【完結】結婚した途端記憶喪失を装いはじめた夫と離婚します

との

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15.そんなとこにも隠してたとは

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「だって私は今コーク夫人(偽)だから、全部終わってからじゃないと返事できないでしょ? それまでにビッグサプライズ準備しといてね」

 こくこくと頷いたケニスがふと首を傾げた。

「これは⋯⋯どっちの意味だ? 再チャレンジ可って事は期待できるのか、次こそきっちり振られるのか⋯⋯うーん」

 笑いを堪えきれなくなったメリッサは床に座り込んだまま悩んでいるケニスを放置してお茶を淹れようと席を立った。



 聞くに聞けない質問で首を捻っているケニスを横目で見ながらメリッサがクッキーを齧っているとルーカスが戻ってきた。

「教会の事務所に知り合⋯⋯」

「えっ、教会って事務所があるんですか?」

 悶々と考え込んでいたケニスが驚きすぎてルーカスの言葉を遮った。

「当たり前だろ? 司祭や助祭が帳簿付けしてたらそれだけで一日が終わっちまうし、あんなとこには信者には見せられん部分が山盛りあるからな」

「そう言えばそうですね。って事は細々した物品を納入してる業者もいるはず⋯⋯」

「そういう事、お利口さんになったじゃねえか」

 ニヤッと笑ったルーカスが一枚の紙をテーブルに置いた。

「父さんがその悪人顔をする時って、何か仕掛けてある時だよね」

「悪人顔? 昔みたいにヘッドロックかけてやろうか?」

「あ、やるならケニスで」

「いえ、結構です」

「ケニス程じゃねえが俺も大概メリッサに甘いからよ⋯⋯奴の名前が出た時点で調べといた。ケニス、うちの商会が扱わねえって決めてるもん分かるか?」

「⋯⋯金融?」

「その通りだ。資金の貸し付けで財を成して王侯貴族に切られて没落した商会は過去に腐るほどいるからよ、俺達が叙爵を断ってるのはそのせいだ。貴族になりゃ金を貸せと言われて断れん時が必ずくるが、平民ならキチンと税金を納めておきゃ文句は言えねえだろ?」

「つまり、教会に貸付してる知り合いがいるって事ですね」

「ケニスは頭の回転は早いよな~。(メリッサが関係すると)へっぽこのくせに」



 ルーカスの商会は砂糖・カカオ・香辛料・天然ゴムなどの輸入と銀の輸出で資産を増やし、その利益を使って地方都市で特産品や農産物を買い付け王都や主要都市で販売をしている。

「香辛料・芳香性のある物質・毛皮製品・絹布・高価な毛織物なんかは、購買力のある大貴族・修道院・富裕な市民だけが購入者だからうちでは卸しかやらねえ。
んで、それらの販売と金貸しをしてる商会の一つに『フェリントス商会』がいる」

 商品取引や貿易で収益を上げたフェリントス商会は王侯貴族への高利貸し付けで巨額の富を蓄え、現在商会長を務めるアントン・フェリントスは叙爵と同時に主要都市に銀行を設立しはじめた。

「教会の金庫は信者や貴族からの寄付で満タンだが、公にできねえ金がいる奴がいるからな」

「ルディ・サマネス枢機卿ね」

「ガキで特に目立った功績もないジョージ・メイルーン司祭を司教やら補助司教にするには派閥の奴らに鼻薬を効かせる必要もあるし、押さえ込まなきゃならん奴もいて大金がいるって事だな」

 元々プレステア教は金さえ払えば地獄からでも連れ帰ってくれると揶揄われている程強欲な聖職者が多い。

「んで、フェリントス商会は昔からあちこちに調査員を潜り込ませて裏情報を調べさせてる。
んで、事務所の話に戻るというわけだ。事務所で働いて調べた結果を業者が受け取って商会長に渡す。
今回サマネス枢機卿が騒いでるのは対立してるロジャー・マルティン枢機卿の横槍のせいらしい」

 最後の一枚になったクッキーをメリッサから横取りしようとしたルーカスが手を叩かれた。

「ケチ!」

「父さんの血圧が下がったらね」

「ロジャー・マルティン枢機卿は非常に厳格で敵も多い方だと有名だ」

 親子の攻防を見ながらケニスが真面目な顔で呟いた。

「おう、サマネス枢機卿が隠し子だと口を滑らしたもんで聴聞会を開くべきだ結果が出るまで田舎に飛ばせと言い出したんだと。
で、サマネスが反対して金をばら撒いてる」

 メリッサを横目で睨んだルーカスが立ち上がり仕事机の引き出しを開けてチョコレートの箱を取り出した。

 ニパっと笑ったルーカスがこれ見よがしにチョコレートを口に放り込んで、呆れ顔のメリッサに向かって箱を放り投げた。

「そう言えば、プレステア教では地方の教会に行かされるのは懲罰の一つだと聞いたことがあります」

「可愛い僕ちゃんと離れるのが寂しいのかそんな汚点をつけさせたくないのか必死らしいぜ」

「となると可能性は二つ⋯⋯」

「ああ、どっちに転ぶか見ものだな」



 チョコレートの箱を開けたメリッサが一つ口に放り込んでからケニスに差し出した。

「賭ける?」

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