【完結】結婚した途端記憶喪失を装いはじめた夫と離婚します

との

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14.最後までやり遂げたいって言ってる気が

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「御者を確保したら5人を拘束して牢屋にぶち込もう」

「御者を見つけたらケニスは自分の仕事に戻って。伯爵になったばかりで領民を放置しすぎだもん」

「それは問題ない」

 くるりと振り返ったメリッサがケニスに向かって指を突きつけた。

「あるに決まってるでしょう!? ケニスに何かあったらマーサおばさまが一人になっちゃうし、領民達のことは誰が面倒見るの?」

「メリッサに何かあったらおじさんだって一人になる」

「そんなことにはならないように何か方法を考えるから。ケニスは爵位や領地なんかを守らなくちゃいけない義務があるから第一身分の奴らと揉めるのは良くない。でも、私は第三身分だからケニスとは違うの!」



 この国で最も優遇されているのは第一身分の聖職者でその次が第ニ身分と呼ばれる貴族達。

 第二身分の中でもケニスは、領主として農民から地代を取り立て免税特権などの特権を与えられている高位貴族の一員で、第二身分の中で上位グループに分類される。

 国王に仕える官僚となった法服貴族には新たに富裕になった商人などもいるが、貴族になるのを拒み続けているルーカスやメリッサは昔も今も重税を払い参政権も認められていない第三身分。

(手の上に乗っている⋯⋯責任や義務が違いすぎるの。それに私はあの日のおばさん達の後ろ姿が忘れられない)



 メリッサとルーカスが遺体の搬送費用を出すと願い出たがミゲルの両親から断られた。

『あの子はここで『最後までやり遂げたい』って言ってる気がするんですよ。
それに遺体の搬送にかかる費用をメリッサ達に融通してもらうのは納得がいかないっていうのもあるしね』

 ミゲルを大学近くの墓地に埋葬した彼の両親は、僅かな私物しかないミゲルのアパートで使い込んだ鞄を撫でながら呟いた。

『まだ信じられないの。間違いなくミゲルだったのに⋯⋯別人のような気もしてね。なんだか大人っぽくなったなぁ、なんて場違いなことを考えてたの』

『おばさん⋯⋯ごめんなさい』

『誰のせいでもない⋯⋯運が悪かっただけ、恨むのも文句を言いたい相手もこんな運命を与えた神し⋯⋯』

『やめとけ! どこで誰が聞いてるか分からんぞ。俺達が帰った後ミゲルの墓に何かされたらどうするんだ』

 医学部や法学部が新設されたと言っても神学を学ぶ学生の方が圧倒的に多く、壁の薄いアパートでの愚痴であっても熱狂的信者の耳に届けば何をされるか分からないのが現状。

 彼らが信じる神を侮辱した・軽視したと思い込んだ神学生の暴挙は枚挙に暇がなく、集団暴行・闇討ち・放火などがあちこちで多発している。
 犯行は第一身分の者達の進言で軽減され罪に問われる事は少なく、神学生や教会関係者の横行は留まるところを知らない。

(ミゲルは今も独りぼっちで⋯⋯それなのにアイツらは『たかがイタズラ』『平民一人のせい』なんて言って平然としてる。絶対に許せない!)



 メリッサが突きつけていた人差し指を捕まえたケニスが指を見つめながら急にボソボソと話しはじめた。

「未練がましいとかコソコソ陰に隠れて調べて気持ち悪いって言われた」

「へ?」

「さっさと当たって砕けてこいって」

「ほ、ほう。砕ける前提はどうかと思うけど」

「たかが爵位だとか社交界がなんだとか、脳内で完結してるって」

「えーっと、悩み事相談なら男同士の方が⋯⋯あの人で役に立つかどうかわかんないけど、父さん呼んでこようか?」

「結婚しよう⋯⋯結婚して下さい⋯⋯ミゲルごめん、諦められないんだ」

「⋯⋯」

「俺が父上を説得できなくて暴走させて⋯⋯そのせいだって分かってるから諦めないといけないって頭では分かってるんだ。
でも、こんなちっちゃい頃からメリッサしか見えてなくて」

「ケニス、それちっちゃすぎ⋯⋯親指姫じゃあるまいし」

 親指と人差し指で示した大きさを見たメリッサが笑いを堪えた。

「はあ、俺何言ってんだろ⋯⋯これが全部終わったら思いっきりカッコよくプロポーズしようと思ってたのに」

 メリッサの指から手を離してしゃがみ込んだケニスが頭を抱えた。

「場所とか花束とか指輪とか台詞とかしっかり考えて⋯⋯年取った時メリッサが笑顔で思い出せるようなサプライズもって」

 床に座り込んで胡座をかきガックリと項垂れたケニスが頭をガシガシと掻き乱して溜息をついた。



「⋯⋯残念だけどケニスにはそういうの似合わなそう」

「へ?」

 ケニスが思わず顔を上げるとニヤニヤと笑ったメリッサが爪先でケニスの膝を突いた。

「ケニスってさ、頭が良くて背が高くてイケメンだし裕福だしって全部揃ってるんだけど⋯⋯どっかズレててぬけてて、そこがケニスらしくて良いと思ってる。
だから、ケニスがカッコよく決めようとしたら『爆ぜろ、イケメン!』って言いたくなりそう。絶対言う」

「は、爆ぜるのはちょっと」

「さて、司祭が動くかどうか確しなくちゃね」

「⋯⋯ええっ! 俺の話って完全無視?」

「だって⋯⋯」

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