【完結】結婚した途端記憶喪失を装いはじめた夫と離婚します

との

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45.どっちが悪人かわからないかも

「だ、ダメだ! 友人同士の付き合いに母親を連れてくなんてかっこ悪いこと出来ないよ! 母上にはもっと別の機会を作るからね⋯⋯例えば、王宮の舞踏会とか! 男爵なんかじゃなくて上位貴族に陞爵させて⋯⋯最低でも伯爵くらいにはさせる。んで、デカい屋敷に住んで使用人をずらっと並べよう」

「そんな事までできるの?」

 ステファンが紡いでいく妄想でイライザの目がどんどん濁っていった。

(母上がゲームに来たら予定が狂っちまう⋯⋯メリッサ親子を殺って商会を手に入れて、メイルーンからはあの真珠の代わりに大金と地位をせしめるんだからよお)

「そうなれば、今までわたくしを馬鹿にしてた奴らを見返してやれるわ」

「え? ああ、もちろんだよ。アイツらは俺に借りがあるからそろそろ恩を返させてやるんだ。真珠と引き換えは弁護士って思ってたけど検察官になって法廷で悪い奴をボッコボコにする方がかっこいいだろ? んで、それに見合う爵位と財産を準備させるつもりなんだ」

(チャールズ・ソーンが裁判官だし、ジャック・モートンとネイサン・グルーヴが弁護士だからおんなじ畑で勝負するのは面倒⋯⋯。ピーター・ワッツは法務部なんてショボいとこで働いてるから論外だしな。
後は例の書類にメリッサのサインがありゃ俺の完全勝利だぜ)

「どんな恩なのか知らないけどメイルーン様がそこまで言いなりになるものかしら?」

「メイルーンは俺の知る限りでも4人殺してやがるからな。その内のひとりは証拠を持ってるから言い逃れできねえんだよ」

「よ、4人も!?」

「奴は聖職者なんかじゃねえ、単なる変態趣味の鬼畜だからな。他の奴らだって俺が黙ってたから今まで好き放題できてたんだ⋯⋯母上はここにいて奴らの悪事の証拠を守っててくれれば全員俺の言う事に従うしかねえんだ。全部上手くいく」

「ええ、良いわ! そんな証拠がこの家に?⋯⋯ああ、あなたの部屋のアレね⋯⋯わたくしが守っておいてあげるから心配しないで。でも、そんなものがあるならメイルーンだけじゃなくて他の人からもお礼を貰えば良いじゃない。ワッツ公爵家ならかなりはずんでくれるんじゃないかしら?」

「流石母上! 俺の頭がいいのは間違いなく母上からの遺伝だな」

「ふふっ、ちゃんと証拠を押さえておくなんて⋯⋯ 愚鈍なコーク男爵の頭じゃ無理だったでしょうねぇ。ステファンが授爵したらあんな人とは離婚しなくちゃ、いつまでもお金を無心されたら迷惑だわ」

「父上は借金だけ持って出てってもらおうぜ。借金の名義は全部コーク男爵だもんな~」

「その通りだわ! あれはあの人の借金だしここ最近のツケはメリッサが払うべき⋯⋯わたくしとステファンには関係ないんですものね」

「商会がヤバくなってきたみたいだから残ってるもんをこっちの名義に変えとかねえとな」

「そうね、たかが真珠くらいで屋台骨が揺らぐ役立たずなモートン商会なんて切り捨てなくちゃね」

 ステファンとイライザはゲラゲラと笑いながら前祝いだと言って安いワインで酔い潰れた。



「父さんがライルにあんなことを頼んだ時は驚いたけど、予想通り過ぎてビックリだね」

「これ以上どこからも金が借りられんし買い物もできないとなりゃイライザがメリッサの家に乗り込んでくるのは間違いねえ。ステファンも戻ってくるはずだし、ほっといたら何をされるかわからんからな。
ライルは大喜びだったぜ」

「ステファンは帰ってくるたびに大騒ぎするし、イライザもちょくちょくやってきては物を漁ろうとしてたって言うから⋯⋯ライルが一番大変だったもんね。お詫びに温泉旅行って思ってたけど、それくらいじゃ足りないかも」

「コーク男爵は一体何をしてるんですかね? 家の周りに取り立て屋が彷徨いても何もしないなんて。妻や息子の言動を見ればすぐ分かりそうなものだと思うんですけど」

「奴は家族も借金も放り出してとっくにトンズラしてるぜ?」

「「はあ?」」

 イライザの実家キャンベル男爵家から叩き出されたコーク男爵は仕事場に戻り、当日までの給料を受け取りわずかな荷物と共に王都から逃げ出した。

「王都を出た時点で捕まえて借金取りに引き渡したけどな~。借金を一本化した際の契約に違反したんだから仕方ねえだろ?」

「そっか、王都から離れる時は前もって連絡しておかないと逃亡とみなされるんだっけ」

 ルーカスが『そういう事』と言いながらニヤニヤと悪人ヅラで笑った。

「⋯⋯はじめからこうなると思ってたんですね。おじさん怖すぎ」

「無計画に金を借りた挙句人の金で返済しようとする奴らなんてあんなもんだ。それよりケニスは報告があるって顔に書いてあるぜ?」

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