぐにクラリスの王立学院入学が決まり、家を出ていく日になった。
一応ラッセル侯爵は見送りに出てきて
「ラッセル侯爵家の名を汚さぬようにがんばりなさい。」
と、珍しく父親らしいことを言った。
エルシーはニヤニヤ笑いながらやってきて、
「お姉様がいなくなるなんて本当にうれしいわ。
もう帰ってこなくていいからね。手紙も読まないから送ってこないでね。」
と意地悪く言った。
ジャクリーン夫人にいたっては見送りにも出てこなかった。
こうしてクラリスは家から追い出されるように王立学院に入学した。
それから学院を卒業するまでクラリスが家に帰ってくることはなかった。
ラッセル侯爵家は久しぶりの平穏が訪れた。
クラリスが自分で誕生花とイニシャルを刺繍したかわいいハンカチを持っているのを見て、いつものようにエルシーがねだったのだ。
「これは私の誕生花とイニシャルよ。あなたが持っていてもしょうがないでしょ。」
クラリスがそう言うとエルシーはビービー泣いて、
「お姉様だけこんな可愛いものを持っているなんてズルいわ!」
と、わめいた。
「あなたも自分で刺繍すればいいでしょ?」
「刺繍なんてできるわけないじゃない!私をバカにしているのね!
お母様!お姉様がまた意地悪するわ!」
結局いつものようにジャクリーン夫人がクラリスの頬を叩いてハンカチを取り上げて終わったが、ラッセル侯爵は毎日毎日聞かされるエルシーの泣き声やジャクリーン夫人の金切り声にうんざりした。
「旦那様、お疲れのようですね。いっそうのことクラリス様を王立学院に入学させてはいかがでしょうか?」
そう提案したのはラッセル侯爵家に先祖代々仕える忠実な執事のエドウィンだ。
「王立学院には寮もございますから寮に入れればよろしいかと。
争いの原因のクラリス様がいなくなれば姉妹喧嘩も起きませんし、奥様がお怒りになることもありません。
クラリス様を厄介払いすれば御一家は心穏やかに過ごせるのでは?」
「それは名案だな。早速手配してくれ。」
「かしこまりました。すぐに入学手続きをいたします。」
そうしてすぐにクラリスの王立学院入学が決まり、家を出ていく日になった。
一応ラッセル侯爵は見送りに出てきて
「ラッセル侯爵家の名を汚さぬようにがんばりなさい。」
と、珍しく父親らしいことを言った。
エルシーはニヤニヤ笑いながらやってきて、
「お姉様がいなくなるなんて本当にうれしいわ。
もう帰ってこなくていいからね。手紙も読まないから送ってこないでね。」
と意地悪く言った。
ジャクリーン夫人にいたっては見送りにも出てこなかった。
こうしてクラリスは家から追い出されるように王立学院に入学した。
それから学院を卒業するまでクラリスが家に帰ってくることはなかった。
ラッセル侯爵家は久しぶりの平穏が訪れた。
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