伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

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5.王族の手袋

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 父の書斎を2人で出て、私は水を飲むためにキッチンに向かおうと一歩を踏み出す。すると、ダリアスが肩を組んできた。私がそのまま歩くと、ダリアスもそのまま歩いた。少し歩きにくい。

「なに?」

 すぐ近くにある顔を見ると、ニヤリとからかうような目と視線が合った。

「お前、王族が皆、手袋をしている理由を知っているか?」
「それぐらい知っている。王族が人前で手を出すのは、裸と同義だからだろ?」
「だから、なぜ裸と同義なのかという理由だよ」

 王家の人間は皆、学園に入学した12歳の時からずっと、人前では手袋を着用する。それはレオンも例外ではなく、入学してから、彼の素手を見たことがない。

「高貴な存在だからだと思っていたけど……違うの?」
「皆そうだと思っている。だが、真の理由は、私を除いて王族しか知らない」
「なぜ兄さんが知っているんだ?」

 ダリアスは私の耳元に顔を寄せ、囁く。

「王室を離脱した、現国王の弟君が口を滑らせてしまってね。その場にいたのが、私だけで良かったよ」

 そう言うと、顔をさきほどと同じに離し、ニコッと笑った。現国王の弟君が口を滑らせたというよりも、ダリアスがそう仕向けたのだと、イタズラっ子のような表情を見れば分かる。敵に回したくないタイプだ。

 ダリアスは私の肩を抱きながら、強引に歩き、私はされるがまま、2人で資料室に入った。ダリアスは身体を離して、資料室のドアを背に寄りかかり、腕を組んだ。この部屋の出入り口はそのドアしかない。つまり私は、ダリアスが退かなければ資料室から出られないということになる。

「聞きたいか?」
「せっかくのお誘いだけど、聞かないでおくよ」

 僕がそう言うと、ダリアスは口をムッとへの字にして、明らかに不満だという顔をする。

 言いたくて仕方がないのか? 

 国王の弟君が口を滑らせて聞いてしまった(というていの)ダリアスは仕方ないにしても、それを私に伝えれば、言ったダリアスも、聞いた私も、罪になるかもしれないのに。

「2人で黙ってれば大丈夫だって」

 どうしても言いたいらしいダリアスの態度に、思わず笑ってしまった。

「フッ……貴族らしからぬ発言だな」
「今は貴族云々の前に、ただの兄弟だ。この情報はお前のために聞き出したんだよ」
「……私のため?」

 王族が手袋をしている理由を聞き出すことの何が私のためだと言うのだろうか。意味が分からない。
 というか兄さん、聞き出したと言ってしまっているな。

「まあ……私よりも、レオン殿下に聞いた方が良いだろう。きっと殿下は顔を真っ赤にする」

 ダリアスはククッと笑った。
 女遊びをしているレオンが、今さら顔を赤くすることなんか、あるのだろうか。

「いつか、素手を見せてもらえる機会が訪れると良いな」
「…………」

 

 どうやら兄には、私の気持ちがお見通しのようだ。
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