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33.予想通りの愚か者と予想不可の卑怯者
豪華なドレスやアクセサリーに目の色を変えた母親は商会のツケ払いができる店を渡り歩き、内職を放り出したまま隣近所に見せびらかして回っては顰蹙をかっている。
仕事を辞めたステファンは相変わらず愛人のアマンダの部屋に入り浸り豪遊しながら、メイルーンに何をさせようかと母親の前で妄想を垂れ流した。
『メイルーンはサマネス枢機卿の隠し子だからなんでも好き放題でさ、困った時はメイルーンに頼めば裏から手を回してくれるんだ。ソーンが事故を起こした時は⋯⋯』
『メイルーンには大きな貸しがあってさ、それをちょっと手紙で匂わせたんだ。そうしたら二つ返事で会いに来るって言い出してさ、その上⋯⋯』
『メイルーンは卒業祝いでサマネス枢機卿から領地を貰ってるんだぜ。公の所有者はランクルって言う子爵になってるけど、そこからの収益は全部メイルーンの懐に入るんだ。セコセコ弁護士するよりそれを貰⋯⋯』
『ネックレスが盗まれたせいで商会はもう金のなる木じゃなくなるしさ、邪魔な平民は粛清して身綺麗に⋯⋯』
酔った勢いと自分に甘い母親の前だと言う気の緩みからステファンが口を滑らせた情報は即座にルーカスに伝えられて、真偽の確認と証拠集めに調査員が飛び出して行った。
ステファン以外のメンバーに関する犯罪も継続して調べを続け、学生時代の暴行事件や恐喝・無銭飲食など破落戸と変わらない彼等の実態が暴かれていった。それらが親の権力や教会の介入でどのようにもみ消されていったのかも⋯⋯。
「証拠が出たものは全部揃えてリチャードに送りつけてる。奴らに対する脅しと俺たちにもしものことがあった時の保険だな。一部を抜粋したやつは新聞に載せる情報として弁護士事務所で纏めてさせてるしな」
現侯爵で裁判官の中でも数少ない特別級に任命されているリチャード・メイソンはルーカスの友人の一人。
この国の裁判官は勤務年数により第一階級・第二階級に分けられるがそれ以外に最高司法裁判所所属の特別級がある。
侯爵家から離れ長年司法官として生活していたリチャードは兄が亡くなり家に戻らざるを得なくなったが、退職することを拒んで二足の草鞋を履いて現在に至る変わり者。
続々と集まる犯罪の情報と証拠にメイソンは日々憔悴しているらしい。
(一体いつまで出てくるんだよ! しかも相手が教会って⋯⋯、ルーカスはコレを俺にどうしろって言うんだ!?)
「コルマードの町で突然センサスがはじまって聖職者がカーターさん達を冤罪かけてまで探しはじめたのってやっぱりステファンの手紙がきっかけなのかな」
はじめは自分がコルマードの町を訪ねたのが原因かと思っていたメリッサだったが、センサスの後の聖職者達の行動が早すぎることに気付いた。
(メイルーンがすでに動きはじめていたと考えた方が納得いくんだよね)
「多分な。御者がやってくればいつでも捕まえられる程度の網を張ってのんびり釣りを楽しんでたのかもしれんが、あそこまで大掛かりに人を動かしたのはよほど慌てたってことだろう」
「幼い子供が待ってるならいずれ帰ってくると思ってたでしょうから、必要になれば人質か囮にできるとか考えてそうです」
ルーカスとケニスの意見を聞きながらメリッサが空になったグラスをつついて少し首を傾げた。
「メイルーン達がそう考えてたのは間違いないよね⋯⋯」
何年も放置したまま連絡もよこさないヒューゴやサリナは我が子に関心があるのか不審に思っていたメリッサは眉根を寄せて首を横に振った。
(ほんの数日一緒にいただけだけど、子供達の話の中に両親の事が一度も出てこなかったのよね。でもまあ、私があれこれ考えることじゃないし。少なくとも愛情たっぷりの祖父母と一緒なんだから)
「しかし、ステファンの手紙でここまで一気に動きだすとは思わんかったな」
「マルティン枢機卿が騒ぎ立てているのに、あんなに派手に動くのは悪手だと思うんですけどね」
「逆に言やぁこのタイミングだから慌てたのかもしれん」
「ステファンが言い出しっぺだけど、ワッツとメイルーンはそれよりも前から別の思惑で⋯⋯はあ、やっぱりワッツの狙いがイマイチわかんない」
ステファンは金と地位を狙っているだけだからある意味わかりやすい。それと同じくらいわかりやすいのは罪を完全に隠蔽したいと思っているはずのメイルーンだが、ワッツが何を考えて秘密裏にセオドアを確保し御者を探しているのか⋯⋯。
「メイルーンに対して優位な立場になりたいとか牽制くらいしか思いつかないんだけど、それもなんだかなぁって思うんだよね」
「現時点でわかってる内容からしたら、ワッツが危険を冒してまでそれをしてる理由は俺にも皆目検討つかねえ。教会にバレてもメイルーンにバレてもヤバい立場になるのにな」
神官殺しのセオドアを匿っている事がバレた時点で破滅するのが確定すると知っているはずのワッツの考えが見えてこないのはメリッサ達の心に不安の種を植え付けた。
「まあそれは様子見って事で⋯⋯」
堂々巡りになりはじめた会話をルーカスが断ち切った。
お茶のお代わりを貰って人心地ついた頃、ルーカスの一言でケニスが顔をこわばらせた。
仕事を辞めたステファンは相変わらず愛人のアマンダの部屋に入り浸り豪遊しながら、メイルーンに何をさせようかと母親の前で妄想を垂れ流した。
『メイルーンはサマネス枢機卿の隠し子だからなんでも好き放題でさ、困った時はメイルーンに頼めば裏から手を回してくれるんだ。ソーンが事故を起こした時は⋯⋯』
『メイルーンには大きな貸しがあってさ、それをちょっと手紙で匂わせたんだ。そうしたら二つ返事で会いに来るって言い出してさ、その上⋯⋯』
『メイルーンは卒業祝いでサマネス枢機卿から領地を貰ってるんだぜ。公の所有者はランクルって言う子爵になってるけど、そこからの収益は全部メイルーンの懐に入るんだ。セコセコ弁護士するよりそれを貰⋯⋯』
『ネックレスが盗まれたせいで商会はもう金のなる木じゃなくなるしさ、邪魔な平民は粛清して身綺麗に⋯⋯』
酔った勢いと自分に甘い母親の前だと言う気の緩みからステファンが口を滑らせた情報は即座にルーカスに伝えられて、真偽の確認と証拠集めに調査員が飛び出して行った。
ステファン以外のメンバーに関する犯罪も継続して調べを続け、学生時代の暴行事件や恐喝・無銭飲食など破落戸と変わらない彼等の実態が暴かれていった。それらが親の権力や教会の介入でどのようにもみ消されていったのかも⋯⋯。
「証拠が出たものは全部揃えてリチャードに送りつけてる。奴らに対する脅しと俺たちにもしものことがあった時の保険だな。一部を抜粋したやつは新聞に載せる情報として弁護士事務所で纏めてさせてるしな」
現侯爵で裁判官の中でも数少ない特別級に任命されているリチャード・メイソンはルーカスの友人の一人。
この国の裁判官は勤務年数により第一階級・第二階級に分けられるがそれ以外に最高司法裁判所所属の特別級がある。
侯爵家から離れ長年司法官として生活していたリチャードは兄が亡くなり家に戻らざるを得なくなったが、退職することを拒んで二足の草鞋を履いて現在に至る変わり者。
続々と集まる犯罪の情報と証拠にメイソンは日々憔悴しているらしい。
(一体いつまで出てくるんだよ! しかも相手が教会って⋯⋯、ルーカスはコレを俺にどうしろって言うんだ!?)
「コルマードの町で突然センサスがはじまって聖職者がカーターさん達を冤罪かけてまで探しはじめたのってやっぱりステファンの手紙がきっかけなのかな」
はじめは自分がコルマードの町を訪ねたのが原因かと思っていたメリッサだったが、センサスの後の聖職者達の行動が早すぎることに気付いた。
(メイルーンがすでに動きはじめていたと考えた方が納得いくんだよね)
「多分な。御者がやってくればいつでも捕まえられる程度の網を張ってのんびり釣りを楽しんでたのかもしれんが、あそこまで大掛かりに人を動かしたのはよほど慌てたってことだろう」
「幼い子供が待ってるならいずれ帰ってくると思ってたでしょうから、必要になれば人質か囮にできるとか考えてそうです」
ルーカスとケニスの意見を聞きながらメリッサが空になったグラスをつついて少し首を傾げた。
「メイルーン達がそう考えてたのは間違いないよね⋯⋯」
何年も放置したまま連絡もよこさないヒューゴやサリナは我が子に関心があるのか不審に思っていたメリッサは眉根を寄せて首を横に振った。
(ほんの数日一緒にいただけだけど、子供達の話の中に両親の事が一度も出てこなかったのよね。でもまあ、私があれこれ考えることじゃないし。少なくとも愛情たっぷりの祖父母と一緒なんだから)
「しかし、ステファンの手紙でここまで一気に動きだすとは思わんかったな」
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「逆に言やぁこのタイミングだから慌てたのかもしれん」
「ステファンが言い出しっぺだけど、ワッツとメイルーンはそれよりも前から別の思惑で⋯⋯はあ、やっぱりワッツの狙いがイマイチわかんない」
ステファンは金と地位を狙っているだけだからある意味わかりやすい。それと同じくらいわかりやすいのは罪を完全に隠蔽したいと思っているはずのメイルーンだが、ワッツが何を考えて秘密裏にセオドアを確保し御者を探しているのか⋯⋯。
「メイルーンに対して優位な立場になりたいとか牽制くらいしか思いつかないんだけど、それもなんだかなぁって思うんだよね」
「現時点でわかってる内容からしたら、ワッツが危険を冒してまでそれをしてる理由は俺にも皆目検討つかねえ。教会にバレてもメイルーンにバレてもヤバい立場になるのにな」
神官殺しのセオドアを匿っている事がバレた時点で破滅するのが確定すると知っているはずのワッツの考えが見えてこないのはメリッサ達の心に不安の種を植え付けた。
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