伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

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9.手紙を書こう

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 今回は探るだけの予定だったが、ここまで嘘を言っているセレーナ嬢に釘を刺すため、私が話を聞いていたことを伝えることにした。セレーナに伝えずにメッツァル家に報告することも考えたが、幼い頃からの知り合いに、少しの情はあるため、家から叱られる覚悟はさせておこうと思ったのだ。
 これで、嘘を広めようとしていた事実を、否定はしないだろう。

「セレーナさん」

 私が声をかけると、2人ともこちらを向いた。セレーナ嬢の顔が、どんどん青くなっていくのが分かった。

「ユ……ユリウス様……今の話を……」

 セレーナ嬢の声は震えていた。まるで悪さをした子供が、親に見つかって叱られるのを怯えているようだった。

「全て聞きました。今は深く問いません。この件は、メッツァル家とツェプラリト家に報告いたします。行こう、シオン」

 家への報告と、協力してくれたお礼をするために、シオンと共に帰ろうと考えた私は、シオンに声をかけ、その場を去ろうと歩く。

「シオン、今日、これからの予定は何かあるか? 無ければ、家に来てほしいのだが」
「ああ、良いよ、行く」
「ユリウス様!」

 歩いて少し距離ができたところで、セレーナ嬢が私の名を呼ぶ。

「ユリウス様! 私の気持ちには、嘘はありません! それに、私との婚姻にメリットはあるはずです! 私と結婚していただけませんか」

 私はゆっくりと振り返り、セレーナ嬢を見つめる。目が合った瞬間、セレーナ嬢はビクッと身体を震わせた。今の私は、よっぽど冷たい目をしているらしい。
 別に怖がらせたいわけじゃない。目を閉じて1つ息を「フゥ」と吐く。そして、目を開けた。先ほどよりは、ましな目をしているだろう。

「夫婦とは、信頼で成り立つものです。後先考えずに嘘を広める人を、どうやって信頼すれば良いのでしょうか? 少なくとも今の私は、あなたを信頼も、信用もしていません。もしも家が結婚を決めたら仕方ありませんが、あなたが望むような夫婦生活は、残念ながら送れません。それでは」

 私は踵を返して、いつものように自分を待っているであろう馬車の方へと歩く。その少し後をシオンがついてくるのが分かった。

 セレーナ嬢から私たちの会話が聞こえないくらいの場所に移動した時、私は歩幅を緩め、シオンと並んで歩く。

「ありがとう、シオン」
「これくらい、どうってことないさ」
「お礼をさせてくれ」
「それじゃあ、ウチの商品でも買ってもらおうかな」
「そんなことで良いのか?」
「ああ……パンフレットは持ち歩いているんだ。君の家に営業させてもらうよ」
「ハハッ……ほどほどに頼むよ」




 この後、無事、家へ報告を終えた。メッツァル家は今、王都から離れた土地にいるため、ひとまず手紙を出すこととなった。

 父と私が手紙を書いている間、シオンの営業トークが始まった。
 シオンの持ってきたパンフレットに載っていたブローチを気に入ったダリアスが、婚約者に贈るために購入することになった。そして、母は自分用にイヤリングを購入した。

「商品のお届けまで数日かかります。ご用意ができたら、ユリウス様に学園でお渡ししましょうか?」
「いえ、店まで取りに行くわ。ね、ダリアス」
「ええ。ついでに実物も色々見せて欲しい。結婚指輪とか」
「承知しました」

 2人とも、満足のいく買い物ができたようで何よりである。
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