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28.作戦会議で呆れるマーシャル
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「ジョージ・メイルーン司祭はルディ・サマネス枢機卿の実子だって大々的に流したいの」
「それって本当の事なんですか?」
「ええ、サマネス枢機卿が断言するのを聞いた人がいて聴聞会が開かれそうになってるもの」
「分かりました、至急手を打ちましょう。しかしこんなに突然教会が騒ぎ立てるなんてなにかあったんですかねぇ?」
「いくつか予想はつくけど⋯⋯」
メリッサが言葉を濁したがカーターが身を乗り出してきた。
「メリッサさん、わしにもわかるように話してもらえんか? 偉そうに言える立場ではないと理解しておるつもりじゃが⋯⋯何がどうなっておるのか、わしには知る権利があると思うんじゃが?」
「⋯⋯そうね。マーシャルが口が硬いのは知ってるけど、この件には娘さん夫婦やお孫さん達だけでなく他にも命の危険に晒されてる人がいるから⋯⋯現時点で話せることだけにさせてもらうわね」
小さく頷いたカーターは肩を力を入れて居住まいを正した。
「あの馬車の事故はメイルーン司教が仕組んだんだけど、それを知っているメンバーの中にステファン・コークという男がいるの。
彼は今メイルーン司教を利用しようとして動きはじめてるんだけど、思い通りにいかなかったら脅すくらい平気でやる最低男なのよね。
で、メイルーンが動きはじめたってことは脅し文句の一つか二つは確実に言ってるわね」
「お嬢様、コークって⋯⋯それに馬車の事故って言うと」
マーシャルの眉間にまた皺が寄りはじめたがメリッサは気にせず話を続けた。
「ミゲルの事故のことよ。で、ステファンが犯人の一人だと知ったから信用させるために彼と結婚式を挙げたの」
「なんてこった! おかしいと思ってたんですよ、何でケニス様じゃなくて別の男なのかって」
ソファの背にもたれて天井を見上げたマーシャルが額に手を当てて『商会長、なんで止めないんだよ』と呟いた。
「いやー、ケニスは関係なくない? ステファンと話してる時たまたまアレが事故じゃないって知ったのよ。ステファンは商会のお金目当てで近付いてきただけだから、遠慮なく情報を引き出させてもらったわ。あ、情報料はそれなりに払っといた」
テヘっと笑ったメリッサを見ていた呆れ顔の二人が顔を見合わせて溜息をついた。
「メリッサさん⋯⋯わしが言うのはなんじゃが、やる事が無茶すぎんか?」
「現時点で命の危険がある人がそんなにいるんですか?」
「ほら、ああ言う奴等って自分の手は汚さないし直接動くなんてしないでしょう? 子飼いの僕だの無理やり引き摺り込んで手先にしただの⋯⋯そう言う人が何人か判明してるの」
「義息子のヒューゴと同じ⋯⋯」
俯いて考え込んでいるカーターの呟きが聞こえたらしいマーシャルがチラリとカーターを見た目は冷たく冷え切っていた。
(単なる被害者の家族だと思っていたが違うのか?)
マーシャルが噂を流す手配を済ませて応接室に戻ってきた時もカーターは目を瞑り考え込んでいた。
「手配が終わりました。数日のうちに王都と周辺の街には噂が広がるはずです」
「ありがとう、次は今後の事を考えなくちゃ⋯⋯暫くの間カーターさん達が安全に身を隠せる場所ってないかしら? 子供達のことを考えるとこれ以上窮屈な思いはさせたくないけど、教会の目が届かない場所って思いつかないの」
カーター達4人の安全を確保して一日も早く王都に戻りたいメリッサは内心かなり焦っていた。
(もうそんなに時間は残ってないから帰ってステファンからメイルーンの様子を聞き出したいし、『賭け』に立ち会えるよう画策したいのよね)
「お嬢様がそこまでする義理はあるんですか?」
「へ?」
「話の流れからするとカーターさんの義息子は犯罪に加担した一人なんじゃありませんか?」
「えーっと、マーシャル⋯⋯今はメイルーン達のグループ全員を捕まえる事に集中してて、その他の人達のことは⋯⋯ねぇ」
「お嬢様は甘すぎます。情状酌量の余地があったとしても犯罪者は犯⋯⋯」
「マーシャルさんの仰る通りじゃ。ヒューゴのやった事は紛れもない犯罪じゃからな」
「⋯⋯まあ、そうなんですけどね。ジェイミーとアイラを見てたらなんだか⋯⋯。何年も逃げ回ってる間大変だったと思うし⋯⋯あの子達の親を⋯⋯」
「だからこそはっきりさせるべきじゃろう。サリナから聞いた話じゃからどこまで正確な話か分からんが聞いてもらえるか?」
セルデイン大学のあるカルマールで辻馬車の御者をしていたヒューゴとサリナは当時一歳半のジェイミーと3人で暮らしていた。二人目の子供の妊娠が分かったばかりの頃ヒューゴが客の一人に怪我を負わせてしまった。
「それがプレステア教の関係者じゃったそうで、不問にする代わりにちょっとした遊びに付き合えと言われたそうじゃ」
「それって本当の事なんですか?」
「ええ、サマネス枢機卿が断言するのを聞いた人がいて聴聞会が開かれそうになってるもの」
「分かりました、至急手を打ちましょう。しかしこんなに突然教会が騒ぎ立てるなんてなにかあったんですかねぇ?」
「いくつか予想はつくけど⋯⋯」
メリッサが言葉を濁したがカーターが身を乗り出してきた。
「メリッサさん、わしにもわかるように話してもらえんか? 偉そうに言える立場ではないと理解しておるつもりじゃが⋯⋯何がどうなっておるのか、わしには知る権利があると思うんじゃが?」
「⋯⋯そうね。マーシャルが口が硬いのは知ってるけど、この件には娘さん夫婦やお孫さん達だけでなく他にも命の危険に晒されてる人がいるから⋯⋯現時点で話せることだけにさせてもらうわね」
小さく頷いたカーターは肩を力を入れて居住まいを正した。
「あの馬車の事故はメイルーン司教が仕組んだんだけど、それを知っているメンバーの中にステファン・コークという男がいるの。
彼は今メイルーン司教を利用しようとして動きはじめてるんだけど、思い通りにいかなかったら脅すくらい平気でやる最低男なのよね。
で、メイルーンが動きはじめたってことは脅し文句の一つか二つは確実に言ってるわね」
「お嬢様、コークって⋯⋯それに馬車の事故って言うと」
マーシャルの眉間にまた皺が寄りはじめたがメリッサは気にせず話を続けた。
「ミゲルの事故のことよ。で、ステファンが犯人の一人だと知ったから信用させるために彼と結婚式を挙げたの」
「なんてこった! おかしいと思ってたんですよ、何でケニス様じゃなくて別の男なのかって」
ソファの背にもたれて天井を見上げたマーシャルが額に手を当てて『商会長、なんで止めないんだよ』と呟いた。
「いやー、ケニスは関係なくない? ステファンと話してる時たまたまアレが事故じゃないって知ったのよ。ステファンは商会のお金目当てで近付いてきただけだから、遠慮なく情報を引き出させてもらったわ。あ、情報料はそれなりに払っといた」
テヘっと笑ったメリッサを見ていた呆れ顔の二人が顔を見合わせて溜息をついた。
「メリッサさん⋯⋯わしが言うのはなんじゃが、やる事が無茶すぎんか?」
「現時点で命の危険がある人がそんなにいるんですか?」
「ほら、ああ言う奴等って自分の手は汚さないし直接動くなんてしないでしょう? 子飼いの僕だの無理やり引き摺り込んで手先にしただの⋯⋯そう言う人が何人か判明してるの」
「義息子のヒューゴと同じ⋯⋯」
俯いて考え込んでいるカーターの呟きが聞こえたらしいマーシャルがチラリとカーターを見た目は冷たく冷え切っていた。
(単なる被害者の家族だと思っていたが違うのか?)
マーシャルが噂を流す手配を済ませて応接室に戻ってきた時もカーターは目を瞑り考え込んでいた。
「手配が終わりました。数日のうちに王都と周辺の街には噂が広がるはずです」
「ありがとう、次は今後の事を考えなくちゃ⋯⋯暫くの間カーターさん達が安全に身を隠せる場所ってないかしら? 子供達のことを考えるとこれ以上窮屈な思いはさせたくないけど、教会の目が届かない場所って思いつかないの」
カーター達4人の安全を確保して一日も早く王都に戻りたいメリッサは内心かなり焦っていた。
(もうそんなに時間は残ってないから帰ってステファンからメイルーンの様子を聞き出したいし、『賭け』に立ち会えるよう画策したいのよね)
「お嬢様がそこまでする義理はあるんですか?」
「へ?」
「話の流れからするとカーターさんの義息子は犯罪に加担した一人なんじゃありませんか?」
「えーっと、マーシャル⋯⋯今はメイルーン達のグループ全員を捕まえる事に集中してて、その他の人達のことは⋯⋯ねぇ」
「お嬢様は甘すぎます。情状酌量の余地があったとしても犯罪者は犯⋯⋯」
「マーシャルさんの仰る通りじゃ。ヒューゴのやった事は紛れもない犯罪じゃからな」
「⋯⋯まあ、そうなんですけどね。ジェイミーとアイラを見てたらなんだか⋯⋯。何年も逃げ回ってる間大変だったと思うし⋯⋯あの子達の親を⋯⋯」
「だからこそはっきりさせるべきじゃろう。サリナから聞いた話じゃからどこまで正確な話か分からんが聞いてもらえるか?」
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