伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

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3.父・シリウス

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「そうか……聞き手の勘違いならば良いが……」

 私は学園から帰り、書斎で父に、シオンから聞いた私の婚約話を伝えた。

「一応聞きますが、私に伝えずに婚約話を進めていないですよね?」
「そんなことをするわけがないだろう。何よりもまず、本人に意思を聞く」
「ですよね、分かりきったことを聞いてすみません」

 思っていた通り、私に伝えずに父は婚約話を進めていなかった。
 父は母との結婚が決まった時、本人たちに知らされずに、勝手に話が進んでいて、気がついたら結婚式だったらしい。それは他の家でも珍しいことではないが、父と母は、どうせ結婚するにしても、相手のことを知ってから結婚式をしたかったと言っていた。もっとお互いのための式にしたかったらしい。そんな父が、私に無断で婚約話を進めるわけがない。

「ダリアスを呼んでくれ。最近は私より、ダリアスの方が外の仕事をしているからな。私が聞いていないことも、ダリアスなら知っているかもしれない」
「承知しました」

 父に指示された執事のウォレスは書斎を出て、別の部屋にいる兄を呼びに行った。

「そういえば、レオン殿下の噂を聞いたよ……」

 父の口から、レオンの名が出てくるとは思っていなかった。

「女遊びが激しい王子だなんて、昔の彼からは想像できないな」
「一応注意はしてるんですけどね……」
「三男だし、学園の生徒なら、身元がはっきりとしている良い家の令嬢だから、もし妊娠させても、妃にすれば良いと王は考えているのかもな……」
「……」
「まあ、そうだったら楽観的すぎるか」

 王が好きにさせておけと側近に伝えたのは、父の言う通りだと思った。
 
「そう暗い顔をするな……私や、信用できる者の前ならば良いが……」
「そうですね……」

 少しの表情で大きな問題になってしまうかもしれない。そんな世界を、私たちは生きている。

 コンコンコンと、ドアがノックされる音がした。

「入れ」

 兄とウォレスが入ってきた。兄は私とほぼ同じ容姿をしている。母譲りのピンクベージュの髪と、父譲りのはちみつ色の瞳。背丈が少し私の方が大きいのと、目の形が違うくらいだ。兄の目は母に似て丸く、私の目は父に似て切れ長である。

「ウォレスに大まかな話は聞きました。ただの噂だと気にはとめていなかったのですが、2ヶ月ほど前の晩餐会で噂をしている方を見かけました」
「2ヶ月前といえば、ケトゥリー国の皇子を招いての晩餐会か」
「はい。ユリウスと、セレーナ嬢が婚約が決まったと……ただの噂だということと、正式に決まったことがあれば公表すると言っておきましたが……」
「そうか……」

 セレーナ嬢……。うちと関係の深い子爵家、メッツァル家の長女だ。たしかに、私の結婚相手としておかしくない相手だ。
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