伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

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36.王だけが知っている

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「この部屋にある資料は、城の図書館にもあるものばかりだから、ほとんど足を踏み入れる者はいないんだ」

 多くの資料が、本棚に収まっている。数ある棚の中から、王は迷わず、この部屋の奥の壁際にある本棚へと歩き、立ち止まる。その本棚は、他の本棚と比べて、見るからに古く、資料は入っていない。

「この棚は昔からあってな……この部屋を整理する時、他の本棚は入れ替えたが、この本棚は不思議と動かすことができず、そのままだと、先々代から聞いたことがある」
 
 王はそう言うと、3段に分かれている棚の真ん中を手で撫で、次に上、次に下を撫でた。王は棚から離れ、私たちにも離れるよう、手で促す。私たちは王の言う通りに少し離れる。

「その理由が、これだと分かった時、私は興奮がおさまらず、眠ることができなかったよ」
「え……」
「あ……」

 私は自分の目を疑った。それは隣にいるレオンも同じらしい。棚がひとりでに動き出し、片方を残して壁から離れた。まるで、ドアのように。棚で塞がれていた壁には、引き戸の扉があった。

「こんな場所があるだなんて……ずっと住んでたのに知らなかった……」
「妃にさえ伝えていない、私だけが知っているこの城の秘密だ。この向こうは部屋になっていて、不思議と掃除しなくても綺麗なんだ。きっと、初代の魔法が関係しているのだろう。好きに使うと良い」

 このようなカラクリのある建物を、私は今までに見たことがない。相当な技術を要するだろう。それとも、このカラクリもハンスが使っていたという魔法が、何か関係しているのだろうか。

「「ありがとうございます」」

 2人で過ごす場所が欲しかったのは事実。私たちは、王のご厚意に甘えることにした。

「このカラクリを解くには、棚を、真ん中、上、下の順番に撫でること。それだけだ」

 王が長年、秘密にしていた部屋を、私たちのために教えてくださる。それは、私のことを心から認めてくださっている証拠であるのが分かり、嬉しく思う。

「時間が少し経てば、自然と閉まるようになっている。中からの開け方も同じだ」
「何というか……言葉が出ないから、こんな言い方になってしまいますが……すごい仕組みですね」
「詳しくは、私にも分からないが、きっと初代であるハンスの影響かとは思う。それか、とても優秀な技術者がいたかだな……」

 やはり、王も同じ見立てをしているみたいだ。

「私は、この後、用事があるからここまでだが、時間があるなら、部屋の様子でも見て行ってくれ。じゃあな、ユリウス。レオン、学習を怠るなよ」

 王は、私たちに背中を向けて歩き出した。

「はい」
「本日はありがとうございました」


 王は私たちの言葉を背中で受け止め、片手を上げて応えた。その姿は、息子であるレオンと重なって見えた。やはり親子なのだなと感じた。
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