伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

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42.お前がいなければ

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 私は城から帰ってすぐに、兄の部屋を訪ねた。感謝を伝えるために。

「兄さん、ありがとう。王に聞いたよ、『弟の頼みを聞いて欲しい』と言ったこと」
「別に感謝されることでもない。他の欲しいものが思いつかなかっただけだ」

 ダリアスは、穏やかな顔でそう言った。私に気を使ってそう言ったのではなく、本心から言っていることが伝わってくる。

「兄さんは、何故、私にそんなに良くしてくれる?」

 貴族の中には、兄弟間で仲違いをしてしまう者たちもいる。酷いと殺し合いだ。私たちのような兄弟は珍しい方だと知った10歳の頃から、持っていた疑問だった。それまでは、兄が弟に何かしてくれるのは、当たり前のことだと思っていた。

「……お前に、たくさん救われたからだよ」
「私は兄さんに、何も……」

 何もしていない。兄がしてくれたことに対して、私は何も返せていない。

「私が次期後継者としての学習が始まったのは、ユリウスが母様のお腹にいる頃。意外かもしれないが、私は学習もレッスンも、好きではなくてね……よく、理由を付けてサボっていた」

 ダリアスの言う通り、意外に思った。てっきり、兄のことだから、始めから、素直で、優秀に学習を受けていたものだと思っていた。

「父様に叱られても、それは変わることはなかった。『だってお腹が痛いんだもん』って。痛くなかったが……そんな中、お前が産まれた。手を伸ばすと、私の指を、ぎゅっと握った。その時に思ったんだ。弟に誇れる兄になりたいと」

 だから優秀だと言われている今はユリウスがいたおかげだ、とダリアスは言う。

「それは、兄さんが頑張ったからであって、私のおかげではないだろう」

 きっかけは私だったのかもしれないが、今、兄が優秀なのは、本人の努力であって、私のおかげではない。

「お前がいなければ、私はサボり魔のままだったよ。それに、頑張れたのも、お前がいたからだ」

 私がまるで、とてつもない人物かのように錯覚する。

「フッ……兄さんは、私を過大評価しすぎだ」

 私は笑いながら、呆れてそう言った。 

「そういえば、クララさんって、ウチにいつから住むの? そろそろだよな、結婚式してから?」
「ああ……ちゃんとした日取りは決めていないが、ユリウスが学園を卒業してからだな」
「私のことは気にせず、すぐにでも良いのに」
「別にユリウスに気を使っているわけじゃない。それまでには、解決すべき問題が終わるだろうと見立ているからな」
「それって、冤罪かけられた件の?」
「ああ、冤罪だと証明されても、難癖つけてくる者が居てな……だが、それももうすぐ解決する。クララとの結婚は、あともう少しだ」

 ダリアスは、穏やかな表情でそう言った。クララ嬢との結婚を楽しみにしていることが伝わってくる。
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