伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム

文字の大きさ
42 / 47

42.お前がいなければ

しおりを挟む
 私は城から帰ってすぐに、兄の部屋を訪ねた。感謝を伝えるために。

「兄さん、ありがとう。王に聞いたよ、『弟の頼みを聞いて欲しい』と言ったこと」
「別に感謝されることでもない。他の欲しいものが思いつかなかっただけだ」

 ダリアスは、穏やかな顔でそう言った。私に気を使ってそう言ったのではなく、本心から言っていることが伝わってくる。

「兄さんは、何故、私にそんなに良くしてくれる?」

 貴族の中には、兄弟間で仲違いをしてしまう者たちもいる。酷いと殺し合いだ。私たちのような兄弟は珍しい方だと知った10歳の頃から、持っていた疑問だった。それまでは、兄が弟に何かしてくれるのは、当たり前のことだと思っていた。

「……お前に、たくさん救われたからだよ」
「私は兄さんに、何も……」

 何もしていない。兄がしてくれたことに対して、私は何も返せていない。

「私が次期後継者としての学習が始まったのは、ユリウスが母様のお腹にいる頃。意外かもしれないが、私は学習もレッスンも、好きではなくてね……よく、理由を付けてサボっていた」

 ダリアスの言う通り、意外に思った。てっきり、兄のことだから、始めから、素直で、優秀に学習を受けていたものだと思っていた。

「父様に叱られても、それは変わることはなかった。『だってお腹が痛いんだもん』って。痛くなかったが……そんな中、お前が産まれた。手を伸ばすと、私の指を、ぎゅっと握った。その時に思ったんだ。弟に誇れる兄になりたいと」

 だから優秀だと言われている今はユリウスがいたおかげだ、とダリアスは言う。

「それは、兄さんが頑張ったからであって、私のおかげではないだろう」

 きっかけは私だったのかもしれないが、今、兄が優秀なのは、本人の努力であって、私のおかげではない。

「お前がいなければ、私はサボり魔のままだったよ。それに、頑張れたのも、お前がいたからだ」

 私がまるで、とてつもない人物かのように錯覚する。

「フッ……兄さんは、私を過大評価しすぎだ」

 私は笑いながら、呆れてそう言った。 

「そういえば、クララさんって、ウチにいつから住むの? そろそろだよな、結婚式してから?」
「ああ……ちゃんとした日取りは決めていないが、ユリウスが学園を卒業してからだな」
「私のことは気にせず、すぐにでも良いのに」
「別にユリウスに気を使っているわけじゃない。それまでには、解決すべき問題が終わるだろうと見立ているからな」
「それって、冤罪かけられた件の?」
「ああ、冤罪だと証明されても、難癖つけてくる者が居てな……だが、それももうすぐ解決する。クララとの結婚は、あともう少しだ」

 ダリアスは、穏やかな表情でそう言った。クララ嬢との結婚を楽しみにしていることが伝わってくる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた

胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。 失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……? 「俺たち付き合ってたないだろ」 「……本気で言ってるのか?」 不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け ※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします

【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布
BL
鉄血の重執着ストーカー騎士団長×無自覚もふもふ(聖獣使い)な元雑用係

ルピナスの花束

キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。 ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。 想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。

色欲も時代には勝てないらしい

ちき
BL
前世で恋人だった運命の人に、今世では捨てられてしまった祐樹。前世で愛してくれた人は彼以外誰もいないのだから、今後僕を愛してくれる人は現れないだろう。その事を裏付けるように、その後付き合う人はみんな酷い人ばかりで…………。 攻めがクズでノンケです。 攻め・受け共に、以外とのキスや行為を仄めかす表現があります。 元クズ後溺愛×前世の記憶持ち

勇者パーティーを追放された「生きた宝箱」、無愛想な騎士団長に拾われて宝石のように愛でられる

たら昆布
BL
勇者パーティーを追放された魔法生物が騎士団長に拾われる話

処理中です...