伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム

文字の大きさ
5 / 47

5.王族の手袋

しおりを挟む
 父の書斎を2人で出て、私は水を飲むためにキッチンに向かおうと一歩を踏み出す。すると、ダリアスが肩を組んできた。私がそのまま歩くと、ダリアスもそのまま歩いた。少し歩きにくい。

「なに?」

 すぐ近くにある顔を見ると、ニヤリとからかうような目と視線が合った。

「お前、王族が皆、手袋をしている理由を知っているか?」
「それぐらい知っている。王族が人前で手を出すのは、裸と同義だからだろ?」
「だから、なぜ裸と同義なのかという理由だよ」

 王家の人間は皆、学園に入学した12歳の時からずっと、人前では手袋を着用する。それはレオンも例外ではなく、入学してから、彼の素手を見たことがない。

「高貴な存在だからだと思っていたけど……違うの?」
「皆そうだと思っている。だが、真の理由は、私を除いて王族しか知らない」
「なぜ兄さんが知っているんだ?」

 ダリアスは私の耳元に顔を寄せ、囁く。

「王室を離脱した、現国王の弟君が口を滑らせてしまってね。その場にいたのが、私だけで良かったよ」

 そう言うと、顔をさきほどと同じに離し、ニコッと笑った。現国王の弟君が口を滑らせたというよりも、ダリアスがそう仕向けたのだと、イタズラっ子のような表情を見れば分かる。敵に回したくないタイプだ。

 ダリアスは私の肩を抱きながら、強引に歩き、私はされるがまま、2人で資料室に入った。ダリアスは身体を離して、資料室のドアを背に寄りかかり、腕を組んだ。この部屋の出入り口はそのドアしかない。つまり私は、ダリアスが退かなければ資料室から出られないということになる。

「聞きたいか?」
「せっかくのお誘いだけど、聞かないでおくよ」

 僕がそう言うと、ダリアスは口をムッとへの字にして、明らかに不満だという顔をする。

 言いたくて仕方がないのか? 

 国王の弟君が口を滑らせて聞いてしまった(というていの)ダリアスは仕方ないにしても、それを私に伝えれば、言ったダリアスも、聞いた私も、罪になるかもしれないのに。

「2人で黙ってれば大丈夫だって」

 どうしても言いたいらしいダリアスの態度に、思わず笑ってしまった。

「フッ……貴族らしからぬ発言だな」
「今は貴族云々の前に、ただの兄弟だ。この情報はお前のために聞き出したんだよ」
「……私のため?」

 王族が手袋をしている理由を聞き出すことの何が私のためだと言うのだろうか。意味が分からない。
 というか兄さん、聞き出したと言ってしまっているな。

「まあ……私よりも、レオン殿下に聞いた方が良いだろう。きっと殿下は顔を真っ赤にする」

 ダリアスはククッと笑った。
 女遊びをしているレオンが、今さら顔を赤くすることなんか、あるのだろうか。

「いつか、素手を見せてもらえる機会が訪れると良いな」
「…………」

 

 どうやら兄には、私の気持ちがお見通しのようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた

胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。 失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……? 「俺たち付き合ってたないだろ」 「……本気で言ってるのか?」 不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け ※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします

【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布
BL
鉄血の重執着ストーカー騎士団長×無自覚もふもふ(聖獣使い)な元雑用係

ルピナスの花束

キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。 ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。 想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。

色欲も時代には勝てないらしい

ちき
BL
前世で恋人だった運命の人に、今世では捨てられてしまった祐樹。前世で愛してくれた人は彼以外誰もいないのだから、今後僕を愛してくれる人は現れないだろう。その事を裏付けるように、その後付き合う人はみんな酷い人ばかりで…………。 攻めがクズでノンケです。 攻め・受け共に、以外とのキスや行為を仄めかす表現があります。 元クズ後溺愛×前世の記憶持ち

勇者パーティーを追放された「生きた宝箱」、無愛想な騎士団長に拾われて宝石のように愛でられる

たら昆布
BL
勇者パーティーを追放された魔法生物が騎士団長に拾われる話

処理中です...