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10.ティータイム
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メッツァル家に、セレーナ嬢がしていたことを書いた手紙をすぐに届けさせた。セレーナ嬢は寄宿生のため、手紙が届く邪魔はできないだろう。
学園から屋敷に帰ると、手紙の返事が届いたと、従者のジルから伝えられた。父は読んだらしい。
「それで、手紙の内容になりますが、メッツァル子爵が謝罪をするために屋敷に伺いたいとのことです。そして旦那様からの言伝になりますが、学園の今度の休みで良いかとのことです」
「ああ……それで良いよ」
「それでは旦那様にそうお伝えします」
「頼む」
父がこうしてジルに言伝を頼むということは、急な仕事が入ってきたか、疲れて寝ているか、出掛けているのだろう。
「旦那様なら、奥様と共にアルベルトの店へ行かれました。イヤリングのご用意ができたとの連絡が来たので」
「そうか……兄さんは?」
「ダリアス様は、自分のお部屋にいらっしゃいます。ブローチはまだ時間がかかるとのことで」
「そうか……喉が渇いたから、水を持ってきてくれるか? その間に制服から着替えとくから」
「承知しました」
私は自分の部屋に入り、制服から屋敷で過ごす用のカジュアルな服に着替える。着替え終わるとちょうどジルが水を持ってきた。
「ありがとう」
目をやると、水の他にも、お湯等とティーセットが用意されていた。
「今日買い物に出た時に、新しく仕入れたという茶葉が置いてあったもので。ぜひお試しください」
「ああ、ありがとう」
私はさっそくジルが用意してくれた茶葉を使って、茶を入れて飲んだ。
「うん、美味しい」
「良かったです」
「今度レオンが来たら、お茶はこれにしようかな」
「かしこまりました」
ジルはニコッと微笑んだ。
「ジルも飲みなよ」
「いえ、そんな」
「空のティーカップもあることだし」
「初めて試す茶葉ですので、調整しながら飲まれるかと……一発で美味しいお茶が入れられるなんて、さすがでございますね」
「良いから、飲みな?」
私は空のティーカップに茶を注いだ。
「では失礼して……」
ジルも座り、茶を飲む。ひと口飲んで、ホッと息を吐いた。
「香ばしくて、とても美味しいですね。レオン殿下もきっと、お喜びになると思います」
ジルは、優しい微笑みでそう言った。
「ジルは、レオンのことをどう考えている?」
「と、言いますと?」
「レオンの噂は知っているだろう?」
「あぁ……その件ですか……」
ジルは持っていたティーカップを置いた。
レオンがあのようになってから、コソコソと何かを言う者がいる。それは仕方がない。そんな反応をされてもしょうがない行動を、レオンはしている。
長年、主に私に仕えてくれているジルはどう考えているのか、知りたくなったのだ。
「噂の真偽は私には分かりませんが……ユリウス様と昔から仲良くされているのを見ていた私から申し上げますと、悪い方ではないのだろうなと感じます。正直、噂も勘違いや、ユリウス様とセレーナ様の婚約話のように意図的に誰かが流したとではと思っているほどで……」
「残念ながら、噂は勘違いではない……この目で、女性とベタベタくっついてるのを見ている」
「……左様でございますか。では何か、きっかけがあったのではないでしょうか。そうでもなければ、人は簡単には変われません」
「きっかけ……例えば?」
「そうですね……例えば……何かが上手くいかなくて自暴自棄になっている、とか……」
「……」
なるほどと思った。それなら、変わった理由も頷ける気がする。
だが、レオンは優秀で、比較的何でもできる人だ。レオンが自暴自棄になる程のこととは、一体、何なのだろうか。
学園から屋敷に帰ると、手紙の返事が届いたと、従者のジルから伝えられた。父は読んだらしい。
「それで、手紙の内容になりますが、メッツァル子爵が謝罪をするために屋敷に伺いたいとのことです。そして旦那様からの言伝になりますが、学園の今度の休みで良いかとのことです」
「ああ……それで良いよ」
「それでは旦那様にそうお伝えします」
「頼む」
父がこうしてジルに言伝を頼むということは、急な仕事が入ってきたか、疲れて寝ているか、出掛けているのだろう。
「旦那様なら、奥様と共にアルベルトの店へ行かれました。イヤリングのご用意ができたとの連絡が来たので」
「そうか……兄さんは?」
「ダリアス様は、自分のお部屋にいらっしゃいます。ブローチはまだ時間がかかるとのことで」
「そうか……喉が渇いたから、水を持ってきてくれるか? その間に制服から着替えとくから」
「承知しました」
私は自分の部屋に入り、制服から屋敷で過ごす用のカジュアルな服に着替える。着替え終わるとちょうどジルが水を持ってきた。
「ありがとう」
目をやると、水の他にも、お湯等とティーセットが用意されていた。
「今日買い物に出た時に、新しく仕入れたという茶葉が置いてあったもので。ぜひお試しください」
「ああ、ありがとう」
私はさっそくジルが用意してくれた茶葉を使って、茶を入れて飲んだ。
「うん、美味しい」
「良かったです」
「今度レオンが来たら、お茶はこれにしようかな」
「かしこまりました」
ジルはニコッと微笑んだ。
「ジルも飲みなよ」
「いえ、そんな」
「空のティーカップもあることだし」
「初めて試す茶葉ですので、調整しながら飲まれるかと……一発で美味しいお茶が入れられるなんて、さすがでございますね」
「良いから、飲みな?」
私は空のティーカップに茶を注いだ。
「では失礼して……」
ジルも座り、茶を飲む。ひと口飲んで、ホッと息を吐いた。
「香ばしくて、とても美味しいですね。レオン殿下もきっと、お喜びになると思います」
ジルは、優しい微笑みでそう言った。
「ジルは、レオンのことをどう考えている?」
「と、言いますと?」
「レオンの噂は知っているだろう?」
「あぁ……その件ですか……」
ジルは持っていたティーカップを置いた。
レオンがあのようになってから、コソコソと何かを言う者がいる。それは仕方がない。そんな反応をされてもしょうがない行動を、レオンはしている。
長年、主に私に仕えてくれているジルはどう考えているのか、知りたくなったのだ。
「噂の真偽は私には分かりませんが……ユリウス様と昔から仲良くされているのを見ていた私から申し上げますと、悪い方ではないのだろうなと感じます。正直、噂も勘違いや、ユリウス様とセレーナ様の婚約話のように意図的に誰かが流したとではと思っているほどで……」
「残念ながら、噂は勘違いではない……この目で、女性とベタベタくっついてるのを見ている」
「……左様でございますか。では何か、きっかけがあったのではないでしょうか。そうでもなければ、人は簡単には変われません」
「きっかけ……例えば?」
「そうですね……例えば……何かが上手くいかなくて自暴自棄になっている、とか……」
「……」
なるほどと思った。それなら、変わった理由も頷ける気がする。
だが、レオンは優秀で、比較的何でもできる人だ。レオンが自暴自棄になる程のこととは、一体、何なのだろうか。
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