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49.最大の危機
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「この書類って・・」
「保育学校が設立されると同時にソフィーから依頼され作成しました。ソフィーのサインは作成と同時に終わっています。後は日付を入れて3人がサインすれば完了です。
今回の事を予測していたとは思えませんが、危機感を抱いてるようでした」
「こんなのサインできるわけないじゃない。ばっかじゃないの?」
ルイスは書類を読んだ後腕組みをして目を瞑ったまま微動だにしないでいる。
「私たちがサインしなかった場合はどのようになるのでしょう?」
「その場合は【ソラージュ不動産】も保育学校も解体され全ての資金が慈善団体に寄付されます。慈善団体の一覧も既に揃っています」
「つまり社員や職員を人質にして無理矢理にでもサインさせようって魂胆ね」
「王都でも有名な優良企業ですから売却額はかなりのものになるでしょう。退職金は支払われますがその後全ての社員・職員が今と同等の職につけるか・・。ソフィーが率先して仕事を依頼していた業者や子供達はかなり苦境を強いられると話したのですが、そうはならない自信があると」
「あーもー、ムカつく!! あたし達があの子の努力を無駄にするわけないって言いたいんでしょ!!」
「サインしよう。但し別の書類を作ってもらう。これと全く逆の書類だ。俺達はソフィーが帰ってくるまで一時的に預かるだけだ」
ソフィーが準備していたのは【ソラージュ不動産】の資産はハンナとルイスの共同名義とし、社長職の権限はルイスに譲渡。保育学校の代表はローリーで資産の全てを譲渡すると言うもの。
「サインするわ。ソフィーが帰ってきたらボッコボコにして一年分のチョコレートを買わせてやる」
「私もサインします。ソフィーが帰ってくるのを子供達と仔犬と一緒に待ちたいと思います」
「何か分かったか?」
「ああ、予想通りクソ親が派手にやらかしてる。帝国から陛下に直接話がいったから陛下がブチ切れた」
ソフィーの親は自国での詐欺に失敗した後、慰謝料を踏み倒し金目の物を持って帝国へ逃亡した。
自分達はメルソーラム王国の不動産会社社長とその親、帝国へ進出するための視察に来たと言う触れ込みで裕福な商人に声をかけまくった。
あちこちの夜会へ入り込み最初に捕まえたのがユーストス・ヴィリアース子爵。地下資源の豊富な領地を持つ資産家だが、全てを家令に任せ本人は帝都で遊興に耽っている。離婚後は多くの女性を侍らせ酒と博打にうつつを抜かす子爵はアンガス達の格好の餌食となった。
『ソフィーと申します。帝都は初めてですの。案内してくださる紳士がいてくださると心強いですわ』
『王国の不動産業はやや頭打ちになりつつあるので帝国に土地を求めてやってましたの。【ソラージュ不動産】をご存じかしら?』
『明日の夜会は別の方がエスコートしたいと言ってくださいましたの。とても・・残念ですわ』
ソフィーの名を騙ったエリスの美貌と資産に惑わされた男達がエリスを取り合ったが、子爵は高価なドレスや宝石を誰よりも多く貢ぎ婚約に漕ぎ着けた。
『婚約の話は王都へ戻って弁護士と打ち合わせをするまでは公にはしたくありませんの。ユース様程ではありませんがわたくしもそれなりの資産がございますでしょう? 帝国へ嫁ぐとなると色々手続きがございますの』
不動産の知識に乏しいエリスに不信感を持ちはしたが『設計も法律関係も全て優秀な社員がおりますの。ユース様もでしょう?』と言うエリスの言葉で納得してしまった。
婚約後あっという間に、エリスに別の男の影がチラつきはじめた。
ランバルト伯爵の嫡男ハリソンとシーモア侯爵の二男ロニー。
ヴィリアース子爵のエスコートで出席した夜会で出会った2人。資産はヴィリアース子爵が一番だが爵位で言えばランバルト伯爵のほうが上。
シーモア侯爵のロニーは二男で爵位は継げないが第一騎士団団長に就任しており、王家の血を引く祖母はロニーが大のお気に入り。
(ふふん、今更周りを彷徨いても遅い。婚約しているのは私だからな。結婚してしまえば【ソラージュ不動産】が手に入る。あれだけの資産だ。その後は王都で花を愛でるか・・)
ヴィリアース子爵は他の男達と張り合うように貢物を増やしていった。
『会社から土地の買収を急いで欲しいと催促が来ましたの。ですから少しばかり旅行をしてこようと思いますの』
『寂しくても我慢しますわ。一緒にいたら仕事なんでしたくなくなりますものね』
そしてエリスは別の男達と心ゆくまで旅行を楽しんだ。
ヴィリアース子爵家の家令から苦情の手紙が頻繁に来る中、博打で多額の借金を抱えた子爵は家令に送金の指示をだした。
『クソっ! これ以上金は出せんだと? 誰の金だと思ってやがる。ケチ臭い事を言いやがって』
『そうだ、ソフィーが俺のものだと公表出来ればあんなに高い物を買ってやらなくて済むようになる』
『ソフィーは法律関係は疎いと言ってたから俺が直々に顧問弁護士に進捗状況を確認して尻を叩いてやろう。女に任せておくと全然話が進まん。いずれ私のものになるんだからついでに少しばかり資金を引き出してやろう』
この手紙が弁護士経由で王都のソフィーに届いた。
『返事は・・ん? 弁護士ではなくソフィーからだと?』
『はあー!! 何だこれは!!』
ソフィーが送った手紙には帝国には一度も行ったことがなく【ソラージュ不動産】の帝国進出の予定もないことが書かれていた。
『だったら、あいつは誰だ』
「保育学校が設立されると同時にソフィーから依頼され作成しました。ソフィーのサインは作成と同時に終わっています。後は日付を入れて3人がサインすれば完了です。
今回の事を予測していたとは思えませんが、危機感を抱いてるようでした」
「こんなのサインできるわけないじゃない。ばっかじゃないの?」
ルイスは書類を読んだ後腕組みをして目を瞑ったまま微動だにしないでいる。
「私たちがサインしなかった場合はどのようになるのでしょう?」
「その場合は【ソラージュ不動産】も保育学校も解体され全ての資金が慈善団体に寄付されます。慈善団体の一覧も既に揃っています」
「つまり社員や職員を人質にして無理矢理にでもサインさせようって魂胆ね」
「王都でも有名な優良企業ですから売却額はかなりのものになるでしょう。退職金は支払われますがその後全ての社員・職員が今と同等の職につけるか・・。ソフィーが率先して仕事を依頼していた業者や子供達はかなり苦境を強いられると話したのですが、そうはならない自信があると」
「あーもー、ムカつく!! あたし達があの子の努力を無駄にするわけないって言いたいんでしょ!!」
「サインしよう。但し別の書類を作ってもらう。これと全く逆の書類だ。俺達はソフィーが帰ってくるまで一時的に預かるだけだ」
ソフィーが準備していたのは【ソラージュ不動産】の資産はハンナとルイスの共同名義とし、社長職の権限はルイスに譲渡。保育学校の代表はローリーで資産の全てを譲渡すると言うもの。
「サインするわ。ソフィーが帰ってきたらボッコボコにして一年分のチョコレートを買わせてやる」
「私もサインします。ソフィーが帰ってくるのを子供達と仔犬と一緒に待ちたいと思います」
「何か分かったか?」
「ああ、予想通りクソ親が派手にやらかしてる。帝国から陛下に直接話がいったから陛下がブチ切れた」
ソフィーの親は自国での詐欺に失敗した後、慰謝料を踏み倒し金目の物を持って帝国へ逃亡した。
自分達はメルソーラム王国の不動産会社社長とその親、帝国へ進出するための視察に来たと言う触れ込みで裕福な商人に声をかけまくった。
あちこちの夜会へ入り込み最初に捕まえたのがユーストス・ヴィリアース子爵。地下資源の豊富な領地を持つ資産家だが、全てを家令に任せ本人は帝都で遊興に耽っている。離婚後は多くの女性を侍らせ酒と博打にうつつを抜かす子爵はアンガス達の格好の餌食となった。
『ソフィーと申します。帝都は初めてですの。案内してくださる紳士がいてくださると心強いですわ』
『王国の不動産業はやや頭打ちになりつつあるので帝国に土地を求めてやってましたの。【ソラージュ不動産】をご存じかしら?』
『明日の夜会は別の方がエスコートしたいと言ってくださいましたの。とても・・残念ですわ』
ソフィーの名を騙ったエリスの美貌と資産に惑わされた男達がエリスを取り合ったが、子爵は高価なドレスや宝石を誰よりも多く貢ぎ婚約に漕ぎ着けた。
『婚約の話は王都へ戻って弁護士と打ち合わせをするまでは公にはしたくありませんの。ユース様程ではありませんがわたくしもそれなりの資産がございますでしょう? 帝国へ嫁ぐとなると色々手続きがございますの』
不動産の知識に乏しいエリスに不信感を持ちはしたが『設計も法律関係も全て優秀な社員がおりますの。ユース様もでしょう?』と言うエリスの言葉で納得してしまった。
婚約後あっという間に、エリスに別の男の影がチラつきはじめた。
ランバルト伯爵の嫡男ハリソンとシーモア侯爵の二男ロニー。
ヴィリアース子爵のエスコートで出席した夜会で出会った2人。資産はヴィリアース子爵が一番だが爵位で言えばランバルト伯爵のほうが上。
シーモア侯爵のロニーは二男で爵位は継げないが第一騎士団団長に就任しており、王家の血を引く祖母はロニーが大のお気に入り。
(ふふん、今更周りを彷徨いても遅い。婚約しているのは私だからな。結婚してしまえば【ソラージュ不動産】が手に入る。あれだけの資産だ。その後は王都で花を愛でるか・・)
ヴィリアース子爵は他の男達と張り合うように貢物を増やしていった。
『会社から土地の買収を急いで欲しいと催促が来ましたの。ですから少しばかり旅行をしてこようと思いますの』
『寂しくても我慢しますわ。一緒にいたら仕事なんでしたくなくなりますものね』
そしてエリスは別の男達と心ゆくまで旅行を楽しんだ。
ヴィリアース子爵家の家令から苦情の手紙が頻繁に来る中、博打で多額の借金を抱えた子爵は家令に送金の指示をだした。
『クソっ! これ以上金は出せんだと? 誰の金だと思ってやがる。ケチ臭い事を言いやがって』
『そうだ、ソフィーが俺のものだと公表出来ればあんなに高い物を買ってやらなくて済むようになる』
『ソフィーは法律関係は疎いと言ってたから俺が直々に顧問弁護士に進捗状況を確認して尻を叩いてやろう。女に任せておくと全然話が進まん。いずれ私のものになるんだからついでに少しばかり資金を引き出してやろう』
この手紙が弁護士経由で王都のソフィーに届いた。
『返事は・・ん? 弁護士ではなくソフィーからだと?』
『はあー!! 何だこれは!!』
ソフィーが送った手紙には帝国には一度も行ったことがなく【ソラージュ不動産】の帝国進出の予定もないことが書かれていた。
『だったら、あいつは誰だ』
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