【完結】婚約してる? 婚約破棄した? ところであなたはどなたですか?

との

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59.花の数に意味がある!?

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 サラの泣き声が小さくなりしゃっくりが止まらなくなった。

「サラ、少し話さない?」

「・・(ひっく、ひっく)」

「私、6歳で親に売られたの」

「だっだから? わた・・ひっく・・私は不幸・・ひっく・・だっていっ言いたいの?」

「ううん、家から追い出されて幸せだって今は思ってる」

「貴族の・・ひっく・・養子にな・・ひっく・・れたからでしょ?」

「それはもっと先の話。私を売った家族が毎日のようにお金の無心に来て雇い主に迷惑をかけて・・まだ子供だったから家族から逃げられなくて、それで形だけ養子にしてくれたの。そうすれば縁を切れるからって」

「・・!」

 サラの中のソフィーは何でも持っている人・・。若くして会社を立ち上げ成功し、平民だけでなく一部貴族にまで評判が広まっている。魅力的なハンナやルイス達に囲まれ個人資産で学校まで。誰にでも親しげで分け隔てのない態度。
 母に連日責め立てられたサラの中で尊敬が羨望へ、嫉妬へと変わっていったのはレオが貴族だと知った時かもしれない。

(同じ平民でもスタートが違うから)

(貴族の令息も?)
(平民学校さえ行ってないの!?)

 追い詰められて歪んでいく心に気がついていても止められない恐怖心。

(母さんに捨てられちゃう)
(地獄に落ちる)

 ソフィーが逮捕されレオに会えない日が続き、母の話は長くなるばかり・・。

(捨てないで、見捨てないで・・)
(お願い・・助けて・・・・ソフィー)



「自分の勝手な考えや望みの為に子供を利用する親と縁が切れた事にホッとしてる」

「育ててくれた親を捨てるなんて最低な事だわ」

「確かにね。親にもそう言われたわ『産んでやったのに』って。だけど、私には私の人生があって間違っても上手くいっても結果は自分のものなの。小さな子供の時は別だけど大人になったら選択するのは自分だって思ってる。
失敗を咎める権利があるのは自分だけ。その事と産んでもらった恩は別だって思うの」

「・・レオ様と結婚できなかったら・・家を追い出されるの」

「それは脅迫の一つだわ。貸家に空きがあるかもしれない。少し落ち着いて考えてみたらどう?」

「・・空きなんてないわ。【ソラージュ不動産】の物件はどれも空き待ちだもの」

「その時はその時、住むところなんて探せばいくらでもあるわ。
お母様から離れてみるのもいいんじゃないかな。離れて暮らすと色々見えてくる景色が変わるかも」







「レオ兄様、一人でニヤニヤしててキモい!」

 あいも変わらずレオが屋敷に帰ってきた途端部屋に飛び込んできたジョシュア。

「その顔からすると問題解決したのね。サラも可哀想な子のひとりよねー。何でこんなにクソ親が多いのかしら」

「まあ、取り敢えず一件落着だな。ジョシュアの調査能力には毎回驚かされる」

「ジョージアナよ! 近所でちょっと聞き込みしただけだから今回のはすっごく簡単だったわ。あそこのママ、すっごく声が響くんだって。だからお隣とかに丸聞こえだったの」

(家族のアレコレが全部筒抜け・・)

 想像したレオは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「その顔、まさに魔王ね! 『不快な人間め!』とか言いそう。
まっ、それはさておきレオ兄様のいい勉強になったし? モテる男の気分はどうだった?」

「モテてない。偶々目の前にいたのが俺だっただけだ」

「まあそうとも言うけどぉ。レオ兄様にまとわりついてたのってソフィーの事が羨ましかったからかもねー。
サラはソフィーみたいになりたかったんじゃない? 親の束縛を離れて人に認められる仕事して友達もいっぱい。見た目はアレだけど肩書きだけは立派な貴族の令息から熱烈なアピールを受けててさ」

「熱烈? 俺は普通だったぞ? ソフィーの事は俺のことを怖がらない初めての女友達だとずっと思ってたからな」

 ジョシュアに話の途中でディスられているが慣れているレオは着替えを終えてソファにどっかりと座り込んだ。

「ふふ、そう言うおバカなレオ兄様は通常営業ね。だけど笑われたくないなら他所では言わない方が良いわよ」

 ムッとしたレオが眉間に皺を寄せて『笑うのはお前だけだ』と呟いていた。

「そう言えば初恋の君はもう良いの?」

「ああ、彼女ならきっと幸せに暮らしてる。特に気にしたことはないな」

「ぶほっ! マジかー。(まだ気づいてなかったか)ところでソフィーは?」

「子供達に囲まれてたからな、邪魔にならないように一度帰ってきた。後で迎えに行って食事してくる」

「レオ兄様、なんか緊張してる? 顔が突然キモくなってきた」


 レオは食事の時改めてソフィーに交際を申し込むつもりでいる。帰り道に花屋で購入した花束は馬車に置いてあるし指輪も準備した。

(ピクニックは断られなかったから大丈夫。多分・・)

「花束の本数に意味があるとは思わなかった・・」



『本数はどうされますか? 9本ならいつも一緒にいたい、11本なら最愛の人、12本なら結婚して下さいとか・・。ロマンチックな演出を望まれるなら・・』



「薔薇なら庭にたくさんあったのに。普通は庭でレオ兄様自身が手折った花を渡すものなんだけどね。ところでそれ、どこにあるの?」

 部屋を見回したジョシュアが不審げな顔をしている。

「馬車に積んだままにしてる。持ち歩いてたら粉々にしそうだ」

「バッカじゃないの! 折角の花がしおしおになっちゃうじゃん」

 脱兎の如く駆け出したレオが冷や汗を垂らしながら薔薇の花束を抱えて部屋に戻ってくるまでジョシュアは腹を抱えて笑い続けていた。

(もー、やることなすこと初心者でウケるぅ。レオ兄様って可愛すぎー)

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