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13.ルビコン川は渡らない約束
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メリッサが商会に泊まり込むと連絡した翌日、仕事を休んたステファンは部屋に篭りお昼を過ぎた頃に郵便局へ向かった。
大勢の人で騒めく郵便局内を彷徨き、ようやく窓口に辿り着いたステファンは郵便切手を買う小銭がないことに気付いた。
「はあ? 郵便料金って受取人が払うんだよな」
「いえ、何年も前に差出人が払うと変更になってます」
「えー、こんなに待ったのに⋯⋯巫山戯んなよ、ったく」
ガツン!
癇癪を起こしたステファンがカウンターを蹴ると近くにいた背の高い大人しそうな男が小銭を差し出した。
「あの、良かったら⋯⋯」
「へ、いいの?」
「俺も昔うっかりした事があったんで」
「そっかぁ、そうだよなぁ。おい、これで送れるよな」
「はい⋯⋯えっと郵便ではなく飛脚便ですか?」
「おう、急いでるんでね」
「それなら後⋯⋯」
追加料金も一緒に払ってくれた男に礼を言って郵便局を出たステファンは昼を食べ損ねていた事を思い出した。
(クソ、メリッサの奴⋯⋯家に金を置いてねえとか巫山戯すぎだろ!?)
ブツブツ文句を言いながら馬車に乗り込んだステファンを背の高い男⋯⋯ケニスが呆れ顔で見ていた。
(今時郵便が先払いだって知らない人がいるなんて⋯⋯お陰で宛先がしっかり読めたけど)
商会の裏口から事務所に向かうケニスの足取りはこれ以上ないくらい重かった。
(どう言えばいいかなぁ⋯⋯報告した後メリッサを絶対に止めないと)
軽くノックした後でドアを開けると書類と睨めっこするルーカスとシッカートの計算機を前に黙々とノートのチェックをしているメリッサがいた。
「ケニス、そんな顔してどうしたの?」
「えーっと、どんな顔?」
「出がけに犬のク◯を踏んだ時みたいな顔だな」
「うっ、そんな酷い顔してますか?」
目を細めてクンクンと匂いを嗅ぎはじめたメリッサがにっこり笑って『大丈夫』とサムズアップしたが、ケニスは苦笑いを浮かべただけでソファに座り込んだ。
「ステファンが郵便局に行って飛脚便を出しました。宛先は⋯⋯ジョージ・メイルーン司教」
「やっぱりメイルーンだったのね」
「メリッサ、確認だけって約束したの覚えてるよね。5人は別件で捕まえればいい。証拠も全て揃ってるから絶対に逃さないから」
「⋯⋯ケニスが言いたいことはわかるけど、賽は投げられたってやつだと思うんだ。たまたまステファンと出会ってたまたま話を聞いて、たまたま模造真珠が手元にあった⋯⋯これってその時が来たってことだと思わない?
ケニスはここからは手を引いて応援だけでいいからね」
「バカな! そんなつもりで言ったんじゃない、相手が悪すぎだって言ってるんだ。奴に手を出したらサマネス枢機卿が出てくるって知ってるだろ!? 賽なんかまだ誰も投げてねえし、模造品掴ませて陰で笑って終わりにしよう。それに、確認だけって約束したの忘れてないよな!?」
この国の国教でもあるプレステア教で最も若く司祭となったジョージ・メイルーンは公にはルディ・サマネス枢機卿の養子となっている。
聖職者は独身を貫き全ての人生を神に捧げると決められているプレステア教で、将来性を見込んで年若い助祭や司祭を養子に迎えるのは珍しくないが⋯⋯。
「隠し子なのは噂だけじゃない、本人が認めたって言う証言もあるんだぞ! しかも近々補佐司教に任命したいだの司教に叙階したいだのと騒いでる。この状況で奴に関わったらどうなるか想像してみろよ!」
「教会内の揉め事にどっぷり浸かって身動きが取れなくなるか、問題を解決してあげられるかの2択」
眉間に皺を寄せて額を抑えたケニスがルーカスを見やって睨みつけた。
「無鉄砲な娘をこのまま放置するんですか? 破滅に向けて全速力でスタートする気満々じゃないですか!?」
「うーん、困ったなぁ。メリッサはこうと決めたらテコでも動かんからなぁ、今回の結婚話がいい例だろ?」
ひょいっと立ち上がったルーカスは休憩してくると言って立ち上がった。
「さて、どうするか⋯⋯頭でも冷やして話し合ってみたらどうだ?」
ヒラヒラと手を振りながらルーカスが事務所を出ると、メリッサは何もなかったようにシッカートの計算機に向かって計算をはじめた。
カカチカチと計算機の規則正しい音が鳴り時折ケニスが部屋を彷徨く足音や苛立たしげな溜息が聞こえてくる。
「メリッサ⋯⋯やっぱり5人に集中しよう。御者を見つけてさぁ」
「そうね、先ずは御者を見つけて⋯⋯安全を確保してあげなくちゃね。まだはっきりしたわけじゃないし」
ケニスの方に振り返らず頑なに壁の一点を見つめ続けるメリッサは目を細めて何かを考えているように見えた。
大勢の人で騒めく郵便局内を彷徨き、ようやく窓口に辿り着いたステファンは郵便切手を買う小銭がないことに気付いた。
「はあ? 郵便料金って受取人が払うんだよな」
「いえ、何年も前に差出人が払うと変更になってます」
「えー、こんなに待ったのに⋯⋯巫山戯んなよ、ったく」
ガツン!
癇癪を起こしたステファンがカウンターを蹴ると近くにいた背の高い大人しそうな男が小銭を差し出した。
「あの、良かったら⋯⋯」
「へ、いいの?」
「俺も昔うっかりした事があったんで」
「そっかぁ、そうだよなぁ。おい、これで送れるよな」
「はい⋯⋯えっと郵便ではなく飛脚便ですか?」
「おう、急いでるんでね」
「それなら後⋯⋯」
追加料金も一緒に払ってくれた男に礼を言って郵便局を出たステファンは昼を食べ損ねていた事を思い出した。
(クソ、メリッサの奴⋯⋯家に金を置いてねえとか巫山戯すぎだろ!?)
ブツブツ文句を言いながら馬車に乗り込んだステファンを背の高い男⋯⋯ケニスが呆れ顔で見ていた。
(今時郵便が先払いだって知らない人がいるなんて⋯⋯お陰で宛先がしっかり読めたけど)
商会の裏口から事務所に向かうケニスの足取りはこれ以上ないくらい重かった。
(どう言えばいいかなぁ⋯⋯報告した後メリッサを絶対に止めないと)
軽くノックした後でドアを開けると書類と睨めっこするルーカスとシッカートの計算機を前に黙々とノートのチェックをしているメリッサがいた。
「ケニス、そんな顔してどうしたの?」
「えーっと、どんな顔?」
「出がけに犬のク◯を踏んだ時みたいな顔だな」
「うっ、そんな酷い顔してますか?」
目を細めてクンクンと匂いを嗅ぎはじめたメリッサがにっこり笑って『大丈夫』とサムズアップしたが、ケニスは苦笑いを浮かべただけでソファに座り込んだ。
「ステファンが郵便局に行って飛脚便を出しました。宛先は⋯⋯ジョージ・メイルーン司教」
「やっぱりメイルーンだったのね」
「メリッサ、確認だけって約束したの覚えてるよね。5人は別件で捕まえればいい。証拠も全て揃ってるから絶対に逃さないから」
「⋯⋯ケニスが言いたいことはわかるけど、賽は投げられたってやつだと思うんだ。たまたまステファンと出会ってたまたま話を聞いて、たまたま模造真珠が手元にあった⋯⋯これってその時が来たってことだと思わない?
ケニスはここからは手を引いて応援だけでいいからね」
「バカな! そんなつもりで言ったんじゃない、相手が悪すぎだって言ってるんだ。奴に手を出したらサマネス枢機卿が出てくるって知ってるだろ!? 賽なんかまだ誰も投げてねえし、模造品掴ませて陰で笑って終わりにしよう。それに、確認だけって約束したの忘れてないよな!?」
この国の国教でもあるプレステア教で最も若く司祭となったジョージ・メイルーンは公にはルディ・サマネス枢機卿の養子となっている。
聖職者は独身を貫き全ての人生を神に捧げると決められているプレステア教で、将来性を見込んで年若い助祭や司祭を養子に迎えるのは珍しくないが⋯⋯。
「隠し子なのは噂だけじゃない、本人が認めたって言う証言もあるんだぞ! しかも近々補佐司教に任命したいだの司教に叙階したいだのと騒いでる。この状況で奴に関わったらどうなるか想像してみろよ!」
「教会内の揉め事にどっぷり浸かって身動きが取れなくなるか、問題を解決してあげられるかの2択」
眉間に皺を寄せて額を抑えたケニスがルーカスを見やって睨みつけた。
「無鉄砲な娘をこのまま放置するんですか? 破滅に向けて全速力でスタートする気満々じゃないですか!?」
「うーん、困ったなぁ。メリッサはこうと決めたらテコでも動かんからなぁ、今回の結婚話がいい例だろ?」
ひょいっと立ち上がったルーカスは休憩してくると言って立ち上がった。
「さて、どうするか⋯⋯頭でも冷やして話し合ってみたらどうだ?」
ヒラヒラと手を振りながらルーカスが事務所を出ると、メリッサは何もなかったようにシッカートの計算機に向かって計算をはじめた。
カカチカチと計算機の規則正しい音が鳴り時折ケニスが部屋を彷徨く足音や苛立たしげな溜息が聞こえてくる。
「メリッサ⋯⋯やっぱり5人に集中しよう。御者を見つけてさぁ」
「そうね、先ずは御者を見つけて⋯⋯安全を確保してあげなくちゃね。まだはっきりしたわけじゃないし」
ケニスの方に振り返らず頑なに壁の一点を見つめ続けるメリッサは目を細めて何かを考えているように見えた。
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