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32.上げたり下げたり
「まずはロジャー・マルティン枢機卿だがな、噂以上に偏屈で曲者っぽいがサマネス枢機卿を蛇蝎の如く嫌ってるから話に乗ってくる可能性は高い。すんげえ疑り深い奴らしいから、話を信じさせることができたらってつくがな⋯⋯。
新聞記者のマシュー・ホッグスは昔は敏腕記者だって言われてたみたいだが、ここ最近は会社の中で干され気味だな」
「あの記事のせいですか?」
「その可能性はある。あの新聞社は元々教会寄りで有名だからな、ホッグスがコソコソ調べてるのがバレて株主から横槍が入ったのもあったみたいだし」
「教会寄りの新聞社じゃ当てにできないね。別を探す?」
この国で一番の購買数を誇っているのは『モーニング・グロー』だが、その他にも多くの新聞社が存在している。教会に屈することなく記事を出してくれるところがあるかどうかは疑問だが、事件をもみ消されない為には新聞の力は必須だと頭を悩ませているとルーカスが意外な反応を返してきた。
「いや、その逆だな。ホッグスは結構コソコソと影で動いてたりするんだが、新聞社と教会に一泡吹かせたいと思ってるせいだって気がするんだよ。だから話の持ってき方次第ではなんとかなると俺は睨んでる。
それに『モーニング・グロー』の一面に載せるのが一番インパクトがあるしな」
「新聞社が非協力的でなんとかなるもの?」
「ああ、博打みたいなやり方だが方法が一つだけある」
「あ、『賭け』の準備はどうなってる?」
「それが一番ハードだったぞ~。ステファンはすっかり王様気分で調子こいてやがるし、コーク家の婆さんまで参戦して買い物三昧しようとするし」
「コーク男爵は?」
「もう、投げてんじゃねえの? 止めようとしてる気配もねえしただ黙々と仕事してる感じだな」
ステファンが計画した賭けは廃村のある無人島にお宝を隠して賭けに参加したメンバーが連れてきた者達各5名に探させるというもの。
それだけなら罪のないゲームだが最終地点にお宝が届くまで奪い合いオーケーで銃器の使用もありの非人道的なサバイバルゲームになっている。
勝者は賭けに参加した者の中の一人だけだが、連れてきた者の中で賞金を貰えるのも一人だけ。
「自分の連れてきた奴同士も最終的には敵になるんだぜ? こんな胸糞悪いルールを思いつくのは最低野郎くらいだぜ。奴等は元傭兵・騎士団崩れ・破落戸なんかに声をかけながら武器や防具を買い漁ってる」
「準備だけでかなりかかってそうですが、それで元が取れるんですか?」
「ステファンが賞品にしたものの価値を考えりゃ十分元が取れるだろうよ」
「それって何?」
賞品についてはまだ何も知らなかったメリッサが不安そうにルーカスを見つめた。
「うちの商会」
ステファンの予想以上の暴挙にメリッサとケニスが凍りついた。『どうだ、驚いたろ?』と言いながらルーカスがニヤリと余裕そうに笑った。
「んで、それを俺が知らねえと思ってるステファンは俺とメリッサを賭けの場に招待しやがった」
「それって⋯⋯つまり」
「だろうな。奴にしてみりゃ、資産のある平民自体が許せない存在なんじゃねえの? メイルーンも参加するそうだぜ」
「現地に来るって事よね」
「ああ、コークの婆さんに自慢げに話してたから間違いねえ。メイルーンに出した手紙には賭けの場に来ないなら参加は認めず真珠は海に捨てると書いたそうだ。それと事件のことも少し匂わしたみてえだしな」
メリッサがステファンと付き合う事になってからルーカスはコーク家の近くに調査員を送り込んでいた。
模造真珠の盗難事件が起きるまでは、単に強欲な家族が平民から少しでも早く少しでも多くの金を搾り取る方法を話し合っていただけだった。
以前コーク男爵がルーカスのところへ謝罪に来た事があるが、彼も妻や息子と一緒に平民をディスり金をむしり取る方法を提案していたのを知っていたルーカスは本気に受け取らず冷たく追い返した。
「コーク男爵は小心者の本能で危険が迫っていると察知して俺達に助けてもらおうとしたんだろうな。平民を踏みつけて金を吐き出させるだけのつもりだったのに手に負えなくなりそうだとか」
「真面に働いていなかった息子が大学で真面目に勉強すると思う方がどうかしてます。その時点で考えが甘すぎるし、支払い計画も立てず借金を増やしたのは本人の無能さのせいです。
ギリギリまで待ってから、あれは息子の借金だし妻がゴリ押ししてきたせいだから自分は悪くないと言い出すのは目に見えてますね」
「おお! なんか、ケニスが家長っぽい」
「メリッサの前ではいつも間抜け面を晒してるが、こいつは経営者としては結構優秀だからな」
「マーサおばさまから聞いてる。ケニスが爵位を継いでから新しい技術の導入や農地改革を行って、ラインフェルト領の税収は右肩上がりになっているって」
「その分プライベートはへっぽこだがな」
二人に褒められて顔を赤くしていたケニスがルーカスの言葉を聞いてガックリと項垂れた。
男爵の不安が的中したと言うべきか予想通りと言うべきか、ステファンが盗んだ真珠を母親に預けてから二人の態度が一気に変わっていった。
新聞記者のマシュー・ホッグスは昔は敏腕記者だって言われてたみたいだが、ここ最近は会社の中で干され気味だな」
「あの記事のせいですか?」
「その可能性はある。あの新聞社は元々教会寄りで有名だからな、ホッグスがコソコソ調べてるのがバレて株主から横槍が入ったのもあったみたいだし」
「教会寄りの新聞社じゃ当てにできないね。別を探す?」
この国で一番の購買数を誇っているのは『モーニング・グロー』だが、その他にも多くの新聞社が存在している。教会に屈することなく記事を出してくれるところがあるかどうかは疑問だが、事件をもみ消されない為には新聞の力は必須だと頭を悩ませているとルーカスが意外な反応を返してきた。
「いや、その逆だな。ホッグスは結構コソコソと影で動いてたりするんだが、新聞社と教会に一泡吹かせたいと思ってるせいだって気がするんだよ。だから話の持ってき方次第ではなんとかなると俺は睨んでる。
それに『モーニング・グロー』の一面に載せるのが一番インパクトがあるしな」
「新聞社が非協力的でなんとかなるもの?」
「ああ、博打みたいなやり方だが方法が一つだけある」
「あ、『賭け』の準備はどうなってる?」
「それが一番ハードだったぞ~。ステファンはすっかり王様気分で調子こいてやがるし、コーク家の婆さんまで参戦して買い物三昧しようとするし」
「コーク男爵は?」
「もう、投げてんじゃねえの? 止めようとしてる気配もねえしただ黙々と仕事してる感じだな」
ステファンが計画した賭けは廃村のある無人島にお宝を隠して賭けに参加したメンバーが連れてきた者達各5名に探させるというもの。
それだけなら罪のないゲームだが最終地点にお宝が届くまで奪い合いオーケーで銃器の使用もありの非人道的なサバイバルゲームになっている。
勝者は賭けに参加した者の中の一人だけだが、連れてきた者の中で賞金を貰えるのも一人だけ。
「自分の連れてきた奴同士も最終的には敵になるんだぜ? こんな胸糞悪いルールを思いつくのは最低野郎くらいだぜ。奴等は元傭兵・騎士団崩れ・破落戸なんかに声をかけながら武器や防具を買い漁ってる」
「準備だけでかなりかかってそうですが、それで元が取れるんですか?」
「ステファンが賞品にしたものの価値を考えりゃ十分元が取れるだろうよ」
「それって何?」
賞品についてはまだ何も知らなかったメリッサが不安そうにルーカスを見つめた。
「うちの商会」
ステファンの予想以上の暴挙にメリッサとケニスが凍りついた。『どうだ、驚いたろ?』と言いながらルーカスがニヤリと余裕そうに笑った。
「んで、それを俺が知らねえと思ってるステファンは俺とメリッサを賭けの場に招待しやがった」
「それって⋯⋯つまり」
「だろうな。奴にしてみりゃ、資産のある平民自体が許せない存在なんじゃねえの? メイルーンも参加するそうだぜ」
「現地に来るって事よね」
「ああ、コークの婆さんに自慢げに話してたから間違いねえ。メイルーンに出した手紙には賭けの場に来ないなら参加は認めず真珠は海に捨てると書いたそうだ。それと事件のことも少し匂わしたみてえだしな」
メリッサがステファンと付き合う事になってからルーカスはコーク家の近くに調査員を送り込んでいた。
模造真珠の盗難事件が起きるまでは、単に強欲な家族が平民から少しでも早く少しでも多くの金を搾り取る方法を話し合っていただけだった。
以前コーク男爵がルーカスのところへ謝罪に来た事があるが、彼も妻や息子と一緒に平民をディスり金をむしり取る方法を提案していたのを知っていたルーカスは本気に受け取らず冷たく追い返した。
「コーク男爵は小心者の本能で危険が迫っていると察知して俺達に助けてもらおうとしたんだろうな。平民を踏みつけて金を吐き出させるだけのつもりだったのに手に負えなくなりそうだとか」
「真面に働いていなかった息子が大学で真面目に勉強すると思う方がどうかしてます。その時点で考えが甘すぎるし、支払い計画も立てず借金を増やしたのは本人の無能さのせいです。
ギリギリまで待ってから、あれは息子の借金だし妻がゴリ押ししてきたせいだから自分は悪くないと言い出すのは目に見えてますね」
「おお! なんか、ケニスが家長っぽい」
「メリッサの前ではいつも間抜け面を晒してるが、こいつは経営者としては結構優秀だからな」
「マーサおばさまから聞いてる。ケニスが爵位を継いでから新しい技術の導入や農地改革を行って、ラインフェルト領の税収は右肩上がりになっているって」
「その分プライベートはへっぽこだがな」
二人に褒められて顔を赤くしていたケニスがルーカスの言葉を聞いてガックリと項垂れた。
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