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31.セドリック色は何色
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ルーナの婚約破棄騒動から一年。戴冠式をつい先程終えたばかりのセドリックが新王として王宮のバルコニーに立っていた。眼下には大勢の王都市民が集まりセドリック新王が手を振る度に歓声を上げている。
セドリックの斜め後ろには肩まで伸ばした白髪を一つに結び眉間に皺を寄せたガッバーナ前公爵が立っていた。
「セドリック・レミリアス新国王からのお言葉である!」
しんと静まりかえった市民はセドリックを見上げて期待の目を向けた。
「新国王としてここに宣言する! 全ての町や村の税を見直し公正な国づくりを目指すと共に、来年度より王立学園を平民にも解放する。今後は貴族・平民のこだわりなく優秀な生徒を受け入れる。国民全てのより良い将来の為に!」
「おー! 新国王ばんざーい」
「陛下ー!」
「はあ、緊張しました。頭が真っ白になって膝が・・」
「頭が白いのも膝が老いぼれなのもわしの担当ですわい」
「ガッバーナ前公爵・・これから宜しくお願いします」
「何度も言うがわしはただのお飾りですからな。自らの頭で考え自らの力で戦いなされ。他人を頼れば何処かに緩みが出ます。この国の貴族ときたら「マーカス様、今日はその辺で」」
マーカスの長広舌がはじまりかけたのに気付いたルーナが慌てて話に割り込んだ。二度と王宮には足を向けないと決めていたルーナだったが老獪なマーカスの手口から逃げられず、いくつかの条件をつけて期間限定のセドリックの女官となった。
「おお、そうじゃそうじゃ。年寄りは舞踏会の前に一寝入りせんと倒れてしまう」
「ここに居並ぶ誰よりもお元気そうに見えますわ。でも休憩を入れるのは良い事ですわね」
「百姓は身体が資本じゃからな」
「確かに。体力も気力も必要な仕事でした」
2ヶ月間マーカスの元で働いた時のことを思い出したセドリックが虚な目で空を見上げた。
朝暗いうちに井戸から水を汲み夜意識を失うように藁のベッドに倒れ込む迄の全てが手作業で、生活を便利にする道具類は全て禁止されてまるで百年前に戻ったような生活だった。
それでも『会って下さった』『話を聞いていただける機会を頂けた』のだから・・。
「陛下、少しお部屋で休まれますか? それとも、皆様方のところへいらっしゃいますか?」
「ああ、皆に会いたい。着替えてからの方がいいかな」
「そのままで宜しいかと存じます」
漸くニッコリと笑ったセドリックを客室へ案内した。
「セドリックゥ! かっこよかったぞ~。すっげえ似合ってる! 俺のセドリックがこんなに立派になって。兄ちゃんはもー。
隠れんぼしたら見つけて欲しくて木の茂みからケツだけ見せてたあのセドリックだぞ! ちっこ過ぎて高いとこにある本に手が届かないって、ちんまり丸まって泣いてたセドリックだぞ」
真っ赤に泣き腫らした目で鼻を啜りながらペタペタとセドリックを撫で回すオリバーを見る周囲の目は生暖かい。
「あーあ、オリバーが壊れた」
「オリバーは元から壊れてるよ」
「兄上! 俺は壊れてない! セドリックが可愛いのが悪い!! だってセドリックときたら、蛙を見て吃驚しておもら「オリバー! 僕もオリバーのことが大好きだけど、僕の黒歴史を叫ぶのはやめて! お願い」」
「あーあ、セドリックの『お願い』が出た」
「オリバーの顔が崩れた、キモ!」
セドリックの戴冠がスムーズにいったのは王弟ウィルソンと息子達の尽力があったから。セドリックは優秀・誠実であり二度と前国王のような君主にはならないと、レミリアス王国を潰すべきだと主張する一派を説き伏せてセドリックの帰国をもぎ取ってくれた。
セドリックを過激なまでに溺愛するオリバーはセドリックと共にレミリアス王国に行きたいと最後まで粘っていたがその役割にはナーガルザリアの公爵の次男が選ばれた。
『何でだ、俺のセドリックだぞ! 俺が側で守ってやるべきだろ?』
『セドリックの監視役として行くんだ。お前の報告じゃあナーガルザリアの反対派に信用されんと言っただろうが』
『セドリック~』
「オリバーのセドリック好きは変態の域に達してる」
「オリバーはもう結婚はできないね」
「ところでマシューはこの先どうするんだ?」
ライリーの問いかけにマシューが冷たい目を向けた。
「今まで通りに決まってる。何を言い出すのやら」
「どうも私の息子は変態ばかりのようだ」
「父上、お言葉ですが私だけは真面です」
「うん、今の所はな」
セドリックはマーカス・ガッバーナ前公爵を後見人として新国王となったが、今後10年間はナーガルザリア王国の監視下に置かれ問題ありとなればレミリアス王国はナーガルザリアの属国となる。
ナーガルザリア王国がここまで厳しい態度をとるのはかつての戦争だけでなく外務大臣が秘密裏に行っていた犯罪にも起因している。外務大臣の行っていた人身売買組織はナーガルザリアにも手を伸ばし何人もの行方不明者を出していた。その資金の一部を提供していたのが王妃と王妃の取り巻きの貴族だった。
ルーナの悪評が噂された頃既に、人身売買にレミリアスの誰かが関わっている可能性が示唆されておりナーガルザリアで調査をはじめていた。それならば噂の真偽を確認などせずいっそのことレミリアスを潰してしまえばよいと言う者たちがいた。
「セドリック、夜のパーティーの前に少し休めよ。昨夜寝てないんだろ? セドリックはホットミルクに蜂蜜が効くからな」
オリバーが世話焼き女房に変身するとセドリックが少し緊張した顔で首を横に振った。
「舞踏会の前に前国王と前王妃に会って来るつもりです」
「なっ! あんな奴等に会うんじゃない! あんな奴等とっとと処刑してしまえ」
「私が頼んで処刑を日延べしたんです。あのお二人にはどうしても言いたいことがあるので舞踏会の前に終わらせたいと思っています」
「そうだよな、ガッツリ文句言いたいよな。俺がついて行けたらいいんだが・・誰か一緒に・・ガッバーナ前公爵様とかに頼んだらどうだ?」
「オリバー・・国に帰ったら再教育が必要だな」
ウィルソンが溜息をついて頭を抱えた。
「へっ?」
「父上が甘やかし過ぎたんでしょう」
「オリバーの目は常にセドリック色に曇ってますから」
セドリックの斜め後ろには肩まで伸ばした白髪を一つに結び眉間に皺を寄せたガッバーナ前公爵が立っていた。
「セドリック・レミリアス新国王からのお言葉である!」
しんと静まりかえった市民はセドリックを見上げて期待の目を向けた。
「新国王としてここに宣言する! 全ての町や村の税を見直し公正な国づくりを目指すと共に、来年度より王立学園を平民にも解放する。今後は貴族・平民のこだわりなく優秀な生徒を受け入れる。国民全てのより良い将来の為に!」
「おー! 新国王ばんざーい」
「陛下ー!」
「はあ、緊張しました。頭が真っ白になって膝が・・」
「頭が白いのも膝が老いぼれなのもわしの担当ですわい」
「ガッバーナ前公爵・・これから宜しくお願いします」
「何度も言うがわしはただのお飾りですからな。自らの頭で考え自らの力で戦いなされ。他人を頼れば何処かに緩みが出ます。この国の貴族ときたら「マーカス様、今日はその辺で」」
マーカスの長広舌がはじまりかけたのに気付いたルーナが慌てて話に割り込んだ。二度と王宮には足を向けないと決めていたルーナだったが老獪なマーカスの手口から逃げられず、いくつかの条件をつけて期間限定のセドリックの女官となった。
「おお、そうじゃそうじゃ。年寄りは舞踏会の前に一寝入りせんと倒れてしまう」
「ここに居並ぶ誰よりもお元気そうに見えますわ。でも休憩を入れるのは良い事ですわね」
「百姓は身体が資本じゃからな」
「確かに。体力も気力も必要な仕事でした」
2ヶ月間マーカスの元で働いた時のことを思い出したセドリックが虚な目で空を見上げた。
朝暗いうちに井戸から水を汲み夜意識を失うように藁のベッドに倒れ込む迄の全てが手作業で、生活を便利にする道具類は全て禁止されてまるで百年前に戻ったような生活だった。
それでも『会って下さった』『話を聞いていただける機会を頂けた』のだから・・。
「陛下、少しお部屋で休まれますか? それとも、皆様方のところへいらっしゃいますか?」
「ああ、皆に会いたい。着替えてからの方がいいかな」
「そのままで宜しいかと存じます」
漸くニッコリと笑ったセドリックを客室へ案内した。
「セドリックゥ! かっこよかったぞ~。すっげえ似合ってる! 俺のセドリックがこんなに立派になって。兄ちゃんはもー。
隠れんぼしたら見つけて欲しくて木の茂みからケツだけ見せてたあのセドリックだぞ! ちっこ過ぎて高いとこにある本に手が届かないって、ちんまり丸まって泣いてたセドリックだぞ」
真っ赤に泣き腫らした目で鼻を啜りながらペタペタとセドリックを撫で回すオリバーを見る周囲の目は生暖かい。
「あーあ、オリバーが壊れた」
「オリバーは元から壊れてるよ」
「兄上! 俺は壊れてない! セドリックが可愛いのが悪い!! だってセドリックときたら、蛙を見て吃驚しておもら「オリバー! 僕もオリバーのことが大好きだけど、僕の黒歴史を叫ぶのはやめて! お願い」」
「あーあ、セドリックの『お願い』が出た」
「オリバーの顔が崩れた、キモ!」
セドリックの戴冠がスムーズにいったのは王弟ウィルソンと息子達の尽力があったから。セドリックは優秀・誠実であり二度と前国王のような君主にはならないと、レミリアス王国を潰すべきだと主張する一派を説き伏せてセドリックの帰国をもぎ取ってくれた。
セドリックを過激なまでに溺愛するオリバーはセドリックと共にレミリアス王国に行きたいと最後まで粘っていたがその役割にはナーガルザリアの公爵の次男が選ばれた。
『何でだ、俺のセドリックだぞ! 俺が側で守ってやるべきだろ?』
『セドリックの監視役として行くんだ。お前の報告じゃあナーガルザリアの反対派に信用されんと言っただろうが』
『セドリック~』
「オリバーのセドリック好きは変態の域に達してる」
「オリバーはもう結婚はできないね」
「ところでマシューはこの先どうするんだ?」
ライリーの問いかけにマシューが冷たい目を向けた。
「今まで通りに決まってる。何を言い出すのやら」
「どうも私の息子は変態ばかりのようだ」
「父上、お言葉ですが私だけは真面です」
「うん、今の所はな」
セドリックはマーカス・ガッバーナ前公爵を後見人として新国王となったが、今後10年間はナーガルザリア王国の監視下に置かれ問題ありとなればレミリアス王国はナーガルザリアの属国となる。
ナーガルザリア王国がここまで厳しい態度をとるのはかつての戦争だけでなく外務大臣が秘密裏に行っていた犯罪にも起因している。外務大臣の行っていた人身売買組織はナーガルザリアにも手を伸ばし何人もの行方不明者を出していた。その資金の一部を提供していたのが王妃と王妃の取り巻きの貴族だった。
ルーナの悪評が噂された頃既に、人身売買にレミリアスの誰かが関わっている可能性が示唆されておりナーガルザリアで調査をはじめていた。それならば噂の真偽を確認などせずいっそのことレミリアスを潰してしまえばよいと言う者たちがいた。
「セドリック、夜のパーティーの前に少し休めよ。昨夜寝てないんだろ? セドリックはホットミルクに蜂蜜が効くからな」
オリバーが世話焼き女房に変身するとセドリックが少し緊張した顔で首を横に振った。
「舞踏会の前に前国王と前王妃に会って来るつもりです」
「なっ! あんな奴等に会うんじゃない! あんな奴等とっとと処刑してしまえ」
「私が頼んで処刑を日延べしたんです。あのお二人にはどうしても言いたいことがあるので舞踏会の前に終わらせたいと思っています」
「そうだよな、ガッツリ文句言いたいよな。俺がついて行けたらいいんだが・・誰か一緒に・・ガッバーナ前公爵様とかに頼んだらどうだ?」
「オリバー・・国に帰ったら再教育が必要だな」
ウィルソンが溜息をついて頭を抱えた。
「へっ?」
「父上が甘やかし過ぎたんでしょう」
「オリバーの目は常にセドリック色に曇ってますから」
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