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17.遭遇
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あの日から、私はレオンから目を背けている。これで、レオンの行動を咎める者は、いなくなってしまったのだろう。
シオンは、私に何か言いたげな顔をしているが、特に触れないでいてくれる。
「セレーナ嬢、今日から登校だよな?」
「ああ……そういえば、そうだな」
「殿下に謝りに来んのかな?」
その名に、思わず、一瞬息をするのを忘れた。シオンから、その名が出るのは、あの日以降、初めてのことだった。
「……どうだろうな」
「セレーナ嬢も、噂は聞いてるだろうけど、実際に目の当たりにしたら、驚くんだろうなー」
シオンの声色は変に明るく、棒読みだ。セレーナ嬢に話を聞く時の演技は上手だったはずなのに。今はとんだ大根役者だ。どうやら、友人相手だとこうなるらしい。
「……そうだな」
「今まで、行動を注意してただろう? しなくて良いのか?」
変に取り繕うことをやめたらしい。その方がいい。
「……気になるのなら、シオンが言えば良いだろう」
「ハハッ俺が? 庶民が王族に物申せるかっての」
「レオンは注意されたくらいで恨んだりしない」
「それは知ってる……俺の気持ちの問題だよ。ってか、俺的には、殿下がどんな人だろうが、どうでも良い。でも、ユリウスは違うんだろ? 幼なじみがああなるのは、俺がユリウスでも嫌だね」
シオンは、私がレオンに恋心を抱いているなんて、想像すらしていないだろう。幼なじみとして注意している。ただ、それだけのこと。
「……この一週間も、レオンはあのままか?」
「見てないのか?」
「ああ……なんというか……見る気にならなくてな」
「まあ、何度言っても聞かないなら、疲れることもあるよな」
私は、疲れているのだろうか。いや、疲れもあるかもしれないが、『私には関係ない』と言ってしまったことを、肯定されたのが悲しかったのだ。
「そういえば、兄が、『ブローチはまだか』と」
「ああ、説明したけどな。時間かかるって」
「ハハ……申し訳ない。兄は楽しみで待ちきれないんだ」
「それなら……前に持っていたものとは違う、指輪のパンフレットを今日は持ってきているんだ。それを渡してくれるか?」
以前、シオンが私の屋敷に来た時、ダリアスが結婚指輪を見せて欲しいと言っていたのを覚えているようだ。
「分かった。ありがとう」
「指輪の形や宝石の組み合わせを自分で選べる新商品だ」
「それは喜びそうだな」
「そうだろう。俺が考えたんだ」
シオンは誇らしげにそう言った。
学園終わり、馬車に乗って帰っている途中、シオンから受け取ったパンフレットを忘れたことに気がついた。おそらく、自分の机の中にある。自分で言うのもなんだが、私らしくないミスだ。自分だけの忘れ物ならば戻らないが、シオンからダリアスに渡すよう頼まれた物だ。御者に頼んで戻ることにした。
「忘れ物をしたから、学園に戻ってくれないか?」
「かしこまりました」
馬車が方向を変え、来た道を戻って行った。
学園に戻り、教室への道を歩いて行く。誰もいない学園を歩くのは何度目か分からないが、歩くたびに不思議な感覚がする。教室の扉をガラッと開ける。
視界に入ってきたのは、教壇に並んで座る2人の生徒。
「……ハァ」
私は、2人に気がつかれないよう、軽くため息をつく。そうでもしないと、心臓が潰れて壊れてしまいそうだ。
シオンは、私に何か言いたげな顔をしているが、特に触れないでいてくれる。
「セレーナ嬢、今日から登校だよな?」
「ああ……そういえば、そうだな」
「殿下に謝りに来んのかな?」
その名に、思わず、一瞬息をするのを忘れた。シオンから、その名が出るのは、あの日以降、初めてのことだった。
「……どうだろうな」
「セレーナ嬢も、噂は聞いてるだろうけど、実際に目の当たりにしたら、驚くんだろうなー」
シオンの声色は変に明るく、棒読みだ。セレーナ嬢に話を聞く時の演技は上手だったはずなのに。今はとんだ大根役者だ。どうやら、友人相手だとこうなるらしい。
「……そうだな」
「今まで、行動を注意してただろう? しなくて良いのか?」
変に取り繕うことをやめたらしい。その方がいい。
「……気になるのなら、シオンが言えば良いだろう」
「ハハッ俺が? 庶民が王族に物申せるかっての」
「レオンは注意されたくらいで恨んだりしない」
「それは知ってる……俺の気持ちの問題だよ。ってか、俺的には、殿下がどんな人だろうが、どうでも良い。でも、ユリウスは違うんだろ? 幼なじみがああなるのは、俺がユリウスでも嫌だね」
シオンは、私がレオンに恋心を抱いているなんて、想像すらしていないだろう。幼なじみとして注意している。ただ、それだけのこと。
「……この一週間も、レオンはあのままか?」
「見てないのか?」
「ああ……なんというか……見る気にならなくてな」
「まあ、何度言っても聞かないなら、疲れることもあるよな」
私は、疲れているのだろうか。いや、疲れもあるかもしれないが、『私には関係ない』と言ってしまったことを、肯定されたのが悲しかったのだ。
「そういえば、兄が、『ブローチはまだか』と」
「ああ、説明したけどな。時間かかるって」
「ハハ……申し訳ない。兄は楽しみで待ちきれないんだ」
「それなら……前に持っていたものとは違う、指輪のパンフレットを今日は持ってきているんだ。それを渡してくれるか?」
以前、シオンが私の屋敷に来た時、ダリアスが結婚指輪を見せて欲しいと言っていたのを覚えているようだ。
「分かった。ありがとう」
「指輪の形や宝石の組み合わせを自分で選べる新商品だ」
「それは喜びそうだな」
「そうだろう。俺が考えたんだ」
シオンは誇らしげにそう言った。
学園終わり、馬車に乗って帰っている途中、シオンから受け取ったパンフレットを忘れたことに気がついた。おそらく、自分の机の中にある。自分で言うのもなんだが、私らしくないミスだ。自分だけの忘れ物ならば戻らないが、シオンからダリアスに渡すよう頼まれた物だ。御者に頼んで戻ることにした。
「忘れ物をしたから、学園に戻ってくれないか?」
「かしこまりました」
馬車が方向を変え、来た道を戻って行った。
学園に戻り、教室への道を歩いて行く。誰もいない学園を歩くのは何度目か分からないが、歩くたびに不思議な感覚がする。教室の扉をガラッと開ける。
視界に入ってきたのは、教壇に並んで座る2人の生徒。
「……ハァ」
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