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32.お邪魔する兄
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「両親に報告する前に、兄に報告したい」
「ダリアスに?」
「ああ」
あそこまで言ってくれた兄に、まず報告したい。兄の力を借りたいとか、そういうことでは無く、私たちのために、人知れず動いてくれていたダリアスに、1番に報告したいのだ。
レオンは、私の意図を理解したのか、部屋のドアの方に向けていた身体を、こちらに向ける。
「分かった。伯爵と夫人には、ダリアスに報告してからにしよう。ところで、ダリアスは、いつ帰ってくるんだ?」
「それが……分からないんだ。ルル嬢に説明された日、兄に感謝を伝えようとしたのだが、出かけていて言えず、そのままだ」
「数日留守にしているのか……ブリュー・アトレージの件の届けを出しに行くとしても長いし……どこに出かけているんだ?」
「さあな……婚約者のもとにでも行っているのだろう。結婚の準備などもあるし」
「ああ、なるほど」
実際には分からないが、きっとそうだろう。執事のウォレスも『クララ様のところかと』と言っていたからな。
私はレオンに近づき、手を取る。いつのまにかその右手には手袋がしてある。それはそうか。両親に報告しようと部屋を出ようとしたのだから。
手袋で隠れている、マークがあるであろう位置を、親指で撫でる。
「レオン、ありがとう。私の意思を尊重してくれて……」
「当たり前だろう」
私が握っていない方のレオンの手が、私の頬に添えられる。顔の距離が近くなっていく。あと数センチで、唇が触れようとした時だった。
コンコンコンコン!
突然の勢いのあるノックの音に、私もレオンも身体がビクッと反応し、叩かれたドアの方を見る。
「誰も来ないよう言っておいたんだがな」
「急ぎの用かもしれないぞ」
「そうだな」
名残惜しいが、レオンと身体を離し、ドアを開けると、ダリアスがいた。
「兄さん、帰ったんだ。おかえり」
「ああ、ただいま。ジルから、殿下がいらっしゃっていると聞いて、ちょうど良いと思って来たんだが……」
ダリアスは、部屋の中を見て、ニコッと微笑む。おそらく、レオンを見ているのだろう。
「お邪魔してしまいましたか?」
兄はどこまで察しが良いのだろうか。兄に隠し事はできないなと思った。
「いや、邪魔も何も……私の方が邪魔してるというか」
「兄さん、用があって来たんだろ? とにかく、入って」
私はダリアスを部屋に入れ、私が座っていた椅子の隣に座らせ、茶を入れる。ティーカップを余計に持ってきていて良かった。
「ありがとう。ユリウスの入れる茶に勝てる茶は、この世にはないからな。嬉しいよ」
「だよな?」
「ええ。殿下もそう思いますか」
私の兄と、私のレオンが、私の話題で盛り上がっているのは、くすぐったいような、恥ずかしいような……不思議な感覚がする。
「あの時期、たくさん練習した成果だな」
「練習?」
あ。
「あれ? 殿下はご存じではなかったのですか? ユリウスが学園に入学して少しした後、たくさん練習したんですよ。疲れてる顔してる幼なじみのためにって」
「ちょっと、兄さん、言わないでよ」
今まで、レオンに茶を振る舞うために練習したことは、言っていなかった。改めて言葉にされると、照れる。
「そうだったのか……」
レオンは目を細め、口角を上げた。その表情は、とても嬉しそうである。レオンが嬉しいならば、まあ良いかと思った。
「ダリアスに?」
「ああ」
あそこまで言ってくれた兄に、まず報告したい。兄の力を借りたいとか、そういうことでは無く、私たちのために、人知れず動いてくれていたダリアスに、1番に報告したいのだ。
レオンは、私の意図を理解したのか、部屋のドアの方に向けていた身体を、こちらに向ける。
「分かった。伯爵と夫人には、ダリアスに報告してからにしよう。ところで、ダリアスは、いつ帰ってくるんだ?」
「それが……分からないんだ。ルル嬢に説明された日、兄に感謝を伝えようとしたのだが、出かけていて言えず、そのままだ」
「数日留守にしているのか……ブリュー・アトレージの件の届けを出しに行くとしても長いし……どこに出かけているんだ?」
「さあな……婚約者のもとにでも行っているのだろう。結婚の準備などもあるし」
「ああ、なるほど」
実際には分からないが、きっとそうだろう。執事のウォレスも『クララ様のところかと』と言っていたからな。
私はレオンに近づき、手を取る。いつのまにかその右手には手袋がしてある。それはそうか。両親に報告しようと部屋を出ようとしたのだから。
手袋で隠れている、マークがあるであろう位置を、親指で撫でる。
「レオン、ありがとう。私の意思を尊重してくれて……」
「当たり前だろう」
私が握っていない方のレオンの手が、私の頬に添えられる。顔の距離が近くなっていく。あと数センチで、唇が触れようとした時だった。
コンコンコンコン!
突然の勢いのあるノックの音に、私もレオンも身体がビクッと反応し、叩かれたドアの方を見る。
「誰も来ないよう言っておいたんだがな」
「急ぎの用かもしれないぞ」
「そうだな」
名残惜しいが、レオンと身体を離し、ドアを開けると、ダリアスがいた。
「兄さん、帰ったんだ。おかえり」
「ああ、ただいま。ジルから、殿下がいらっしゃっていると聞いて、ちょうど良いと思って来たんだが……」
ダリアスは、部屋の中を見て、ニコッと微笑む。おそらく、レオンを見ているのだろう。
「お邪魔してしまいましたか?」
兄はどこまで察しが良いのだろうか。兄に隠し事はできないなと思った。
「いや、邪魔も何も……私の方が邪魔してるというか」
「兄さん、用があって来たんだろ? とにかく、入って」
私はダリアスを部屋に入れ、私が座っていた椅子の隣に座らせ、茶を入れる。ティーカップを余計に持ってきていて良かった。
「ありがとう。ユリウスの入れる茶に勝てる茶は、この世にはないからな。嬉しいよ」
「だよな?」
「ええ。殿下もそう思いますか」
私の兄と、私のレオンが、私の話題で盛り上がっているのは、くすぐったいような、恥ずかしいような……不思議な感覚がする。
「あの時期、たくさん練習した成果だな」
「練習?」
あ。
「あれ? 殿下はご存じではなかったのですか? ユリウスが学園に入学して少しした後、たくさん練習したんですよ。疲れてる顔してる幼なじみのためにって」
「ちょっと、兄さん、言わないでよ」
今まで、レオンに茶を振る舞うために練習したことは、言っていなかった。改めて言葉にされると、照れる。
「そうだったのか……」
レオンは目を細め、口角を上げた。その表情は、とても嬉しそうである。レオンが嬉しいならば、まあ良いかと思った。
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