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47.メリッサが言うこと聞くわけないよなあ
メイルーン達に内緒でセオドアを匿っているワッツが御者を捕まえることができれば全ての駒が集まり、間違いなくメイルーン達の上に立てるだろう。
6人のメンバーの中で最も爵位の高いワッツにしてみればメイルーンは目の上のたんこぶなのかもしれないし、他のメンバーと同列に扱われかねない今の状況が気に入らなくてセオドアや御者を集めているのかもしれない。
「実行を指示したのはメイルーンでも自分の首だって締まるのに⋯⋯仲間割れってことなのかな」
「ああいう奴らには仲間意識なんてねえからなあ。都合が悪くなりゃ切り捨てるし上に立つとか自己保全のネタがありゃいくらでもコソコソ動き回る⋯⋯のが常識だが、う~ん」
ルーカスが真剣な顔で黙り込んだ。
「父さん、何か知ってるの?」
「いや、なんでもねえ」
妙に歯切れ悪く黙り込んだルーカスをケニスとメリッサが見つめた。
「まあ、ハリーと話してみたらなんか分かるだろう。あと、セオドア捕獲だがケニスは関わんねえ方がいいかもな」
この件にケニスが関与していると知られればリリアナやハリーに行き着いてしまいまた振り出しに戻ってしまう。
「俺に関わるなって、だったらどう⋯⋯メリッサがやるとか絶対ダメですからね! 俺をハブにするならハリー達の監禁場所は言わないから」
「まだ何も言ってないのにな~」
「メリッサの考えることなんかケニスにはお見通しなんだよ。取り敢えず場所を移動しなきゃならんから商会の荷馬車をだそう」
「じゃあ、待ち合わせは商会の裏口で今夜決行、監禁場所は状況によってケニスの家コースか猛獣コースかをその場で決めようね」
いつも以上に張り切っているメリッサを見たルーカスとケニスがガックリと肩を落とした。
「行っていいなんて言った覚えねえのによお」
「すっかりその気ですよね」
ケニスと並んで御者席に座ったメリッサはいつになく大人しかった。
(静かなのが心配ってのはおかしな話だけど、メリッサなら⋯⋯気合い十分でワクワクが止まらないとか言いそうな気がするのにな)
「弟妹がいるってどんな感じなんだろうね。ミゲルや私達ってみんなひとりっ子だけど毎日一緒にいて⋯⋯ケニスやミゲルはお兄ちゃんみたいな存在だとか言ってたけど、きっとそれとは全然違うんだろうね」
「少なくとも俺はメリッサの事を妹みたいだとか思ったことはないからなぁ。ミゲルは俺とは一線引いてるみたいなとこがあったし」
「ええっ! あんなに仲良かったのに!?」
「仲は良かったと今でも思ってる。ただ、いずれ別々になるからみたいな距離感があった」
「あ~、それは凄く分かるかも。この国って身分制度超煩いから、平民が高位貴族と友達付き合いとかすっごく珍しいもんね」
貴族の中で最下位の男爵でしかないコーク家でさえ平民をあれほど蔑むのはこの国ではありがちな事。
そのせいである程度の資産が貯まった商人達は爵位を手に入れて貴族社会に乗り込むのが一般的な風潮になっていた。
「貴族にはならんって言い続けてるおじさんとか珍しいもんな」
ステファン達が『モートン商会には噂に聞いていたより資産がない』と早々に見切りをつけたのは、授爵せず平民のままでいるのが原因だった。
店舗数も品揃えも国内トップクラスだと言われているが王室御用達の看板も持たず教会との取引も行わない。
それらはルーカスのこだわりの一つだが『見た目だけ大きな商会』だと勘違いする者は多い。
「第二身分になれば税率が一気に下がるとか言いにくる役人を叩き出してるもんね。それ以外にくっついてくるもんが多過ぎて反吐が出るって言うのが父さんの口癖だから、うちはこの先も呑気な平民のままだと思う」
「国としては爵位を持たせれば国に縛り付けられるって思ってるんだろ。モートン商会が他国に移るのはヤバいもんな。
メリッサは⋯⋯その⋯⋯爵位とか社交界とかに興味はない感じ?」
「う~ん、ない! コルセットでガッチガチにお腹を締め上げて、扇子の陰で『おーほっほっほ』とかめんどくさそうだもん。屋台で串焼き買って公園で鳩を追いかける方が断然楽しそう」
「⋯⋯え~っと子供とかの身分なんかは気になったりとか」
「第二身分になりたいって言い出したら『頑張れ~』って言うかもね。低位貴族の爵位ならお金で買えるし、それ以上になりたければ陞爵できるような結果を残せば良いんじゃないかな。
まあ、私はこんな性格だから相手を巻き込まないようにしなくちゃって思ってる。高位貴族の人との縁組とかってなったら間違いなく相手の家に迷惑かけるから」
「それ、俺に釘刺してるんだよな?」
「そろそろ着きそうだね。なんかすっごいワクワクしてきたかも~」
話をはぐらかしたメリッサが停まりかけた馬車から飛び降りた。
ハリー達3人を捕縛しているのはスラム街のすぐ近くの閉店した酒場の2階だった。
ランプで足元を照らしながら埃っぽい店を横切りギシギシと鳴る階段を登るとドアの前に見張りの男が3人立っていた。
「お疲れ様です。中の様子はどう?」
ケニスが小さく頷いたのを確認した男がドアをノックしながらメリッサに返事を返してきた。
「女が定期的に騒いで暴れるんで猿轡をはめました。それでもしばらくは亭主にぶち当たってモゴモゴ言ったり俺達を睨みつけたり超元気でしたねえ。ぐるぐる巻きですしちょっと前から諦めたみたいで助かりました」
(往生際が悪いのって女の方なのかな、私もかなりしつこい方だって自覚あるもんなぁ)
開いたドアから顔を覗かせた男の後をついて部屋に入ると、床に転がされたまま目を瞑る男とその後ろに張り付いてメリッサ達を睨みつける女がいた。
艶のないボサボサの髪と薄汚れた男の服には長年の逃亡生活の辛さが、胸元の大きく開いたドレスと派手な化粧はどうやって2人分の逃亡資金を捻出していたのかを如実に物語っていた。
(ヒューゴとサリナね。子供達とはあんまり似てないみたい)
6人のメンバーの中で最も爵位の高いワッツにしてみればメイルーンは目の上のたんこぶなのかもしれないし、他のメンバーと同列に扱われかねない今の状況が気に入らなくてセオドアや御者を集めているのかもしれない。
「実行を指示したのはメイルーンでも自分の首だって締まるのに⋯⋯仲間割れってことなのかな」
「ああいう奴らには仲間意識なんてねえからなあ。都合が悪くなりゃ切り捨てるし上に立つとか自己保全のネタがありゃいくらでもコソコソ動き回る⋯⋯のが常識だが、う~ん」
ルーカスが真剣な顔で黙り込んだ。
「父さん、何か知ってるの?」
「いや、なんでもねえ」
妙に歯切れ悪く黙り込んだルーカスをケニスとメリッサが見つめた。
「まあ、ハリーと話してみたらなんか分かるだろう。あと、セオドア捕獲だがケニスは関わんねえ方がいいかもな」
この件にケニスが関与していると知られればリリアナやハリーに行き着いてしまいまた振り出しに戻ってしまう。
「俺に関わるなって、だったらどう⋯⋯メリッサがやるとか絶対ダメですからね! 俺をハブにするならハリー達の監禁場所は言わないから」
「まだ何も言ってないのにな~」
「メリッサの考えることなんかケニスにはお見通しなんだよ。取り敢えず場所を移動しなきゃならんから商会の荷馬車をだそう」
「じゃあ、待ち合わせは商会の裏口で今夜決行、監禁場所は状況によってケニスの家コースか猛獣コースかをその場で決めようね」
いつも以上に張り切っているメリッサを見たルーカスとケニスがガックリと肩を落とした。
「行っていいなんて言った覚えねえのによお」
「すっかりその気ですよね」
ケニスと並んで御者席に座ったメリッサはいつになく大人しかった。
(静かなのが心配ってのはおかしな話だけど、メリッサなら⋯⋯気合い十分でワクワクが止まらないとか言いそうな気がするのにな)
「弟妹がいるってどんな感じなんだろうね。ミゲルや私達ってみんなひとりっ子だけど毎日一緒にいて⋯⋯ケニスやミゲルはお兄ちゃんみたいな存在だとか言ってたけど、きっとそれとは全然違うんだろうね」
「少なくとも俺はメリッサの事を妹みたいだとか思ったことはないからなぁ。ミゲルは俺とは一線引いてるみたいなとこがあったし」
「ええっ! あんなに仲良かったのに!?」
「仲は良かったと今でも思ってる。ただ、いずれ別々になるからみたいな距離感があった」
「あ~、それは凄く分かるかも。この国って身分制度超煩いから、平民が高位貴族と友達付き合いとかすっごく珍しいもんね」
貴族の中で最下位の男爵でしかないコーク家でさえ平民をあれほど蔑むのはこの国ではありがちな事。
そのせいである程度の資産が貯まった商人達は爵位を手に入れて貴族社会に乗り込むのが一般的な風潮になっていた。
「貴族にはならんって言い続けてるおじさんとか珍しいもんな」
ステファン達が『モートン商会には噂に聞いていたより資産がない』と早々に見切りをつけたのは、授爵せず平民のままでいるのが原因だった。
店舗数も品揃えも国内トップクラスだと言われているが王室御用達の看板も持たず教会との取引も行わない。
それらはルーカスのこだわりの一つだが『見た目だけ大きな商会』だと勘違いする者は多い。
「第二身分になれば税率が一気に下がるとか言いにくる役人を叩き出してるもんね。それ以外にくっついてくるもんが多過ぎて反吐が出るって言うのが父さんの口癖だから、うちはこの先も呑気な平民のままだと思う」
「国としては爵位を持たせれば国に縛り付けられるって思ってるんだろ。モートン商会が他国に移るのはヤバいもんな。
メリッサは⋯⋯その⋯⋯爵位とか社交界とかに興味はない感じ?」
「う~ん、ない! コルセットでガッチガチにお腹を締め上げて、扇子の陰で『おーほっほっほ』とかめんどくさそうだもん。屋台で串焼き買って公園で鳩を追いかける方が断然楽しそう」
「⋯⋯え~っと子供とかの身分なんかは気になったりとか」
「第二身分になりたいって言い出したら『頑張れ~』って言うかもね。低位貴族の爵位ならお金で買えるし、それ以上になりたければ陞爵できるような結果を残せば良いんじゃないかな。
まあ、私はこんな性格だから相手を巻き込まないようにしなくちゃって思ってる。高位貴族の人との縁組とかってなったら間違いなく相手の家に迷惑かけるから」
「それ、俺に釘刺してるんだよな?」
「そろそろ着きそうだね。なんかすっごいワクワクしてきたかも~」
話をはぐらかしたメリッサが停まりかけた馬車から飛び降りた。
ハリー達3人を捕縛しているのはスラム街のすぐ近くの閉店した酒場の2階だった。
ランプで足元を照らしながら埃っぽい店を横切りギシギシと鳴る階段を登るとドアの前に見張りの男が3人立っていた。
「お疲れ様です。中の様子はどう?」
ケニスが小さく頷いたのを確認した男がドアをノックしながらメリッサに返事を返してきた。
「女が定期的に騒いで暴れるんで猿轡をはめました。それでもしばらくは亭主にぶち当たってモゴモゴ言ったり俺達を睨みつけたり超元気でしたねえ。ぐるぐる巻きですしちょっと前から諦めたみたいで助かりました」
(往生際が悪いのって女の方なのかな、私もかなりしつこい方だって自覚あるもんなぁ)
開いたドアから顔を覗かせた男の後をついて部屋に入ると、床に転がされたまま目を瞑る男とその後ろに張り付いてメリッサ達を睨みつける女がいた。
艶のないボサボサの髪と薄汚れた男の服には長年の逃亡生活の辛さが、胸元の大きく開いたドレスと派手な化粧はどうやって2人分の逃亡資金を捻出していたのかを如実に物語っていた。
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